お客様からの賞賛に注目する

2009年5月30日

顧客のクレームをビジネスの改善につなげると、
CSが向上し、顧客の維持に寄与するが、
顧客の賞賛を顧客接点要員の評価システムにつなげると、
ESが向上し、顧客接点要員の定着に寄与する。
これらをどう“つなげる”かのサービスマネジメントと
いかに“寄与した”かの効果測定の指標づくりが重要。
上記は私が以前にTwitterにアップした“つぶやき”だが、
前回のブログで紹介した(株)ヤマグチの山口社長や、
(株)イワブチの鮭川(すけかわ)社長のお話をお伺いする中で、
その真ん中、すなわちESにかかわる部分に付いて、
いろいろと考えさせられるところがあった。
ヤマグチの場合、顧客からの賞賛は、
結果的な個人ごとの達成粗利というかたちで捉えられており、
これをデイリーで社内に発表することで営業員のモチベーションを向上。
日々の粗利が上位5位までの営業員については、
自宅までその成果をFAXして家族にも喜んでもらうという。
一方でイワブチの場合、顧客からの賞賛は、
顧客に良いところを記入してもらうアンケートというかたちで捉えられており、
これをフィードバックすることで担当営業のモチベーションを向上。
これにより個々の営業員はさらなる顧客満足の獲得に注力し、
結果的に収益が向上すると考えている。
以上は私が両社長にインタビューした一断面に過ぎないが、
あえてその範囲に絞って両者を比較すると、
ヤマグチは顧客サービスは収益に帰結するという考えのもと、
結果的な達成粗利で評価することで営業員のモチベーションを高めているのに対し、
イワブチは顧客満足を高収益達成の中間指標として捉え、
これを営業員のモチベーションに繋げているといえるだろう。
結果にフォーカスするか、中間指標を設けてプロセスを評価するか。
私にはどちらが正解かを断言することはできないが、
前述の私の“つぶやき”のESにかかわる部分に加筆するならば、
顧客の賞賛を顧客接点要員の評価の仕組みににつなげると、
顧客接点要員のESが向上するだけでなく、それがさらなるCSを加速する。
そして、最終的にはこれが収益に帰結し、顧客接点要員の努力に
経済的にも報いることができるということだろう。
営業員の場合は収益の達成が目的である以上、
その評価から結果的な収益を外すことは困難だが、
顧客からの賞賛を評価指標のひとつに加えるのは一案だ。
一方、コールセンターなど顧客サービスを主旨とする顧客接点においては、
ともすれば顧客からのクレームの矢面に立つ感情労働を強いられるだけに、
所定の基準をクリアしたかといった評価だけではなく、
顧客から寄せられた賞賛の声を評価につなげることで、
顧客接点要員のモチベーションを高め、定着率を向上させると同時に、
センターの収益への貢献度を高めることにもつながるのではないか。
そういえば以前、ある単品通販企業のコールセンターが、
お客様からお褒めの言葉をいただいたら壁に貼ってあるポスターにシールを貼る、
という取り組みを行っていると聞いたことがある。
子供じみた試みだと一笑に付す前に、
こうしたアナログな評価システムを再考してみてはどうか。
ESなくしてCSなしという話をよく聞くが、
CSなくしてESなしというのもまた現実である。
不況下にあって大企業のリストラや減俸の話が聞こえてくる中、
ましてや中小企業においてはない袖は触れない。
また、顧客接点で働く人材にとって、経済的な報酬もさることながら、
お客様の賞賛も“やりがい”に繋がる大きな要因に違いない。
そんな中で、この不況を抜け出すひとつの方法論として、
まずは収益達成への中間指標として、
お客様からのお褒めの言葉に注目してみてはいかがだろうか。