1994年にヘルシーネット(後のケンコーコム)を立ち上げて健康関連商品のオフラインの通信販売に参入、2000年にECサイトを立ち上げてこれをオンライン化した後、2004年に東証マザーズに上場された後藤さんとは、私が月刊『アイ・エム・プレス』を発行していた1995~2014年に取材や講演にご協力いただいた、もうかれこれ20年以上のお付き合い。その後、2016年に多言語コミュニケーション・ツールに関するサービスを提供するジャクール(現在のKotozna)を立ち上げられた後も、何度か近況をお伺いしてきましたが、2023年6月21日に生成型AIチャットボットを活用した新サービス「Kotozna ConcierGPT」の提供を開始されたとのことで、そのプレス・ランチョンにお邪魔してきました。
Kotoznaではこれまで、宿泊施設向け多言語対応のデジタル・コンシェルジュ・サービス「Kotozna In-room」(現在、約300施設に導入済み)や、世界との言葉の壁をなくす事業者向けチャットツール「Kotozna laMondo」を提供することで、宿泊施設やサービス提供者の多言語化・DX化を支援してきました。一方、長引くコロナ禍のもと、これらの宿泊施設などにおいては、業務の効率化とおもてなしをいかに両立させるかが大きな課題に。こうした中、同社では、LLM(大規模言語モデル)の進化とそれまでに培ってきたテクノロジーを組み合わせることで、「Kotozna ConcierGPT」を開発・提供するに至ったそうです。
「Kotozna ConcierGPT」の特徴は、①各宿泊施設などに固有のデータベースの学習×独自のプロンプト・エンジニアリング技術により、ハイコンテクストな質問にも、実際の接客応対に近いホスピタリティに富んだ対話形式で具体的な回答を返していくことができる(「Kotozna In-room」のデータベースなどとのデータ連携も可能)、②Kotoznaの多言語ソリューションとの組み合わせで世界数十言語に対応できる、③回答の正確性に定評のあるOpenAIが提供する「GPT-4」を搭載している、④Kotozna独自のプロンプト・エンジニアリング技術により、天気や日の出時刻、台風・地震などの刻々と変化する情報に関する問い合わせにも回答できる、⑤1週間程度の短期間で導入企業の固有データを学習させ、セットアップすることができるなど。
後藤さんは、チャットGPTが登場した当初、その卓越した能力に感銘を受け、これはかつてのインターネットの誕生、Googleの出現に匹敵する、人間とコンピュータのかかわり方を根本から変えるモノだと確信されたとのこと。振り返ってみれば、後藤さんはインターネットが普及する以前から通信販売会社を立ち上げられ、その後、これらのテクノロジーの進展と足並みを揃えて、日本のインタラクティブ・マーケティングをリードして来られたお一人。私が取材させていただいた中でも、SEO(検索エンジン最適化)にいち早く注目し、ケンコーコムのECサイトでロングテール戦略を実行されていたことが今や懐かしく思い出されます。その後藤さんがインターネットやGoogleの登場と同じレベル感でチャットGPTに感銘を受けたと言われているのですから、これは目が離せません。
この「Kotozna ConcierGPT」は2023年6月から、沖縄県糸満市のサザンビーチホテル&リゾート沖縄にテスト導入されており、本導入に向けてさまざまな質問のパターンをトライアル中。後藤さんによるとチャットGPTは、“バイリンガルでおしゃべり上手だけど物知り博士ではない新卒社員”のような存在で、同社のサービスはこれにマニュアルを与えることで、より正確でスムーズな回答を実現しているそうです。現在のところ、その機能は宿泊施設の予約サポートに特化されていますが、今後は宿泊施設内のさまざまな業務に対応させるとともに、他業種の多言語カスタマーサービスを提供するプラットフォームへと進化させていく意向とのこと。
日本コールセンター協会が2022年に行った生活者アンケート※によると、チャットは、商品・サービス購入に先駆けての事前情報収集手段としては2.1%、商品・サービス購入後の疑問・不明点・不満の解決手段としては7.6%が利用しており、現状では必ずしも多くはありませんが、疑問・不明点・不満の企業への問い合わせで希望する手段では、チャットを希望する回答者が全体の18.5%にまで達しています。今後は人手不足やパンデミックへの懸念などによりチャットがますます増加することが見込まれる中、そこで生成型AIが活躍する日は、もう手の届くところに来ているのかもしれません。
ちなみに「Kotozna ConcierGPT」は、初期費用が10万円~、月々の費用は、ベーシック(GPT-3.5)が3万円/月、プレミアム(GPT-4)が6万円/月で、年内に100施設への導入を目指しているそうです。
※『CCAJガイドブック Annual Report Vol.32 コールセンター最新事情 2022-2023』(日本コールセンター協会)
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