LINEの「友だち」が1,000万人を突破!公式Webサイトへ誘導し記録的なアクセス数を達成

KDDI(株)

「au」の携帯電話事業を展開するKDDI(株)は、LINEの公式アカウントを2012年9月に開設した。同社からのメッセージ配信などを希望する「友だち」は、1,000万人の大台を突破。公式Webサイトに誘導する施策では、記録的なアクセス数を達成するなど、大きな成果を上げつつある。

携帯キャリア3陣営がLINEでも熱いバトルを展開

 携帯電話の移動体通信事業と、インターネット・サービスなどの固定通信事業を、「au」のブランドで展開するKDDI(株)。フューチャーフォンからスマートフォンへのシフトが急速に進む携帯電話市場のシェア拡大に向けてソーシャルメディアを積極的に活用している。LINEの「au」公式アカウントは2012年9月に開設し、LINEのユーザー同士で連絡を取り合う「友だち」の機能などを活用してプロモーションを展開。「au」公式アカウントに「友だち」として登録するユーザーは、1,034万9,498人(2013年10月30日現在)に達している。
 企業などのプロモーションを目的とするLINE公式アカウントについては、アカウント別に「友だち」数のランキングが公表されているが、「au」は、トップの「ローソン」に次ぐ2位。公式アカウントを持つと、「友だち」を対象にプッシュ型のメッセージを送信できるが、KDDIでは、このメッセージにURLを交えて、公式Webサイトの特定のページにユーザーを誘導することにより、大量のアクセスを獲得することに成功している。
 国内の携帯電話市場では、同社とNTTドコモ(株)、ソフトバンクモバイル(株)のキャリア3陣営が熾烈な争いを展開。総務省が発表する2013年度第1四半期(6月末)のデータによると、携帯電話の国内契約数は約1億3,763万件。企業別シェアではNTTドコモが44.8%と首位を走るが、市場占有率は低下傾向にあり、KDDI(27.9%)、ソフトバンクモバイル(24.2%)がこれに迫っている。NTTドコモは、米Apple社のiPhoneの販売を9月に開始したことで契約者の流出に歯止めをかける構えだが、iPhoneの販売で先行するKDDIとソフトバンクモバイルが迎え撃つ構図となっている。
 3陣営の争いはスマートフォン・ユーザーに大きな影響力を持つLINEの世界でも繰り広げられている。「友だち」の登録ユーザー数を見ると、「ソフトバンク」は1,028万1,402人(公式アカウント別ランキング3位)で、7万人弱の差で「au」を追撃。「NTTドコモ」は432万6,344人(同28位)で、この両社に大きく水をあけられている。いずれも2013年10月30日現在の公表データだが、状況は日々刻々と変化している。

スタジオジブリの協力を得て「友だち」数を上積み

 同社がLINEの公式アカウントを2陣営に先駆けて開設し、活用してきた背景には、同社が2012年7月にLINEの運営会社であるNHN Japan(株)(現・LINE(株))との提携を発表して密接な関係を築いてきた経緯がある。これにより、例えばauのスマートフォン・ユーザーを対象とする、コンテンツが定額で使い放題の「auスマートパス」のサービス上では、「auスマートパス」会員専用のLINEアプリを提供。一般に無料提供されているLINEのアプリと基本的な機能は同じだが、オリジナルの「スタンプ」の提供など、独自の特典が付いている。
 公式アカウントの初期の運用フェーズでは、「auスマートパス」利用者をはじめとするauユーザーをターゲットに、特典の提供や情報提供を行い、順調に「友だち」数を拡大。そしてさらに次の運用フェーズとして、ターゲットをauユーザーだけに限定せず、広くLINE利用者向けにプロモーションを展開することによって、既存のauユーザーのリテンションと新規ユーザー獲得に向けたアクイジションという2つの効果を狙う戦略が打ち出された。これに伴い、2013年3月末から、公式アカウントの運用業務は、FacebookやTwitterの「au」公式アカウントを運用するコミュニケーション本部 宣伝部 WEBコミュニケーション室が受け持つことになった。
 こうした戦略への転換後に、他キャリア・ユーザーも含めた「友だち」の獲得に大きく寄与したのは、アニメーション企画制作の(株)スタジオジブリの協力で作成したオリジナル「スタンプ」の無料提供。「友だち」に登録すれば、ジブリ作品に登場する人気キャラクターの「トトロ」や「カオナシ」の「スタンプ」を取得できるようにすることで、新規登録を促す施策だった。意匠権の管理が厳格で、通常は二次利用が難しいジブリのキャラクターを、「ジブリの森」や「au lovesジブリ」などの(株)スタジオジブリと連携した各種キャンペーンの一環として使用したことには大きな話題性もあり、同年6月から8月にかけて期間限定で無料提供したところ、同社の想定を大きく上回る900万人を超える新規登録者を獲得。「友だち」数はこのスタンプ配布前の104万人から1,030万人に、一気に拡大した。

コメントを投稿するユーザーは10代を中心とする若年層

 登録ユーザー向けプロモーションの常道は、やはり継続的なコミュニケーションによる関係性の強化。同社では「プッシュ通知」と「ホーム」への情報掲載という2つの手法を用い、前者は2週間に1回のペースで、後者は週2~3回のペースで情報発信を行っている。
 「プッシュ通知」の受け取りはユーザー側が「ブロック」することができるが、これをいかに回避するかが、運用上のポイントのひとつとなる。同社では、ユーザーの興味や関心が高い情報を重点的に発信。例えば、ハワイ旅行や公演チケットが当たる懸賞の告知を配信するなどして、「友だち」でいることのメリットを感じてもらえるように腐心している。LINEの仕組み上、登録ユーザーの属性情報は得られないものの、同社は、登録の中心は10代から20代の若い層で、特に「ホーム」を訪れ、コメントを投稿するのは10代が多いと見ている。運用上のKPIは、あくまでもLINEのサービスを介して誘導する先のWebサイトのアクセス数。アクイジションやリテンションにつなげることが最終的な目的だが、例えば、新型iPhoneの販売予約ページに誘導したケースでも、大きな成果が得られたという。
 ソーシャルメディアにおける主な「au」公式アカウントの運用状況を見ると、Facebookは「友達」が約100万人、Twitterは「フォロワー」が約14万人。これに比べると、1,000万人台の登録ユーザーを抱えるLINEの存在感は際立って大きい。ただし、ソーシャルメディアの世界は変化が激しいだけに、LINEの活用もまだ手探りの状況だという。今後も引き続き、LINEのサービス特性を生かした公式アカウントの効果的な運用方法を模索していく方針だ。

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メッセージからWebサイトにリンクを張って、アクセスを促進。大きな効果を上げている

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大好評だったジブリのキャラクターのスタンプ配信時に、LINEの「友だち」に送ったメッセージ


月刊『アイ・エム・プレス』2013年12月号の記事