キューバのタバコ農家に学ぶ

2008年1月5日

昨晩、帰宅してテレビをつけると、「カリブ世界遺産紀行」(NHK)
という番組が放映されていた。宇崎竜童と阿木耀子が案内役を担っており、
私が見たときにはキューバの音楽や生活の話題が繰り広げられていた。
レゲエやソウルフード好きの私にとっては、音楽や食事の話も興味深かったのだが、
中でも印象に残ったのは、しばらくして放映されたタバコ農家の話。
その農家では、トラクターを使わずに牛を使って畑を耕し、
タバコを育てているとのことで、最初はフーンと横目で見ていたのだが、
その家の世帯主と見られる黒人のオジサンの下記の一言にアッと思った。
トラクターを使うと、土の中に埋もれている植物の根っこが、
文字通り根こそぎ表面に露出してしまうんだ。
だから、大雨でも降ろうものなら、すべてが流されて粘土質の土のみが残り、
翌年には使いものにならなくなるんだよ。
ちょっと違うかもしれないが、まあ、こんな感じだ。
私がアッと思ったというのは、なんだかマーケティング・
コミュニケーションの話に通じるものがあると感じたから。
何年か前、“ダイレクトマーケティングの父”の異名を持つ
レスターワンダーマンの講演をはじめて聴いたときのこと。
氏は自らが生み出したダイレクトマーケティングについて、
現代の情報通信技術を駆使することで、
産業革命以降のマスプロダクツ、マスマーケティングの時代から、
売り手と買い手が一対一でやりとりしていた
古きよき時代に回帰することができると語っていた。
この話を聞いたとき、思わず胸が熱くなったことは今でも鮮明に覚えている。
しかし、元旦の「通勤電車」にも書いたように、
最近では加速度的なIT化の波に追いかけられて、
マーケティング・オートメーションに走り過ぎてはいないか。
このままでは粘土質の土ばかりになり、
タバコどころかいっさいの作物が育たなくなるのではという不安にかられた。
はるか昔から代々受け継がれてきた農業を営む人たちは、
幾度となくオートメーション化の波をかぶりながらも、
自分たちがどこにこだわり、どこを合理化すべきかを真剣に考え、
さまざまなトレードオフを潜り抜けて
そのありようを模索し続けてきたという意味で、
現代のIT社会に生きる私たちが学ぶべきところを内包しているのでは。
キューバのトラクターを使わないタバコ農家のありようを見ながら、
私はそんなことをふと考えてしまった。
そう、大切なのは、時代に流されることなく、
今一度、自分たちが本当にやりたいことを突き詰めて、
考えてみることではないだろうか。
その結果、トラクターを使おうが、使うまいがである。