大人気を博し、ブランドイメージを確立 日本ペプシコーラ社「ペプシマン」

日本ペプシコーラ社「ペプシマン」

「ペプシマン」は「ペプシコーラ」そのもの

 時は1996 年。NASA は意志を持った宇宙金属の開発に取り組んでいた。ある時、たまたま研究員が飲んでいたペプシコーラの缶のロゴと宇宙金属が融合。そして誕生したのが、ペプシ・スピリッツに象徴されるチャレンジ精神、ユーモアのセンスをそのままに受け継いだペプシコーラの化身「ペプシマン」だったのである。
 ペプシマンは、ペプシでなければ癒せない、のどの渇きを訴える人々を救済するために現れた、アメリカ生まれのハイテク・スーパー・ヒーロー。その生体組成は超合金流体金属の特殊生命体だ。ペプシコーラを渇望する人がいれば、どこからともなく現れ、ペプシコーラを振る舞って去っていく。ペプシマンの活躍ぶりは人々に夢と興奮を与えてくれる。しかし、このかっこよさが15 秒以上続かないことが唯一の欠点。去っていく場面では、必ず失態を演じていることは、すでに周知の通りである。

日本ペプシコーラ社の今年のカレンダー。ここでも「ペプシマン」は大活躍

日本ペプシコーラ社の今年のカレンダー。ここでも「ペプシマン」は大活躍

 思わず吹き出してしまうペプシマンのテレビCM を見ていると、アメリカで放映されているものをそのまま日本に持ち込んだかのように思ってしまうが、実はこのペプシマン、日本ペプシコーラ社が独自に開発したキャラクターである。同社では、かっこいいだけではなく人に愛されるキャラクターを目指して、キャラクター作りに取り組んだ。CG 化は「スターウォーズ」や「ジュラシック・パーク」などの特殊映像技術を駆使した数多くの映画制作を手がけたことで知られるアメリカの映像制作会社、I.L.M.(Industrial Light+Magic)。同社の精巧なCG 技術により、ペプシマンのメタリックな質感とスピーディーな身のこなしをリアルに表現することに成功したのである。CG 制作では、人間味のある表情や動きを作り出すことに最も苦労し、多大なる時間と労力を費やしたという。
 日本国内におけるペプシコーラのシェアはまだまだ低い。そこで同社では、「コーラは赤」というこれまでの根強いイメージを崩し、ペプシコーラの認知度を高める方法として、ペプシコーラのブランドイメージを象徴するキャラクター「ペプシマン」を誕生させたのである。世界的に統一されているペプシコーラのブランドイメージを核にしたキャラクター作りに、見事に成功している。
 同社では、ペプシマンの持つ「おちゃめ」「スピード感」「クール」「未来的」「先進的」「チャレンジング」というイメージを、ペプシコーラそのもののイメージとして一般生活者に認識してもらうことができれば、と考えている。ペプシマンのイメージがそのままペプシコーラのイメージとなり、最終的には日本ペプシコーラ社のイメージへとつながっていくことを期待しているのだ。
 ところで、ペプシマンには顔がないことにお気づきだろうか。同社では、顔があることで生まれる余分な先入観をなくすため、あえて顔は作らなかったという。たとえば窓枠に額をぶつけた時の痛がる表情などを作り込んでしまえば、視聴者の心にはその表情が強烈に残ってしまうだろう。そのイメージが本来のペプシマンのイメージとすり変わってしまうことを危惧したのである。

ペプシマン人気が売り上げに直結口売上数量は二桁増に

 3 月にオンエアを開始した第一弾のテレビCM「ペプシマン 登場篇」を含め、これまでに「ペプシマン」が登場するテレビCM6 作が放映された。そのうち5 つがCM 総合研究所による月例好感率調査で堂々たる1位を獲得している。「消費者の方がペプシマンを通してペプシコーラを理解してくださった結果がこのような形で現れたのだと思います。それがとてもうれしいですね」と語るのは、同社広報・お客様相談室 桜井典子氏。ペプシマンはテレビCM のほかにも、製品のパッケージやPOP、ポスター、T シャツ、タオル、文具など約20 種類のノベルティ・グッズ、キャンペーンを告知するチラシ、ホームページなどペプシコーラに関するあらゆるシーンに登場する。また、1996 年7 月には、ZAIN RECORDSよりCM ソング「PEPSIMAN」のシングルCDを発売したり、ビッグホリデー(株)が主催するスキーツアーに、スノーボードをするペプシマンが大きく描かれたツアーバス「ペプシマンエクスプレス」を登場させるなどして、ペプシマン人気を盛り上げてきた。

大人気のペプシマングッズ

大人気のペプシマングッズ

 1997 年4 月から9 月中旬まで行われたオリジナルLED ウォッチが当たるクローズド懸賞「GET!! PEPSIMAN WATCH」キャンペーンには、LED ウォッチ3,000 個に対して約62万通の応募があった。同社ではこの人気に応えて、キャンペーン終了直後の9 月中旬から12 月29日まで、対象商品を600ml のペットボトルに限定して第2弾を実施した。
 ペプシマンの人気は、商品の売り上げに直結しているようだ。1995 年に前年比1%増だったペプシコーラの販売数量は、1996 年には前年比14%増を達成し、好調な伸びを見せている。同社では、今後さらにペプシマンの人気が販売数量増に結び付くことを期待している。
 1998 年、ペプシコーラは生誕100 年を迎える。この記念すべき年に、ペプシマンの出番はますます増えるに違いない。今後もペプシマンは、私たちの心を熱く刺激し続けてくれることだろう。

ペプシーマンのプロフィール


月刊『アイ・エム・プレス』1998年2月号の記事