「勝手広告」の勉強会に参加する

2008年8月30日

一昨日、@NBCという勉強会に参加してきた。
そもそも私はこの勉強会の存在さえ知らなかったのだが、
SNSに「You Tubeで話題沸騰!『勝手広告』セミナー」という
イベントが紹介されていたので、思い切って申し込んでみたのだ。
告知を見たのが、折りしも、月刊『アイ・エム・プレス』9月号の特集、
「お客さまはクリエイター! UGC活用戦略」
編集作業の最中でもあったため、ことさら興味を持ったのだ。
一昨日の講師は、(株)ムービーインパクト代表の
神酒大亮さんとプランナーの磯田彩さん。
勝手広告とは、個人が“勝手”に作った広告風作品のこと。
■個人が制作するので制作費がかけられない(有名タレントなどは登場しない)、
■広告主の意志とは無関係に制作者個人の自由な発想で制作される、
などの特徴がある。
神酒さんは映画監督であると同時に、ヤマト運輸やNTTドコモ、Z会など、
さまざまな企業の勝手広告を制作。
http://jp.youtube.com/user/000521
6月末にはテレビ東京系の番組「うぇぶたま3」でも紹介されたという。
今回の勉強会では、同勉強会の役員で、
Z会の勝手広告の仕掛け人である寺西さんが司会を担当。
神酒さんが勝手広告の制作に乗り出した背景、
および、勝手広告の企画・制作方法やその舞台裏、
実際に勝手広告で取り上げられた企業や、
一般のネットユーザーからの反応に至るまでが、
お二人の経験を交えて披露された。
そもそも神酒さんが勝手広告の制作にたどり着いたのは、
映画をはじめ数々の映像作品を手がける中で、
学生・院生時代に親しんでおられた油絵が一点ものであるのに対し、
映像にはオリジナルがなく、広がりやすいことに注目したのがきっかけ。
しかし、そこには肖像権や著作権の壁があり、
これを超えるのは用意ではないというのが現実だった。
そこで神酒さんは、2006年からeメールで映像を送るメールCM構想を立案。
映像でアピールしたいミュージシャン等と仕事が欲しいクリエイターの
マッチング事業に取り組んできたが、双方ともに資金不足の中で事業は難航。
そんな中でたどり着いたのが、
クライアントがいないから、手始めに
CMっぽいショートフィルムを作ろう!

という発想→勝手広告の誕生だったという。
現在、神酒さんは、
1.誹謗中傷をしない
2.著作権を侵害しない
3.企業からクレームがあったら、検討の上で削除する
という3つのルールに則って多くの企業の勝手広告を制作。
これまでのところ企業からのクレームはないそうだが、
膨大なアクセス数を誇るだけに、個人からのツッコみは日常茶飯事。
神酒さんはこうしたツッコみを、視聴者とのコミュニケーションと捉え、
「ボケてばかりで、ツッコまれないとつまらない」と話されていた。
一方、司会の寺西さんは、勝手広告に注目した背景として、
企業が発信するメッセージが見られなくなってきていること、
コストがかからないことの2点を提示。
ちなみに、前出の「うぇぶたま3」で神酒さんの手による
Z会の勝手広告を取り上げてもらうに当たっては、
若干のコストを負担しているものの、神酒さんを信頼して、
制作面でのディレクションはいっさい行っていないとのこと。
神酒さんはこれを受けてZ会の情報を徹底的に収集し、
“いちばん良いところは採り上げない方針”で制作に臨んだという。
そのココロは、
広告らしからぬ広告がウケている。 
つまり、一番良いところを褒めても、
生活者は振り向かないと踏んでいるのだ。
また、寺西さんは広告主側の立場として、動画共有サイト上の勝手広告が、
クリエイター選びの“カタログ”になること、
逆に言えば、これがクリエイターにとってプレゼンの機会になる点も指摘された。
このことは、広告主が広告会社を中抜きして、
クリエイターに直接、発注するという、
広告制作のサプライチェーンの変革にもつながりかねない。
以上、一昨日の@NBCの模様を紹介した。
私自身は、冒頭でも述べたように、月刊『アイ・エム・プレス』9月号の特集と
@NBCのテーマがかぶっていたことが動機となって
同勉強会に参加したのだが、これまで勝手広告は、
シロウトかせいぜいクリエイターの卵が制作するものと思っていただけに、
プロのクリエイターである神酒さんを前に、
最初は「勝手広告ってなに?」とちょっと頭が混乱。
換言すれば、弊誌の特集テーマがUGC(User Generated Contents)の
マーケティング・コミュニケーションへの活用をテーマとしているのに対し、
プロのクリエイターである神酒さんが手がけた勝手広告は、
いわばプロが手がけたCGC(Creater Generated Contents)にほかならない。
もちろん、勝手広告の作り手には、神酒さんのようなプロだけでなく、
たくさんの素人がいるわけだが、それを誰が手がけようとも、
企業の意志によらない広告が動画共有サイトに掲載されていること、
そこに企業の意志によらないメッセージが打ち出されていることは共通している。
そして、モノも情報も手にした現代の生活者たちを動かすために、
こうした企業の意志によらない=宣伝臭を感じさせない斬新なコンテンツ、
また、弊誌で特集したような顧客の手によるコンテンツの活用が、
模索され始めているのだけは確かだろう。
神酒さんのパーソナリティもなかなか魅力的だったし、
結果的には、クーラーが利きすぎて寒かったことを除けば、
とても示唆に富んだ勉強会であった。