ユーザー参加型の楽曲制作キャンペーンにソーシャルメディアを有効活用

キリン(株)

キリン(株)では2012年、“健康”をキーワードとするプロジェクトの一環として「100万人でつくろう元気のうた」キャンペーンを展開。ユーザーから投稿された言葉、写真、動画を用いて楽曲・ミュージックビデオ制作を行うというユニークな内容で多くの参加者を集めた。

“健康”をキーワードとするプロジェクトでソーシャルメディアを活用したキャンペーンを展開

 “キリン”といえばビールをはじめとする酒類のブランドというイメージがあるが、キリンホールディングス(株)を中心とするキリングループでは、酒類以外にも飲料、食品、医薬品など幅広い商品分野を取り扱っている。その中で“健康”をキーワードとして「お客さまにいくつになってもおいしい食生活を楽しんでいただくために、キリングループの総力を結集したプロジェクト」が「キリンの健康プロジェクト“キリン プラス-アイ”」だ。
 毎日の“おいしい”に健康をプラスするこのプロジェクトは、2010年にスタートした。“回復系アミノ酸”として注目を集める“オルニチン”を配合した各種商品、食事の際に脂肪の吸収を抑える“難消化性デキストリン” を配合した特定保健用食品史上初のコーラ系飲料「キリン メッツ コーラ」、さらに最近では、脚光を浴びている“プラズマ乳酸菌”を配合したヨーグルト飲料などが主力商品となっている。
 このプロジェクトの認知・理解の促進を目的として2012年に展開されたキャンペーンが「100万人でつくろう元気のうた」である。このキャンペーンでは、専用Webサイトに加えて、FacebookやTwitter、YouTube、Ustreamといったソーシャルメディアが効果的に組み合わされ、その成功を支えた。

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キリン プラス-アイの主力商品群

ソーシャルメディアそれぞれの特性を生かしキャンペーンの成功を下支え

 キャンペーンを通じて“日本中に健康と元気を提供すること”をコンセプトに展開された「100万人でつくろう元気のうた」の基本的な内容は、「言葉、写真、動画など、日本中のみなさんの『元気』を集めて、ひとつの歌をつくる」というもの。言葉については、キャンペーンサイトで「元気をもらったひと言」を募集し、歌詞づくりの素材として採用。また、写真についてはキャンペーンサイトで「元気のポーズ」を、動画については同サイトで公開した“お手本動画”を参考に撮影した「元気のダンス」をYouTube経由でそれぞれ募集し、ミュージックビデオの素材として採用。これらを2012年12月発売の『YEAH! YEAH! YEAH! ~ 100万人でつくろう元気のうた~』のCD / DVDとして結実させた。
 この楽曲制作には、著名な音楽プロデューサーである武部聡志氏を中心に、プロのミュージシャンであるKAN、キマグレン、一青窈が参加。その制作過程をキャンペーンサイトやFacebookページを通じて随時公開することでユーザー一体型の展開が進められた。
 この中で大きな役割を果たしたのがさまざまなソーシャルメディアだ。
 そもそも“動画の投稿を受け付ける”ということ自体が、動画共有サービスとして定着しているYouTubeの活用なしには難しいことであった。また、Facebookページはキャンペーンやそのベースにある“キリン プラス-アイ”の取り組みを広く訴求し、ユーザーとの距離感を縮めるという役割を、Twitterはキャンペーンやトピックスをいち早くかつ幅広く発信するという役割をそれぞれ担い、キャンペーンの成功を下支えした。
 このキャンペーンは、「100万人でつくろう」というタイトルの通り、100万人の参加を示す「100万元気」の獲得を目指し、2012年春からスタートしたが、言葉、写真、動画などの投稿と、投稿に対する「元気をプラスボタン」(Facebook上の「いいね!」に相当)のクリックなどを加えた“元気”数は、キャンペーンのスタートから半年足らずの2012年9月には目標数の100万を突破。さらに100万元気突破を記念して「100万円相当の純金しじみプレゼントキャンペーン」を実施し、Twitterなどを通じて告知活動を継続した結果、キャンペーンへの参加者はさらに増加し、2012年末のキャンペーン終了時までには累計「180万元気」を集めるという成果を獲得した。
 なお、楽曲の完成を記念して2012年11月に東京・渋谷で開催した「“100万人でつくろう元気のうた”LIVE」は約800席のチケットが早々に完売となるほどの人気となり、その様子をリアルタイム中継したUstreamには、連携したTwitterを通じて多くのコメントが寄せられた。

継続して運用しているFacebookページでの情報発信のあり方が今後の課題に

 このキャンペーンでは、前述の通り、目標としていた「100万元気」を大きく上回る「180万元気」を獲得。また、「“100万人でつくろう元気のうた”LIVE」では、MCが「みんなで“元気のダンス”を踊りましょう」と呼び掛けると、会場を埋め尽くした約800人の観客が応じるなど、参加度合いは非常に高かったという。
 また、Facebookページなどに寄せられるコメントなどを見ても、キャンペーンやそのベースとなる“ キリン プラス-アイ”への共感を示す内容が多かったことから、同社ではこのキャンペーンが“キリン プラス-アイ”への認知・理解の向上という目的をある程度果たせたものと認識している。
 さらにこのキャンペーンは、米国ダイレクトマーケティング協会(DMA)が主催し、国際的にも権威が認められているダイレクトマーケティングのアワード「国際エコー賞」で「BRONZE賞」を受賞(広告主:キリン(株)/広告会社:(株)大広)するなど、対外的にも高い評価を獲得している。
 ただし、このキャンペーンを担当した同社CSV本部ブランド戦略部プラス-アイ推進室では、成功裏の中にもいくつかの反省点を見出している。
 例えば、キャンペーンの告知については、マスメディアに頼らず、インターネット上を中心に展開したところ、キャンペーン認知者の絶対数が期待したほどには伸びなかった。この点について同社では、インターネット上で情報を拡散するために必要な“驚き”や“面白さ”などのあるコンテンツの発信が不足していたのではないかと認識しており、今後、類似の展開を行う際の参考にしていく意向だ。
 なお、「100万人でつくろう元気のうた」キャンペーンは2012年で完結・終了したが、そのスタートとほぼ同時に開設された“キリン プラス-アイ”のFacebookページは現在も継続して運用されている。このページは「100万人でつくろう元気のうた」キャンペーンなどを通じて3万8,000人を超えるファン(「いいね!」)を獲得しており、これらの層に向けて、いかに“キリンプラス-アイ”の健康素材や商品に関連する情報を発信していくかが、今後の課題となっている。

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キリン プラス-アイのFacebookページでは、今後も健康に関する情報提供を行ってファンとのエンゲージメントを強化していく意向である


月刊『アイ・エム・プレス』2013年12月号の記事