昨年、家から徒歩1分のところにスーパーAができた。
生鮮三品が売りで、値段もけっこう安い。
毎週、金曜日には派手派手しい新聞折り込みが入ってきて、
各日の特売品が案内される。
朝10時から夜は11時まで営業しているので、
仕事をそこそこで切り上げれれば、会社帰りに立ち寄ることもできる。
このスーパーが開店したことで、
私の食品の購買スタイルは大きく変わった。
以前は、徒歩数分のやや高級なスーパーBに出向いて、
その日に食べたいもののみを買うというのが基本であり、
これは「何が食べたいかはその時にならないとわからないので、
冷蔵庫の中にストックされたもので自分の食生活を規定したくない」
という厳然たるポリシーに裏付けられた購買行動だと確信していた。
しかし、気がついてみると、スーパーAが開店してからというもの、
私は食品をまとめ買いするようになっていた。
例えばビール(じゃなくて発泡酒)。
それまでは前述のポリシーに則り、飲みたい時に、飲みたい分だけ、
しかも、飲みたいブランドのビールか発泡酒を買うのが基本だったのに、
いつしか6缶単位の発泡酒のまとめ買いをするようになっている。
一時期、お酒の購入に不便なところに住んでいたときには、
酒屋からビールをとっていたこともあるが、
そのときだって、定番のビールに加えて、
季節季節の新製品を何種類も取り混ぜて届けてもらっていたのに、
今度は「6缶○○円」という同じ種類の発泡酒を買っているのだ。
そもそも、私の毅然たるポリシーを横においても、
家の近くにスーパーができるということは、
いつでもすぐに冷えたビールが買えることを意味しており、
これまで以上にまとめ買いの必然性がなくなっているにも関わらず、
「6缶○○円」のまとめ買いに走るという不可思議な購買行動の変化。
これはビールに限らず、生鮮三品にもおよび、
うちの冷蔵庫はにわかに活気付いてきた。
結局、私は潜在的バーゲンハンターだったということなのか?
こうした購買行動の変化は私自身にも予測がつかなかったが、
スーパーBがいくら競合店のマーケティング戦略を調査し、
そして私の購買実績を分析したところたところで、
私が離反顧客となることは予測不可能だったに違いない。
何せスーパーAが開店するまで、
私はビールのまとめ買いをすることもなければ、
バーゲンハンターでもなかったのだから・・・・。
仮にデプス・インタビューを受けたとしても、
私は前述のようなポリシーを理路整然と語っていたであろう。
結果、私のビールの購入金額は「6缶○○円」の利用により
トータルでは恐らく減少しているだろう。
しかし、購入金額に占める購入店舗別のシェアで言えば、
まとめ買いに伴いコンビニなどで浮気をしなくなったために、
限りなく100%近くがスーパーAに集中し、
スーパーAにおける私の1ヶ月間のビール購入金額は、
かつてのスーパーBにおけるそれをはるかに上回ることになった。
自分のこととは言え、生活者の行動は本当にわからない。
そして私にとっては、スーパーAの開店は経済的にはありがたいのだが、
特に生鮮産品や惣菜などはどうしても食べ過ぎてしまい、
ヘルスメーターに乗るのが怖いという困った事態ももたらしている。
スーパーAは果たして、このことに気がついているのだろうか?
まとめ買いの動機
2006年3月5日