ブランド広告における顧客接点やVOCの起用

2006年11月23日

最近、コールセンターなどの顧客接点を広告のモチーフにする企業が
増加しているように思う。電話の向こう側のコミュニケータが笑顔で登場する
消費者金融によるCMはすでにおなじみだが、
最近では、再春館製薬所のテレビCMにも複数のコミュニケータが登場。
質問に答える形で、コミュニケータという仕事について語っている。
後者は人材の採用も意識してのことかもしれないが、
いずれもコールセンターもしくはそこで働くコミュニケータにフォーカスし、
当該企業とお客様との接点を具体的にイメージさせることで
視聴者との距離を縮め、顧客目線でのブランディングを推進していると言える。
私が発行人を務める月刊「アイ・エム・プレス」では、
過去に2回ほど「顧客接点のブランディング」にかかわる特集を組んでいる。
例えば、2004年11月号の「ブランド価値を高めるコールセンター戦略」がそうだが、
本特集がコールセンターでいかにブランディングを推進するか、
というアプローチだったのに対し、上記の各社は顧客接点そのものを
ブランド広告に登場させるいわば逆からのアプローチ。
こうした広告にそそられてたどり着いた顧客接点が
広告表現と矛盾なく運営されていなければならないのは言うまでもない。
一方、顧客主導型経営の実践に向けてVOC(Voice of Customer)が
ブームとも言える様相を呈する中、実際のお客様の声を
フィーチャーした広告も増加してきた。
この類の広告は、健康関連商品の通信販売などでは昔からおなじみだが、
最近、目立つのは、コールセンターやWebサイトに寄せられた
お客様の声をそのままに紹介するといったもの。
例えば、11月21日の日本経済新聞(朝刊)40面では、
「キリンビールお客様センター受付記録から、一部抜粋。」のキャッチの下、
「探しています。どこに行けば購入できるでしょうか。」
「折に触れ、馴染みのドイツ料理店で愛飲しておりました。」など、
「ブラウマイスター」にかかわる12のお客様の声をVOC仕立てで紹介している。
こうした「VOC広告」(私が勝手に付けた仮称です)は、
新聞のみならずテレビでも登場しているようで、
弊社編集スタッフはマツモトキヨシのそれを見たとか。
こうしたVOC広告は確か17~18年前にも流行ったことがあるが、
ここにきて再び増加している背景には、古くからあるVOC広告の手法が
顧客主導型経営への文脈の中で再び脚光を浴びたというだけでなく、
CGI(Consumer Generated Media)の台頭と共に
口コミのパワーが注目されていることとも無関係ではないだろう。
今日は、最近よく目にする、顧客接点のブランド広告への起用、
顧客の声を紹介する広告の2つのアプローチをご紹介したが、
11年前から顧客主導型マーケティングを提唱している弊誌としては、
こうした現象が単なるブームで終わらないことを祈って止まない。