ショッパー・マーケティングに関するDMフォーラムに参加して

2011年9月23日

昨日は、日本ダイレクトマーケティング学会の主宰による
第33回DMフォーラムに参加してきた。
今回のテーマは、「ショッパー・マーケティング」。
中央大学ビジネススクール 教授の中村博氏による、
「ショッパー・マーケティング— コンシューマー志向からショッパー志向へ—」と、
花王(株)ダイレクトマーケティングセンターの鈴木直樹氏による、
「花王におけるショッパー・マーケティングの事例について
~Webにおけるダイレクトマーケティングの可能性と課題~」の2講演が行われた。
ショッパー・マーケティングとは、売場価値とブランド価値を高めるために、
「ショッパー」の購買行動を理解し、店頭での購買モードを高め、
購買に至らせるすべてのマーケティング活動を指すとのこと。
従来からのコンシューマー(消費者=生活者)やカスタマー(顧客)とは異なる、
ショッパー(買う人)という視点でマーケットを捉えることにより、
小売業の販売方法はもちろん、メーカーの商品開発も変わってくるという。
中村先生のお話の中では、英国最大の小売業であるテスコの事例が興味深かった。
同社では「クラブ・カード」と称するポイントカードから得られる顧客の購買履歴と、
「商品DNA」と呼ばれる商品に付与されたライフスタイル属性を組み合わせることで、
例えば「価格重視派」「健康志向派」といった顧客セグメントを構成。
会員向け機関誌に顧客セグメントごとに最適なクーポンを添付しているとのこと。
また、国内の事例としては、弊社でも何度か取材させていただいている、
山梨県のスーパー、オギノのダイレクト・クーポンの事例が紹介された。
※オギノのケーススタディは下記に掲載されています。
・『CRM年鑑2007』
https://im-press.jp/books/crm07.html
・月刊『アイ・エム・プレス』113号 
https://im-press.jp/magazine/113.html
このようなショッパー・マーケティングへの注目が集まっているのは、
ブランドのパリティ化(同等・標準)とコモディティ化が進んできたため。
その背景としては、POS、ID付POSの開示が進んできたこと、
新たな店頭販促手法の登場やインターネットの進展、
そしてショッパーインサイトの把握と効果測定の進化を挙げられた。
つまり、テクノロジーの進化により、購買データの収集はもちろん、
店頭での情報発信、効果測定のそれぞれの局面において、
ショッパー・マーケティングのインフラが整ってきたわけで、
こうした現状を“店頭でのお客の動きがネットのように
わかるようになってきた”と表現されていた。
一方、鈴木さんのお話は、冒頭で花王の概況を紹介された上で、
ダイレクトマーケティングの必要性の背景、そして実際の活用事例へと展開された。
まず、ダイレクトマーケティングの背景のところでは、
市場の変化、消費者の変化を受けて、メーカーがどう変化すべきかを考える中で、
コミュニケーション領域(メディア)とセールス領域(チャネル)の双方を見据え、
従来からのマスマーケティングとダイレクトマーケティングの
最適ミックスを模索すると同時に、コミュニケーションからセールスに至るまでの
一貫したマーケティング・マネジメントを志向してきたという経緯を披露。
具体的には、コミュニケーション領域においてはネット系メディアの強化、
コンテンツの細分化、ソーシャルメディアへの参加などの方針を打ち出す一方、
セールス領域では(この辺り一部メモが追いつかなかったが)
自社通販のポジショニングを新規商品の販売、海外市場などへの販路の拡大、
入手困難な商品の継続購入などのサービスとしての通販展開などに設定。
流通通販をも含めた各チャネルの位置付けと役割を明確化し、
コンフリクトを起こさないように配慮すると同時に、
消費者の購買モチベーション劣化、チャンスロスを防ぐ動線の確保、
メーカー・流通・消費者のwin-win-winの実現を目指すことを決めたという。
そしてお話の最後では、顧客データベースが店主の頭の中に入っていた
昔の八百屋さんライクな商売から、マスマーケティングの時代へ、
そしてネットマーケティングの時代へという時代の変遷を振り返ると同時に、
メーカーも商売の原点に戻ろうとのお考えを披露された。
以上、1講演70分という限られた時間の中に情報がぎっしりと詰め込まれたいたので、
私自身が咀嚼し切れていない部分もあるかもしれないが、
2講演のポイントを私なりにまとめてみた。
私自身の感想としては、まず、中村先生のご講演では、
前述の“店頭でのお客の動きがネットのようにわかるようになってきた”という一言が
ショッパー・マーケティングの全体イメージを把握するうえでとてもわかりやすかった。
月刊『アイ・エム・プレス』ではこれまで何度か、
店頭プロモーションやデジタルサイネージなどに関する連載を展開してきたが、
こうした店頭マーケティングの領域が、弊誌のコア領域とも言える
レスポンス広告やインターネット、コールセンターなどの顧客接点とつながる日も、
もうすぐそこまで来ているのかもしれない。
また、鈴木さんのお話では、ご講演を拝聴させていただくと同時に、
パワーポイントにダイレクトマーケティングの父、
レスター・ワンダーマン氏の写真が貼り付けられていたりするのを見るにつけ、
あの花王がここまで真剣にダイレクトマーケティングに
取り組んでいたのかということに思いっきり感動させられると同時に、
鈴木さんが月刊『アイ・エム・プレス』を定期購読してくださっていることを知り、
とても嬉しく、また誇らしく思った。