出版の変化を振り返る

2008年5月2日

先日、還暦を迎えた弊誌のデザイナーが、
インターネットの「ファイル宅配便」でデジタルデータを送りながら、
「しかし、世の中、便利になったものだ・・・」とつぶやいた。
インターネットのおかげで競争の枠組みが変わった、
というのはよく言われることだが、
弊社のようなコンテンツ周りの仕事をしていると、
そのことを痛感させられる局面は少なくない。
今や写真やイラストやテキストなどの“部品”はデジタル化され、
これらの“部品”を組み合わせた印刷会社への入稿原稿も、
かつての紙の版下からデジタルデータへと姿を変えた。
雑誌や書籍そのものこそリアルな存在ではあるが、
そこに至る製造プロセスの多くがここ15年ほどでデジタル化されたのだ。
そして、かつてそのプロセスの中で確固たる位置を占めていた業種の中には、
写植屋さんや製版屋さんのように衰退の道を辿る業種も少なくない。
彼らの業務はデザイン会社や印刷会社に吸収されていったのだ。
“部品”や入稿原稿のデジタル化が進む中で、その物流も大きく変わった。
著者やカメラマンやイラストレーターからの納品が
インターネットで行われるようになったのはもちろん、
印刷会社への入稿だって、モノによってはインターネットで行う。
もちろん、重たいデータはeメールでは送れないが、
そこで活躍するのが冒頭で触れた「ファイル宅配便」のようなサービス。
ご存じの通りこの世界、“締め切り間際の魔術師”が多いだけに、
無料で、しかも即座に送れるのは大きなメリットだ。
さらに出版物そのものに目を向けても、最近では電子出版が登場したり、
注文があった都度、オンデマンドで印刷したり、
あるいは一定数の注文があった時点で印刷に踏み切ったりと、
従来とは大きく様相が変わっている。
また、現在のところは広告モデルが主体とは言え、
ネットメディアの存在も無視できない。
こうした中、“部品”からはじまった出版物を巡る革命は、
印刷や物流などの周辺業界を巻き込みながら、
出版物のあり方そのものを大きく変革しようとしている。
デザイナーのつぶやきをきっかけに振り返ってみると、
アマゾンやグーグルなどのネット企業の影響を云々する以前に、
自分達の業界にこそ大きな変化が起きていることを、
改めて痛感させられたのだった。[[pict:bikkuri]]