一人ひとりに合わせた“ゆとり”のある旅行が支持されて多くのリピート顧客を獲得

(株)ニッコウトラベル

シニア向け旅行サービスを展開する(株)ニッコウトラベルでは、業務全般で、「お客さま一人ひとりに合わせた“ゆとり”のある旅行を実現する」姿勢を堅持することで、高いお客さま満足度を実現。旅行参加者の7割近くをリピーターが占めるという成果につなげている。

65歳以上のシニア層にターゲットを絞った“ゆとり”のある海外旅行を提案

 1976年9月の設立以来、65歳以上のシニア層にターゲットを絞った海外旅行の提案を続けてきた(株)ニッコウトラベル。同社が提唱する「ゆとり・安心・くつろぎ 疲れのない、からだにやさしい旅を。」というコンセプトは多くのシニア層から支持を集め、近年、競合が増加しつつあるシニア向け旅行業界の中でも確固たる地位を築いている。
 顧客層の中心は60~80代の男女であり、半数強を70代が占める。旅行先はヨーロッパが7割を占めており、同方面の一般の旅行商品では8日間程度の日程が中心となっているのに対し、12~13日間という比較的長期の日程となっている点が特徴のひとつだ。旅行代金は1人当たり70万円を超えるものが中心。航空機の座席については、お客さまの半数以上がビジネスクラスの利用を選択している。このようなお客さまが求めるのは“ゆとり”のある旅行であるという認識から、同社では旅行商品を“旅のゆったり度”により3段階に分類。お客さまの年齢や体力、足の強さに合わせ、「疲れずに、しっかりと観光ができる“ゆったり度1”」「ゆっくりとした歩調で観光を楽しめる“ゆったり度2”」「ほとんど歩かず、のんびりと旅を味わえる“ゆったり度3”」のいずれかの旅行を推奨し、さらに全商品に「旅行前日は空港ホテルに宿泊」「募集人員は最大定員25名様」「9時出発、ホテル着4時半」「ゆとりある連泊が基本」などといった付加価値を加えることで、そのニーズに応えている。
 さらに同社が主催するツアーの人気を高めているのが、自社添乗員によるきめ細かい添乗サービスである。一般に旅行業界では添乗員に外部スタッフを起用しているケースが多いというが、同社ではお客さまの求める旅行費用に見合った充実した添乗サービスを実現するためには自社スタッフによる対応が欠かせないと認識。一貫して正社員による添乗サービスを維持している。その対応の内容こそが同社における“おもてなし”の姿勢を象徴するものと言えるだろう。

お客さまによる面接を実施し「この人と一緒に旅行をしたい」人材を採用

 同社では、充実した添乗サービスを提供するためには、添乗員の質が重要であると認識。採用や教育・研修においてもホスピタリティに重点を置いた取り組みを行っている。
 例えば、採用については春と秋の年2回、一般的な説明会、書類選考、集団面接、人事担当者による面接、役員面接に加え、お客さまによる面接を実施。何よりもお客さまの「この人と一緒に旅行をしたいか」という観点に基づいた選考を行っている。また、教育・研修においても採用後1年間、社内・外部講師による「社会人としてのレベルを上げる」研修や海外研修などを行った後、2年目は必ず添乗部門に配置。さらにその後、商品企画や月刊誌編集などの担当部門に配属された社員も、年数回は添乗業務を担当することで、常に“お客さまの目線”を忘れずに業務に当たっている。
 例えば商品企画部門に配属された社員であれば、こうした添乗業務を通して、「国内便の利用でタラップの乗降が必要となる」「立ち寄り先の観光施設、レストラン、ホテルの階段が急」「空港内で徒歩による長距離の移動が必要となる」などといったシニア向け旅行におけるマイナスポイントを実感し、それらの情報を旅行商品の企画に役立てている。
 また、よりきめ細かいサービスを提供するために、お客さまのさまざまな情報を管理・活用できるよう、現在、情報システムの入れ替え作業の途上にある。

お客さま一人ひとりに応じたきめ細かい対応を実践

 同社がターゲットとしているシニア層には、長い人生経験の中で独自の価値観を確立している人が多いことから、同社のツアー参加者にもさまざまな考え方の人が存在する。また、例えば「耳が遠い」など身体的な状況もさまざまであり、添乗員にはお客さま一人ひとりに応じたきめ細かい対応が求められる。さらに参加者の中には、シニア層特有の“わがまま”を言うお客さまも少なからず存在するが、同社では理不尽で団体行動を乱すような言動を除いては、できる限り、その“わがまま”を満たすように心掛けることで、満足度の向上を図っている。
 例えば、旅行中の集合時間に遅れがちなお客さまがいたとしても、「どのような理由で遅れたのかちゃんと聞いてほしい」「特に事情には触れないでほしい」など、お客さまによって多種多様なケースが存在し、添乗員にはこれらに的確に対応することが求められている。20代・30代の若年層を中心とする同社添乗員が、シニア層のこのようなニーズに応えるのは容易ではない。同社では外部講師によるコミュニケーション力向上のための研修などを随時実施することで、的確な対応の基本となる傾聴力の向上に努めており、その真摯な態度は、お客さまから「よく面倒を見てもらった」「また、この人と一緒に旅行がしたい」という声が数多く寄せられるという成果に結び付いている。
 ちなみに同社では、旅行参加者に、参加前の電話応対から旅行商品の企画内容、ホテル/レストランなどの旅行構成要素、添乗員の対応などのさまざまな項目についての5段階評価とコメントを求めるアンケートを実施している。この結果を見ると、添乗員について、「旅行中、連絡の不徹底などいくつかのミスがあった」というコメントがありながら、「誠意を持って対応してくれた」という部分が評価され、高い評価点を獲得するようなケースもある。また、孫と旅行しているような感覚で添乗員を“教育”するお客さまも少なくないようだ。

年間6,000人に上る旅行参加者の7割近くがリピーター

 同社では必ずしも“おもてなし”を前面に出しておらず、代表取締役社長の古川哲也氏も「当社の“おもてなし”が十分なレベルにあるとは考えていない」と語る。しかし、商品企画から電話応対、旅行説明会、添乗サービスなど、業務全般において一貫している「お客さま一人ひとりに合わせた“ゆとり”のある旅行を実現する」姿勢は、まさに“おもてなし”を体現するものと言える。
 既存顧客向けには海外情報、旅行情報などを掲載したA4版・150ページ以上に及ぶ月刊誌『スカイニュース』を毎号、約2万部配布しているが、年間6,000人の同社主催旅行参加者のうち、7割近くがリピート顧客。5回以上の利用者が最も多く、中には数十回、利用しているお客さまもいることからも、その“おもてなし”がお客さまに高く評価されていることがうかがえる。
 なお、今後については、これまでと同様に“量より質”を重視した事業展開を継続しつつ、これから確実に増加する“団塊の世代”のお客さまへの対応を強化するため、これまでニーズが少なかったことからあまり注力していなかったインターネット対応の強化なども図っていく方針であり、これらを通じてお客さま満足度の維持・向上を図っていきたい考えである。

1401C31

ニッコウトラベルが建造したセレナーデ号。天井から足元まである開閉可能な窓や、全室に浴槽を完備していることなどが特徴だ


月刊『アイ・エム・プレス』2014年1月号の記事