カスタマー・リレーションのマネジメント

2006年6月17日

ちょっと前の話だが、日本マーケティング協会の総会の折に、
神戸大学大学院経営学研究科の石井淳蔵教授による
「営業が変わる カスタマー・リレーションのマネジメント」
という講演を聞いた。営業のセミナーというのは珍しいが、
これがなかなか面白かったので、皆さんにも紹介しようと思う。
まず最初に、日本企業の課題として以下の6点を挙げた上で、
本講演のテーマが6つ目のマネジメントの欠如に絡んでいることを説明。
<日本企業の課題>
・構造的特質としての低収益性
・投資利益率か、営業利益率か
・歴史的な収益性の悪化
・イノベーションの欠如
・グローバル化の欠如
・マネジメントの欠如
次に本題に入り、以下の4項目に及ぶ講演が行われた。
・カスタマーリレーションのマネジメント
・カスタマーリレーションの変革が必要なわけ
・カスタマーとの案件のマネジメントと関係のマネジメント
・終わりに
ここではその全貌はとても紹介できないが、
中でも印象に残ったいくつかの点に言及しようと思う。
まず1点目は、マーケティングと営業の定義。
石井先生は、マーケティング=顔の見えない客への対応、
営業=顔の見える客への対応であり、
だからマーケティングはブランドを媒介とすると説明されていた。
わかりやすい定義ではあるが、逆に言えば、
いかに客の顔を可視化するかがマーケティングの課題でもある。
2点目は、求められているのは、人のマネジメントではなく、
案件・関係のマネジメントであるということ。
関係は案件を獲得するために必要であり、
案件を解決するマネジャーと、関係を解決するマネジャーの
双方が必要との考えに基づき、それぞれの留意点を紹介された。
3点目は、プロセス・マネジメントの位置づけということで紹介された
組織(表足)×スキル(表頭)のマトリクス。
表足の組織は標準的と非標準的、
表頭のスキルは画一的と創意工夫で構成されており、
組織が標準的でスキルが画一的→マニュアル・スキルアップ型、
組織が標準的でスキルが創意工夫→プロセス・マネジメント、
組織は非標準的でスキルが創意工夫→属人型プロセスといった具合。
これはとてもわかりやすく、営業だけでなくサービス組織においても、
またコールセンターにも応用できるのではないかと思った。
なお、本講演の参考文献として、
石井先生の営業が変わる:顧客関係のマネジメント
(岩波アクティブ新書、2004年)が挙げられていた。