住宅設備機器の進化とカスタマーサポート

2015年12月19日
以前のコラムにも書いたように、この秋に十何年ぶりに引っ越しをした私。10月に投稿した「生活者サイドから見たカスタマー・エクスペリエンス考」では、引っ越しに伴う家具などの購入体験を披露しましたが、今日はその続編として、新居での住宅設備機器の使用体験と、これを通して感じたこと、考えたことをご紹介したいと思います。

新居と言っても、それは築8年のマンションなのですが、それまで私が住んでいたのが築33年のマンションなので、新居と旧居の住宅設備機器を比較すると、そこには天と地ほどの開きが・・・。その結果、私にはわからないことだらけで、引っ越し当初はその変貌ぶりに驚かされることばかりでした。

まず最初に驚かされたのは、玄関や廊下などのダウンライトに人感センサー(人が通ったのを認識して、必要な時のみ自動的に点灯・消灯がなされる仕組)がついていたこと。慣れないうちは、外出時に玄関の消灯を確認できないことがストレスで、一時的に手動モードに切り替えてみたりしていたのですが、今ではすっかり慣れて自動モードの恩恵に預かっています。

「人感センサー」がついた玄関の照明スイッチ。外出時に消灯されたかが不安で、一時期は手動モードに
「人感センサー」がついた玄関の照明スイッチ。外出時に消灯されたかが不安で、一時期は手動モードに
ほかにも、キッチンではディスポーザー、バスルームでは浴室乾燥機、トイレでは必要な時に自動的に水が流れる仕組みのウォシュレット、セキュリティ会社と連携したインターフォン、マンション全体をカバーするインターネット・サービス、不在時に荷物を受け取る宅配ロッカー、ひいてはフィルターを自動的に掃除する機能がついたエアコン等々、私にとっては初体験のものばかり。

これらは皆さんにはおなじみの設備かもしれませんが、とにかく築33年のマンションから引っ越してきたばかりの私は“浦島太郎”状態。何もしないのに照明が点いた、消したはずのエアコンが動き始めた(=自動的にフィルターの掃除をし始めた)、ごみを捨てに行くだけだからと窓を開けたまま鍵を掛けようとするとインターフォンが「戸が開いています」と語りかけてくるなど、日々、驚かされることが続出しました。

これらの住宅設備機器は、私が主体的に選択・購入したわけではなく、新居にたまたまついていただけのものなので、私にしてみれば、そもそもどんな機能があるのかも知らなければ、使用方法もわかりません。加えて新築のマンションではないので、不動産会社も、メーカーも、誰も住宅設備機器の説明なんてしてはくれなかったのです。

例えば、キッチンの流しの構造がよくわからず、「なんで野菜くずやお茶ガラなどを受け止めるカゴがついていないんだろう?」「不織布のゴミ袋はどこで固定すれば良いんだろう?」などと悩んだ末、ディスポーザーがついているのでカゴもゴミ袋もいらないんだと気づくまでには、恥ずかしながらかなりの日数を要しました。

「そんな時にはマニュアルを見れば良い」と言われても、従前の居住者から譲り受けたマニュアルは積み重ねると5センチをはるかに超える厚さ。これを読み込んで全体像を把握するには、いくら時間があっても足りません。そこで問題が発生するたびにマニュアルを紐解き、それでもわからない時には、そこに記されているWebサイトをチェックしたり、コールセンターに電話を掛けたりすることになったのです。

従前の居住者から受け渡された住宅設備機器のマニュアルは、積み重ねると5センチをはるかに上回る厚さに
従前の居住者から受け渡された住宅設備機器のマニュアルは、積み重ねると5センチをはるかに上回る厚さに
引っ越しから1カ月ほどで、ほぼ通常通りに生活することができるようになりましたが、この間には私の鍵の開閉方法に問題があってセコムの担当者が駆けつけてしまったり(鍵が二重構造になっていて複雑なのです)、気づかないうちにトイレの設定がおかしくなって水が流れなくなったり、数々の“失敗”を積み重ねてきました。

こうした体験を通じて感じたのは、この20~30年の間に住宅設備機器がいかに進化を遂げると共に、複雑化してきたかということ。2000年頃から、製品の複雑化がコールセンターの需要を増大してきたことは周知の事実ですが、その波が、かつて指摘されていたPCや携帯電話、デジタルカメラ、デジタル家電に止まらず、住宅設備機器にまで及んでいることを自らの体験を通して痛感させられる結果となったのです。

今後、IOT(Internet of things:モノのインターネット)により製品のサービス化が進むと、情報通信機器や家電はもちろん、住宅設備機器においても、オンラインでサポートが受けられるようになったり、サプライ品が自動的に送られてきたりするようになったり、ひいては冷蔵庫の中の飲料や味噌・醤油などの調味料が自動的に補充されるような日も、そう遠くはないのかもしれません。

しかし、そうして一見、便利で現代的な生活が営めるようになる一方で、複雑化する製品の使用方法がわからない、あるいは、製品の複雑さとユーザー側の誤用が相まって製品トラブルが発生するといった事態は、むしろ増えていくのではないか。自分自身の体験を振り返ってみると、そんな気がしてなりません。

こうした中、製品そのもののユーザビリティと相まって、生活者の“困りごと”の受け皿となる製品マニュアル、そしてWebサイトやコールセンターなどによるカスタマーサポートの品質は、今後、ますます重要になってくるのではないか。築33年のマンションから築8年のマンションに引っ越し、25年分の住宅設備機器の技術革新を一夜にして味わった浦島太郎は、そんなことを考えさせられたのです。