今週は入稿の翌週で本来は比較的余裕があるはずなのに、
諸々の雑事や忘年会、月刊「アイ・エム・プレス」の年末進行のため、
なんだか大忙しの週になってしまった。
というわけで、12日に開催された、日本ダイレクトマーケティング学会の
DMフォーラムの模様をずーっと書きそびれていたので、
今日はこの概要を紹介しようと思う。
講師は、弊誌のコメンテーターでもあるルディー和子さんである。
今回のDMフォーラムのテーマは以下の2つ。
1.米国ダイレクトマーケティングを概観する 2006年DMA大会
2.カスタマー・インサイトとリレーションシップ・マーケティング
私はその日もバタバタしていて遅れてしまったので、
最初のほうは聞いていないのだが、レジメによると、
冒頭では米国のダイレクトマーケティング協会である
Direct Marketing Associationの年次大会(DMA大会)の模様を紹介。
が、DMA大会の様子は、過日、このブログでも紹介したし、
月刊「アイ・エム・プレス」1~2月号にも掲載するので、
そちらをご参照いただきたい。
1月号:ルディー和子さんの視察報告
2月号:DMAグレコ会長の基調講演
※2月号の特集の中でエコー賞の受賞作品も紹介
DMA大会自体の模様に続いて、SEM、マルチチャネル、
Relavancy、Analyticsなど、大会におけるフォーカスポイントについて言及。
私が会場に到着したのはマルチチャネルの途中からだが、
アバカスとダブルクリックの共同調査結果からわかった問題点として、
カタログとネットはともかく店舗との組織的な融合は困難である、
マルチチャネルバイヤーにターゲットを絞ることが重要であり、
結果的に中核商品以外はチャネルごとに異なるMDを展開すべきである、
などが紹介されていたことが印象に残った。
これらの問題点は、日本のマルチチャネラー(?)の間でも、
問題点として指摘されていたり、あるいは試行錯誤している様子が見て取れる。
後半のカスタマー・インサイトとリレーションシップ・マーケティングには、
「消費者の心のなかを知る」ことは顧客との関係性向上の役に立つのか?
という副題が付けられていた。これはダイレクトマーケティングに
古くから携っている人々の間でよく議論になるところ。
ルディーさんはこの永遠のテーマに、消費者調査への批判からアプローチされた。
曰く、「従来の調査のほとんどが、言語を用いて質問し、
それに対する言語的反応を数値化して『態度』を測定し、
それに基づいて『行動』を予測」している。
これに対して、最新脳科学が明らかにした消費者の心として、
①消費者の購買決定は感情優位、
②消費者の記憶はあやふや、
③消費者は言葉では考えない、の3点を示した上で、
マーケティング調査は「定量調査から定性調査へ。
それも、フォーカスグループ調査などではなく、
言葉を介さない定性調査手法へ」向かっていると指摘された。
ここから「消費者の意思決定は感情優位」として、
製品の仕様や価格など合理的要素による競争から抜け出し、
顧客接点において感情に訴える経験を提供する動きに言及、
そのために最も効果的なのは人間を付加することであると結論付けられた。
さらに、「モノを売ることは、限りなくサービス業に近づいている」として、
モノを販売している企業が競争優位に立つためには、
サービス業が直面している「サービス対効率」の問題に
対処しなければならないと指摘。
ここからリレーションシップ・マーケティングの話に展開し、
「伝統的売買取引がモノを中心としているとしたら、リレーションシップ・
マーケティングは顧客と企業の相互作用プロセスにある」として、
このプロセスから「顧客にとって新しい付加価値が生み出されるように
管理・経営すること」が重要であると講演を締めくくられた。
前述の「サービス対効率」の問題とは、サービスと効率は
トレードオフ(あっちを立てるとこっちが立たない)の関係にあるということ。
この点については、同学会の確か第一回の大会のときに、
初代の会長であった故・田島先生が指摘されていたことが印象に残っている。
月刊「アイ・エム・プレス」でもこの問題には以前から注目しており、
現時点の最新号である12月号の特集テーマも
「CS向上とコスト削減は両立するか—IVRの効果的活用法を探る」である。
また、今回の講演の中で私が最も興味を持ったのは、
「モノを売ることは、限りなくサービス業に近づいている」というところ。
以前にルディーさんに月刊「アイ・エム・プレス」の読者向けイベント
「I.M.Live !」のゲストスピーカーをお引き受けいただいた時にも、
同様のテーマで会場とのやりとりが繰り広げられたが
加えて先月の弊誌のビジネスセミナーにおけるワコールの大藪さんの講演でも、
このテーマが話題になったのは記憶に新しいところだ。
このテーマについては、もうひとつ面白いネタがあるが、
長文になるので、また次の機会にご紹介しますね。
とにもかくにも、現在、注目のテーマにフォーカスしていたことに加え、
これまでのルディーさんの研究の集大成とも言える充実したセミナーであった。
ルディー和子さんのセミナー
2006年12月16日