昨日は数年ぶりに、法政大学ビジネススクール
イノベーション・マネジメント研究科の小川孔輔先生にインタビューを行った。
先生がこの春、『異文化適応のマーケティング』を監訳されるという噂を聞きつけ、
折りしも4月25日発行の5月号で予定していた月刊『アイ・エム・プレス』の特集
「アジア進出を果たした日本の小売・サービス業」(仮題)のコンテンツの1つとして、
インタビューをお願いすることにしたのだ。
その後、東日本大震災の影響で特集スケジュールが変更になり、
同特集は6月25日発行の7月号に掲載することに。
同様に、『異文化適応のマーケティング』も発行が5月に延期されたとのことで、
昨日、お邪魔させていただいた時には、表紙のデザインと、
数百ページにも上る本文が研究室の机上で最終校正を待っている状態だった。
先生にインタビューさせていただいた内容は、以下の5項目。
①日本企業のアジア進出について
②グローバルな視野から見た日本文化の特異性
③文化の差異がマーケティングに与える影響
④異文化間のマーケティング・コミュニケーションにおける留意点
⑤アジア市場におけるマーケティング展開の課題と展望
先生のお話は、まずは、国内市場の現状から考えて、
“どう考えても(アジアに)行かざるを得ない”ということと併せて、
国内の人材マーケットの面から見ても、
飲食業などではすでに多くのアジアの国の人々が入ってきていることから、
すでにひとつのマーケットの中で商売をしていることを
意識しなければならないというところからスタートした。
そして、日本文化の特徴として、相手の気持を汲んで接客を行うこと、
約束を守ること、責任感が強いことなどを挙げられた上で、
そうした文化の中で育まれてきた製品やサービスにフォーカス。
日本の製品については古くから定評があったものの、
最近ではアジア市場が豊かになってきたことに伴い、
日本の製品のみならずサービスも高く評価されるようになってきたと指摘された。
一方、企業が海外進出するに当たっての壁としては、
言葉の壁、文化の壁、制度の壁があるが、
中でも最も超えるのが難しいのは文化の壁であるとのこと。
文化の壁とは、モノの見方、換言すれば基準が異なることを意味するだけに、
日本型のビジネスを構成する要素のうちどの部分を残し、
またどの部分を各国の文化に応じて変更していくのか、
その切り分けが最も難しいのだという。
そして、この難題をクリアするためには、
日本企業が“自分達は上”という意識でアジア市場に向かうのではなく、
何が良いかを決めるのは市場を構成する1人1人の生活者であり、従業員である,
という認識を持った上で、切り分けを行う能力が求められるとのこと。
もちろん、その国が好きであることも重要な条件で、
過去の成功企業の中には、その国に骨を埋めてもいいといった
心構えの日本人が少なくないのだという。
月刊『アイ・エム・プレス』の誌名に冠したアイ=Iとエム=Mは、
インタラクティブ・マーケティングの頭文字を取ったものだが、
日本企業がアジア諸国に進出するに当たっては、
その国の人々とのインタラクティブ・マーケティングが不可欠という意味で、
弊誌が「アジア進出を果たした日本の小売・サービス業」(仮題)を
特集するにふさわしいインタビューになったと思う。
ちなみに、小川先生の監訳書『異文化適応のマーケティング』は、
現在のところ、5月20日に発売される予定。
フランス人とアジア系オーストラリア人が著者(ウズニエ&リー)というだけに、
「文化的相対主義」と「反フォーディズム」など、
反アメリカ的なマーケティング思想を特徴としており、
これまで米国からマーケティングを学び、そのスタイルを踏襲してきた
日本企業にとっては、学ぶべき点が多そう。
すでに先生のブログに「4つの部のイントロダクション原稿」、
「監訳者あとがき」などが公開されているので、
ご興味のある方は、発売に先駆けてチェックしてみては。
法政大学の小川先生に日本企業のアジア進出に当たっての留意点をインタビュー
2011年4月16日