食品のトレーサビリティに思う

2008年1月12日

最近では、食品メーカーなどの不祥事が相次ぐ中で、
消費者の企業に対する不信感は高まる一方。
これを受けて、食品の生産地や生産方法にかかわる情報を
QRコードなどを使って開示する動きが活発化している。
今週の日本経済新聞を見ても、10日の夕刊・5面に掲載された
「携帯サイトに原産地・アレルギー 外食、『安全』一目で」、
11日の朝刊に掲載された「『生産履歴』購入の決め手に」と、
外食やスーパーにおける動きが広がっていることを次々に報じている。
私自身は幸いなことにアレルギーがあるわけではないし、
どちらかというと細かいことは気にしないほう。
冷蔵庫にしまっておくうちに賞味期限を過ぎてしまったような食品も、
けっこう「平気、平気!」と食べてしまったりするし、
店頭の産地にかかわる表示は一応、見るけれども、
PCやケータイで食品のトレーサビリティを確認したりはしない。
家族や自分自身のためにこうした確認を怠らない生活者には頭が下がるものの、
実は、あまりに神経質なのもいかがなものかと思っている。
そんな私だって、もちろん生産食品を購入する時には、
価格とにらめっこしながらも、新鮮なものを購入するように努めている。
やはり魚は生きが良くなくちゃいやだし、
色の変わり始めたような肉はいくら安くても買いたくない。
では、どうやって鮮度を確認しているのかと振り返ってみると、
まずは信頼できる店を選ぶことで買い物の“リスクヘッジ”を行い、
その上で自分の目で商品を選んでいるという感じかな。
店を選ぶに当たっては、過去の購入経験や店員の態度が最も重要だが、
トレーサビリティに力を入れているといったことも、
その時点では考慮に入れていると思う。
皆さんは、毎週木曜日の日本経済新聞の夕刊に掲載されている、
小泉武夫先生の「食あれば楽あり」という連載をご存じだろうか? 
毎回、何らかの食材、あるいは料理をテーマに、
筆者の体験を交えて、調理方法や食べ方、味などに言及しているのだが、
1月10日号では“ブリ照り焼き”を取り上げていた。
筆者が魚市場で購入した「富山湾定置網での天然ブリ」を照り焼きにする、
という筋書きなのだが、魚市場での店員とのやりとりがなかなか面白い。
筆者が若い店員を「おい、産地偽装じゃあるめえな」とからかうと、
その店員は、間違いなく富山産であることを伝えたうえで、
「もし違っていたら切腹してみせますよ。俺の目を見てください」と返答。
そこで筆者が店員の目を見ると、鋭い、いい目をしていたので、
「確かに富山産だ」と答えたというくだりである。
こうしたお客と店員とのやりとりは、
最近では滅多に見かけないシーンになってしまったが、
重要なのはその店舗と、そして目の前の店員と、
このような信頼関係が持てるかどうかだと思う。
そしてそのためには、PCやケータイといった道具立て以前に、
その会社の企業理念や経営者のあり方、
そして、従業員のあり方が問われていると言えるだろう。