EC サイトのリニューアル奏功 店舗顧客の利用が好調 今後はデータ分析にも注力

(株)ビームス

セレクトショップ大手の(株)ビームスは、2012年9月以降、ECサイトのリニューアルをはじめ、リアル店舗とECサイトのポイント共通化など、店舗とECの双方を顧客がシームレスに利用できる環境を整備してきた。一方で、顧客・購買データの活用に向けた体制の強化も進め、分析システム導入やデータ分析の専門部隊も新設している。

サービス向上とデータ活用の両面を考慮

 セレクトショップ大手の(株)ビームスは、2013年7月現在、国内外に計137の直営店を展開(国内125店、国外12店)。セレクトショップならではの多彩で豊富な品ぞろえに加え、ファッションを通じて新しいライフスタイルを提案することで、魅力ある店づくりを進め、性別を問わず、幅広い年代から支持されている。
 また、アパレル業界では比較的早い時期の2003年に独自のポイントプログラム「ビームスクラブ」をスタート。買い上げ金額100円に付き3ポイントを付与し、1ポイントに付き1円相当を還元。当初は3,000ポイントごとに店舗などで使える商品券を送付する仕組みだったが、近年はPOSレジと連携したシステムの導入で会計時に任意のポイント数の利用を可能としている。また店頭での会員認証も、従来のプラスチック製の専用ハウスカードに加え、スマートフォンやフィーチャーフォンなどモバイル対応を進め、会員IDを画面にバーコード表示させる方式を採用。顧客の立場から利便性の向上を図っている。
 こうしたポイント・プログラムを提供している背景には、優良顧客に対する販売促進という意味合いと同時に、顧客データと購買データのひも付けを可能とし、データ分析に基づく“One to One”のきめ細かな顧客対応を実現するという大きな狙いがあった。同社は都市部を中心に高級スーツなどを扱うラグジュアリー路線の店舗も展開しており、こうした店舗では特に、購買履歴データに基づくサービスの提供が顧客満足の獲得や顧客優良化につながる重要な差別化要因となっている。
 そしてオムニチャネルへの取り組みにおいても、サービス向上とデータ活用の両面を考慮。リアル店舗とECサイトの連携を活発化させることでサービスの向上を図ると同時に、ここで得られたデータを積極活用する方針。2012年9月以降の主な取り組みだけでも、①ECサイトのリニューアル、②ECサイト利用促進の店頭キャンペーン、③リアル店舗とECサイトのポイント共通化、④CRM推進部の立ち上げ、⑤購買履歴データの分析システムの導入を行い、ハードとソフトの両面の整備にとどまらず、組織体制の強化など広範にわたる対応を積極的に推進してきた。

スタッフお薦めのコーディネートを各自の写真入りで紹介

 サービス向上に大きく寄与したのは、①のECサイト「BEAMS Online Shop」のリニューアル。前日末の店頭在庫を店舗ごと、商品ごとに閲覧できるようにしたほか、スマートフォンからの利用などを想定したマルチデバイス対応など基本的な機能を拡充する一方で、工夫を凝らしたコンテンツを投入。特に、店舗スタッフが写真とコメントで商品を薦めるコンテンツ「BEAMS Styles(ビームス・スタイルズ)」が好評だ。
 BEAMS Stylesは、店舗スタッフが商品をコーディネートして自ら試着し、その姿をデジカメで撮影、店舗側からCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を使って“投稿”をアップする趣向。一般のカタログなどとは違い、プロのモデルではなく、身近な存在である店舗のスタッフがモデルを務めることで、リアリティやライブ感を演出している。気に入った商品は、ECサイトから購入できるほか、実際に試着して品定めしたいという顧客ニーズに対応するため、在庫のある店舗を一覧できるようにしている。最寄りの店舗に在庫がない場合は、店舗に依頼して取り寄せてもらうこともできる。
 セレクトショップとしての同社の大きな特徴は、各店舗の立地条件や顧客の購買傾向などを踏まえ、店舗ごとに特色ある品ぞろえを行っていることで、特定の商品をすべての店舗で販売するといったケースはむしろまれ。こうした商品を店舗スタッフがコーディネートして顧客に提案する接客スタイルこそが、同社の得意とするところであり、店舗スタッフのセンスと創意を尊重するのが、同社の良き伝統。BEAMS Stylesは、こうした強みを最大限に生かしたコンテンツと言える。いつも多くのユーザーの注目を集め、コーディネートした商品が人気になる“カリスマスタッフ”も出現。店頭ではスタッフ同士が写真を撮影し合う光景が日常的に見受けられ、店舗スタッフのモチベーション向上にもつながっている。
 一方で、同社店舗には、多様な商品を取り扱っているだけに、すべての商品の良さを伝え切れないという悩みもあったが、ECサイトの豊富なコンテンツを通じ、店頭では埋もれてしまいがちな商品も詳しく紹介できるようになるなど、ECサイトは店舗の役割を補完する重要な存在となっている。ちなみにECサイト経由の売り上げは現在、全体の10%超に達している。
 またECサイトのリニューアル直後には、リアル店舗の顧客を対象に②の店頭キャンペーンを実施した。店頭で商品を購入したお客さまにECサイトで使える2,000円相当のクーポン券を配布。さらに、2013年3月には、③のポイント共通化に踏み切り、いずれのチャネルで買い物をしても、同様にポイントを獲得し、利用できる環境を整備。2013年6月現在、ビームスクラブの会員数は258万人に達しており、店舗とECサイトの両方を利用している会員の割合は非公開であるが、期待通り、相当数に上っているという。

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店舗のスタッフが自らモデルとなり、商品のコーディネートを提案する「BEAMS Styles」

リアル店舗とEC サイトのトータルな売上拡大を目指す

 このようなオムニチャネル展開によって得られる顧客・購買データの分析や活用の体制強化を狙ったのが、④⑤である。同社では従来、店舗で得られたデータを中心に分析を行ってきた経緯があるが、今後は店舗とECサイトのデータの統合・分析に軸足を移していく考えだ。2013年4月の組織改編で新設されたCRM推進部が、店舗ごとの顧客の購買動向などを月次レポートとしてまとめるほか、新たな施策の投入に向けた分析も活発化させていく方針。また2013年6月には、新たにビームスクラブ会員データと商品別売上データをひも付けた分析を行うためのシステムを導入。全国の店舗から集まる膨大なデータ分析が容易になったほか、それぞれの店舗スタッフが個別に接客したお客さまの購買履歴の参照も可能になった。例えば、従来は店舗スタッフの判断に委ねられていた買い上げのあった顧客を対象とするサンキューレターの送付などのアフターフォローを、データに基づきシステマティックに実施できるようになる日も近い。
 同社には、前述したように、ラグジュアリー路線の店舗がある一方で、Tシャツに代表されるようなカジュアルな商品中心の店舗もある。店舗ごとに客単価も違い、性別や年代など顧客のボリュームゾーンや商品カテゴリーごとの売上構成比も大きく異なる。それゆえ、今後のオムニチャネル展開においては、蓄積されたデータの詳細な分析を通じて、顧客セグメントに応じたきめ細かい、多様な施策を投入していく考え。お客さまの要望に応え、顧客満足の向上につなげていくことを基本に、店舗とECサイトのトータルな売上拡大を図っていく方針である。


月刊『アイ・エム・プレス』2013年9月号の記事