先週は月刊『アイ・エム・プレス』7月25日発行号の締め切りだった。
本号の特集テーマはニッチマーケット。
昨年、某編集スタッフが提案した特集をアレンジしたものなのだが、
ニッチの定義は何なのかとか、ニッチマーケット≠ニッチビジネスだとか、
そのコンセプトを明確化すること、スタッフ間で共有することが難しく、
当初からあっちにぶつかり、こっちにぶつかりの連続だった。
何が難しいって、そもそも、マーケットというものが必ずしも
シンプルな人口動態学的な属性だけでは切れないため、
どのような軸でニッチマーケットを捉えるかが難しいということに加え、
時間経過とともにマーケットが成長する、
すなわちニッチがニッチでなくなるケースも少なくないからだ。
実際問題、ニッチマーケットに参入した企業の多くは、いつしかこれが成長して
ビッグビジネスになる日を心待ちにしていたりするだろう。
喧々諤々?の議論の末、今回の特集では、
市場が急成長しており、ビッグビジネス化の可能性があることを条件に、
あらかじめいくつかのニッチマーケットの軸を抽出し、
これに基づき取材先の候補をリストアップするという方法を採った。
この段階で上がった軸としては、オタク、在日外国人、お一人さま、等々。
軸としては抽出したものの、適切な取材先が見つからないものや、
見つかっても取材にご協力いただけなかった企業もあるので、
最終的なケーススタディのラインアップは青写真通りとはいかなかったが、
それでも、いつものように4社への取材を行った。
加えて、東北芸術工科大学の教授であり、
「『1人勝ちマーケット』を狙え!
—ニッチの中に大化けするビジネスチャンスあり」の共著者でもある
平林千春さんに、ニッチマーケットの攻略方法についてインタビュー。
私は平林さんのお名前はもう何十年も前から知っていたが、
実際にお目にかかったのは今回がはじめて。
ニッチマーケットは氷山のようなもので、
現在、顕在化しているのはその一部に過ぎず、
水面下にはその何倍もの市場が潜んでいる可能性があるとか、
縦型・横型の双方のニッチマーケットの拡大事例、
そしてニッチマーケットで成功する方法など、
貴重なご意見をお伺いした。
4社への取材と、平林さんへのインタビューが終了した後、
いつものように、本特集にかかわった編集スタッフを集めて、
総論の構成と方向性を話し合うディスカッションを実施。
ここでは取材にご協力くださった各社の情報や、
平林さんへのインタビュー結果に支えられて、
喧々諤々とまではいかずに総論の方向性を固めることができた。
本号の発行は、7月25日。
当日の朝までには、概要が弊社サイトにアップされるので、
詳細はそちらをご参照ください。
なお、7月2日の「THE WALL STREET JOURNAL」で、
ハーバードビジネススクールのAnita Elberse教授が
Chris Anderson氏に異論を唱えたことを契機に
ロングテールの法則についての議論が活発化していることを知ったが、
そもそもニッチマーケットはロングテールのテール部分にかかわる市場。
本特集の総論ではロングテールという言葉は用いていないが、
本特集を企画した背景として、インターネットにより
ニッチ(≒テール部分)への攻略が容易になったこと、
そこでは生活者の口コミが大きな威力を発揮し、
ビッグビジネス化(≒ヘッド部分)へのひとつのきっかけとも
なりうることに言及している。
そもそものロングテールについての議論は、
月刊『アイ・エム・プレス』のコメンテーターでもある
ルディー和子さんのブログ「明日のマーケティング」に詳しいので、
そちらをご参照ください。
(私もWSJの記事の翻訳にチャレンジしましたが、英語力が追いつかなくて。[[pict:zzz]])
8月号の特集はニッチマーケット
2008年7月13日