レスター・ワンダーマン氏の予測

2010年1月12日

この連休には、他社から依頼されている原稿を書く中で、
今を去る6年前に行った、“ダイレクトマーケティングの父”
レスター・ワンダーマン氏へのインタビューを振り返る機会があった。
このインタビューでは、ダイレクトマーケティングとブランディング、
情報化の進展とダイレクトマーケティング、
そして、CRMとダイレクトマーケティングについて聞いた上で、
5年後のダイレクトマーケティングについて氏の見解を尋ねているのだが、
改めて読み直してみると、その洞察力に改めて感じ入ってしまった。
氏はこの5年後のダイレクトマーケティングに関する質問に答えて、
以下の2点を提示している。
①企業と生活者のインタラクティブなコミュニケーションのメディアとして
インターネットが重要な役割を果たすようになる。
②商品以上にサービスのダイレクトマーケティングが活発化する。
インタビューの5年後といえば2009年、昨年のことだが、
①について日本の現状を振り返ってみれば、
今や購入に先駆けてネットで検索するのはごく当たり前の行為となり、
また、通信販売における主力メディアもネットだといわれている。
この点については、もはや語るまでもないという感じだ。
②については、多少の説明を要すると思うので、
以下に私の質問に対する氏の回答の一部を説明しよう。
「今後は商品以上に、サービスのダイレクトマーケティングが活発化するでしょう。
そもそも私たちは、洗濯機が欲しいのではなく、服を清潔にしたいのです。
また、車が欲しいのではなく、快適に移動したいのです。
今後、情報化がますます進展する中で、商品はサービスへと姿を変えていくでしょう。
産業革命は商品の革命でしたが、情報化社会にはサービスの革命が起きるのです。」
どうです? なかなかするどい指摘ですよね。
ダイレクトマーケティングやCRM、One to Oneマーケティングなど、
インタラクティブなマーケティングは総じて言えば、
顧客情報を収集し、マーケティングに活用することといえるだろう。
顧客情報には基本属性や購買履歴、コンタクト履歴などさまざまなものがあるが、
これを突き詰めれば、氏が語る「服を清潔にしたい」「快適に移動したい」などの
購買行動の裏側にある顧客の動機に接近することになる。
モノを売り込むのではなく、顧客の動機を刺激すること。
そのためには商品を販売する前の広告表現はもちろん、
商品の販売の方法、さらには販売後のフォローに至るまで、
顧客の購買プロセスのA to Zを、顧客の課題を解決するプロセスとして位置付け、
提供していくことが求められていると言えるだろう。
まだわかりにくいだろうか?
氏は前述の回答に続けて、当時、米国ではすでに一般的になっていた、
“ネットスーパー”に言及。従来からの食品小売業は、
生活にかかわるサービス業に変化していると指摘している。
つまり、そこでは食料品が購入されているのではなく、
データがやりとりされているというのだ。
インタビューの中で氏が語った5年後に当たる昨年は、
日本においてネットスーパーが注目された年であり、
“サービスをいかに科学するか”が国を挙げて議論された年でもあった。
長引く不況の中でその勢いが失われてしまった感はあるが、
サービス化への基本的なベクトルに変わるところはないし、
そこで顧客情報の収集・活用が重用されることは言うまでもない。
久しぶりに6年前のインタビューを振り返って、
氏の洞察の深さに改めて感服すると同時に、元気をもらった気がした。
ちなみに、レスター・ワンダーマン氏のインタビューが掲載された
月刊『アイ・エム・プレス』は、2004年の4月号である。