コールセンター市場ウォッチング

2012年5月20日

弊社ではこのところ、『コールセンター年鑑 2012』の発刊を前に、
コールセンター/コンタクトセンターを支援する
IT&アウトソーシング企業にお邪魔したり、
クライアント側のコールセンター/コンタクトセンターの
ご担当者に取材させていただいたりしている。
まず、IT&アウトソーシング企業のお話をお伺いして痛感するのは、
数年前から言われていることではあるが、
大手企業によるコールセンター/コンタクトセンター開設が一巡したことで、
市場の伸びが低迷、価格競争が激化していることだ。
こうした環境下で、IT企業は既開設企業によるリプレースや、
中堅・中小企業の需要にフォーカス。
あるいはコールセンター/コンタクトセンターの周辺領域へと
視野を広げる企業も登場している。
方やアウトソーシング企業においては、
これまで、伝統的なオペレーションのアウトソーシング事業から、
派遣やインソーシングなどクライアント社内のセンターの支援事業へ、
あるいは電話対応からeメール対応へとサービス領域を拡大すると同時に、
センタースタッフの教育やコールセンター/コンタクトセンターで収集した
VOCの蓄積・分析などへとサービスを深化させてきた。
そしてここにきて各社が一様に注力しているのが、
事務処理全般を請け負うビジネス・プロセス・アウトソーシング事業と、
ソーシャルメディア関連の支援事業である。
大手企業では、試行中のもしもしホットラインを除く各社がこの分野に参入済みで、
ソーシャルリスニングからパッシブ&アクティブサポート、
ひいてはFacebookページの運用に至るまで、幅広いメニューを打ち出している。
先行企業の中には「この分野は儲からない」とする向きもあるものの、
成熟したコールセンター/コンタクトセンター市場において、
各社とも何らかの新機軸を打ち出していかざるを得ないというのが現状のようだ。
一方、クライアント側のコールセンター/コンタクトセンターの
取材から見えてくるのは、顧客満足の鍵となる人材の活性化に向けて、
きめ細かい創意工夫を積み重ねる企業がある一方で、
生産性の向上に向けて科学的なマネジメントを
とことん追求する企業もあるということ。
これらの取り組みは今に始まったことではないが、
そのいずれもが、各社の企業努力により、
ますますブラッシュアップされてきているのだ。
顧客満足と生産性をどうバランスさせるかは、
コールセンター/コンタクトセンターにおける永遠の課題であり、
あらゆるセンターにおいて双方の取り組みが求められるのは言うまでもない。
しかし見渡してみると、やはりサービスにかけるコストと、
その結果としての長期的な収益との相関を測定することが困難を極める中、
プロフィットセンターとしての側面が強いところは前者に、
コストセンターとしての側面が強いところは後者に比重を置く傾向が強いようだ。
またソーシャルメディア対応に目を向ければ、
コールセンター/コンタクトセンターをベースとした
アクティブサポートに果敢に挑戦する企業が存在する一方で、
これに消極的な企業も少なくない。
後者の企業では、そもそも自社がソーシャルメディア対応に
踏み切るべきか否かを思案している段階にあるようだ。
昨今のソーシャル化の波は、もはや止めることはできない。
問題のある商法の台頭や個人情報の流出などにより一進一退を繰り返しながらも、
人々によるソーシャルメディアの活用は今後も活発化し、
これに伴い、企業のソーシャルメディア対応も総じて進んでいくに違いない。
そして企業内のソーシャルメディア対応の担い手としては、
そのコミュニケーションや人材マネジメントにかかわる経験やスキルを考えれば、
やはりコールセンター/コンタクトセンターが適任と言えるだろう。
そこでの主な懸念材料は、炎上とコストの問題だ。
前者については、社内外に向けたソーシャルメディアポリシーの策定、
および具現化が鍵を握っているものと思われるが、
後者については結局、前述した電話やeメールの場合と同様の壁、
すなわちサービスにかけるコストと、
その結果としての長期的な収益との相関という問題に突き当たるだろう。
そしてこの壁を乗り越えるためには、技術革新によるコスト削減や、
ビッグデータの集積による分析の精緻化の可能性を見極めると同時に、
トップマネジメントを巻き込んでの企業そのもののソーシャル化の推進、
さらには、私たち1人1人が社会を、そして市場を構成する一員として、
責任ある選択をしていくことが問われているように思う。
いくつかのコールセンター支援企業、
そしてそのクライアントでもあるコールセンターにお邪魔させていただく中で、
そんなことを考えさせられている。