逆転の発想から誕生 DCカード「カッパとたぬき」

DCカード「カッパとたぬき」

“常識”を飛び超えた型破りなキャラクター

 旅行好きの青年、「DC 貴一っちゃん」といっしょに旅するキャラクターと言えば、「カッパとたぬき」。コミカルなテレビコマーシャルでお馴染みの面々である。
 「カッパとたぬき」が登場するテレビコマーシャルがはじめてオンエアされたのは、今から8 年前の1990 年5 月21 日。この日が「カッパとたぬき」の誕生日というわけだ。
 しかし、カード会社のテレビコマーシャルに、なぜ「カッパ」と「たぬき」のペアなのか? 大いに気になるところである。
 実はこれは、逆転の発想から生まれたキャラクターなのだ。そもそもカード会社にとって何よりも大切なのが“信頼”。そのためカード会社のCM には、ステイタスを前面に打ち出した堅い路線のものが多かった。また日本では欧米諸国と違い、いまだにカードを持つことに抵抗を持つ人が少なくないということもあり、“カード”そのものがどうしても重いイメージを持たれがちであった。そこで同社では、特に20 代の女性にもっと積極的にカードを利用してもらうため、この重たいイメージからの脱却を図ろうと考えたのである。
 コマーシャルのコンセプトは、“DC カードを持っていれば誰でも信頼される”ことをコミカルにわかりやすく伝えること。もともと同社では中井貴一を10 年前からキャラクターとして採用しており、評判が良かった。そこで中井貴一とともにコンセプトを表現するキャラクターを作ろうということになった。“誰でも”という点を強調するために、はじめはなんと「たぬき」と「サギ」が候補に挙げられていた。かたや人をだます動物の代表格である「たぬき」、一方はその名の響きがどうもうさんくさすぎる「サギ」。“信頼”という言葉とはほど遠いキャラクターを採用することによって、逆に“信頼”を際立たせようというわけである。しかし、さすがに信用第一のカード会社に「サギ」は不適当ということになり、白羽の矢が立ったのが「カッパ」。それにしても「カッパ」は架空の動物であり、「サギ」ほどではないにしろ、あやしげなところは変わりない。しかし実は、「たぬき」は“他を抜く”、「カッパ」は商売において“人を引きずり込む”と、しっかり縁起もかついでいるのだ。
 ロケはニューヨークで行われた。オンエアされると、逆転の発想をついたこのコマーシャルのインパクトは、期待通りに大きかった。それまでのカード会社のコマーシャルと比較すると驚くほどソフトな内容に仕上がっており、同社の社員も驚いたほどだ。コマーシャルの評判と併せて、「カッパとたぬき」にも予想以上に人気が集まった。もともとこのコマーシャル1 回きりのキャラクターとして生まれた「カッパ」「たぬき」であったが、急遽続投が決定。この時、実はロケで使われたキャラクターのぬいぐるみはニューヨークで廃棄処分となっていた。「カッパとたぬき」はゴミとして捨てられる寸前に九死に一生を得た形で、あわてて引き上げられてきたという。この2 匹は以来8 年間、コマーシャルのほか、入会申込書、カード会員への各種案内、会員のポイント獲得の景品、入会促進用のプレミアムなどに登場し、幅広い活躍を続けている。

グッズでも愛嬌をふりまく「カッパとたぬき」

グッズでも愛嬌をふりまく「カッパとたぬき」

大切に育て、息の長いキャラクターに

 大活躍の「カッパとたぬき」には、実は名前がない。性別も不明。言葉をしゃべることもしない。今までもこれからもこのままである。これは幅広く活用していくために性格付けをしないという同社の意向によるものだ。はっきりしているのは、身長が2m だということだけ。これは「DC貴一っちゃん」とのバランスから決定された。
 キャラクター・デザインを手がけたのは(株)電通。親しみやすさと若々しさにポイントを置き、なおかつかわいらしさと愛嬌を備えたキャラクターに仕上がっている。20 代女性のみならず、30 代?40 代の主婦層を含め、女性を中心に高い人気を博している。
 同社では、「カッパとたぬき」を“DC カード”のキャラクターとして、さらにはメイン・キャラクターの“DC 貴一っちゃん”に付属するサブ・キャラクターとして位置付けている。しかしサブ・キャラクターと言えども、DC カードの認知度向上に「カッパとたぬき」が果たしている役割は絶大。当初のターゲットであった20 代女性はもとより、調査結果によると、約7 割の人が「『カッパとたぬき』と言えば“DC カード”」と応えるほど認知度が上がっているといい、自ら“DC カード”のプロモーションを先導する勢いだ。
 キャラクター・グッズは、ボールペン、シャープペン、巾着などいろいろあるが、すべて非売品。お金を払えば手に入るというものではない。昨今のキャラクター・ブームにのり「ぜひUFOキャッチャーのぬいぐるみに」などといった引き合いは後を絶たないが、すべて断っているという。同社では8 年間親しまれてきた「カッパとたぬき」をこれからも使い続けていきたいと考えている。そのためには濫用を避け、大事に育てていく必要があるのだ。
 同社からも生活者からも愛されている「カッパとたぬき」。息の長いキャラクターとしてますますの活躍が期待される。今後、「DC 貴一っちゃん」とどんな旅を繰り広げてくれるのか、大いに楽しみである。

カッパとたぬきのプロフィール


月刊『アイ・エム・プレス』1998年2月号の記事