「カーネル・サンダース」を武器にLINE上で490万人以上の「友だち」を獲得

日本ケンタッキー・フライド・チキン(株)

日本を代表するファストフード・チェーンの1社である日本ケンタッキー・フライド・チキン(株)では、2012年10月30日から「LINE公式アカウント」の運用を開始。490万人以上の「友だち」を対象にクーポンを配信することにより、店舗への集客を図っている。

新たなクーポン配布チャネルとしてLINEの利用をスタート

 1970年7月、三菱商事(株)と米国KFCコーポレーションとの折半出資により設立。同年11月に「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」第1号店を開店して以来、日本各地において直営・フランチャイズの両形態で続々とKFC店舗をオープンしてきた日本ケンタッキー・フライド・チキン(株)。全国47都道府県で展開する店舗数は、2013年2月末現在1,180店舗(直営330店舗、フランチャイズ850店舗)に及んでおり、日本を代表するファストフード・チェーンの1社となっている。
 同社の店舗への集客戦略においては、従来から割引オファーを提示するクーポンが重要な位置付けを占めてきた。近年では伝統的な新聞折込チラシやポスティングに加えて、ケータイサイトやケータイ向けのメールマガジン「カーネル通信」、さらにはTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアなどが、クーポンを配布するための重要なチャネルとして機能している。その中で同社が新たなクーポン配布チャネルとして、2012年10月から利用を開始したのがLINEである。
 2013年4月1日に旧NHN Japan(株)から商号変更したLINE(株)が運営するLINEは、違うキャリア同士でも無料で音声通話やメッセージのやり取りができることを特徴とするグループ・コミュニケーション・アプリだ。PCや従来型の携帯電話からも使用できるが、基本的にはスマートフォン(以下、スマホ)向けのアプリであり、2013年1月18日に世界レベルでの登録ユーザー数が1億人を突破。日本国内だけでも4,000万人以上の登録ユーザーを有し、特に10代~ 20代の若年層では友人・知人とのコミュニケーションにおいて欠かせない人気アプリとしての地位を確立している。
 このLINEを企業のマーケティングに活用する仕組みとして2012年6月から提供されているのが「LINE公式アカウント」であり、同社は2012年10月30日にアカウントを開設し、その運用をスタートしたのだ。

運用開始から半年足らずでさまざまな知見を獲得

 同社がLINE公式アカウントの利用を検討し始めたのは、その提供開始から間もない2012年夏ごろ。ニュースなどを通じてLINEのユーザー数の急拡大が話題となり、提供開始時からのクライアント企業である(株)ローソンや日本コカ・コーラ(株)、牛丼店チェーン「すき家」を運営する(株)ゼンショーをはじめとする多くのB to C分野の大企業がLINE公式アカウントの運用を開始したこと、さらには同社が2012年4月から提供を開始したスマホ向けアプリが多くのユーザーを獲得し、人気を集めていたことなどからチャレンジの価値は十分にあると判断。同社の最大の繁忙期であるクリスマス・シーズンに先立ち、2012年10月30日から利用を開始することを決定した。
 同社におけるLINE利用の基本的なスタイルは、同社を「友だち」登録したユーザーに直接メッセージを送信できるというLINEの機能を活用して、各種クーポンによる訴求を行うというもの。同社の「友だち」数は、2013年3月現在で490万人以上という国内でも有数の規模となっており、すでに重要なクーポン配布チャネルのひとつとして機能している。
 同社のLINE公式アカウントの運用期間は、ようやく半年に達するかという段階であるが、すでにいくつかの知見が得られている。
 例えば、KFCのメイン顧客はファミリー層であり、商品としては単価1,000円前後のパック商品が主力となっている。しかし、若年層がコアなユーザーとなっているLINEでは、このような主力商品のクーポンを配信しても反応は振るわず、むしろ“ 個食”系商品やデザートなど、10 ~ 20代女性に受けが良い商品のクーポンの人気が高い。中でも特に通常200円のポテトを10円で提供した「10円ポテト」や、新商品である「ケンタッキーチキンライス」のクーポンなど、“驚き”を伴うクーポンの利用率が高い傾向にあることがわかっている。
 なお、同社ではこれまで月4回のペースでLINEを通じたクーポンの配信を行ってきたが、2013年4月からこの配信ペースの見直しを行う。「友だち」数の推移などを見ながら、費用対効果の高い利用形態を模索していきたいという。

「友だち」獲得に大きく貢献したカーネル・サンダースのキャラクター

 そのほか、利用デバイスとしてスマホが主流となりつつあるのに伴い、LINEとTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアとの相性が良いことが明らかになりつつある。
 例えば、2012年11月から12月にかけてFacebook上で実施した“『KFC』×『Suzy’s Zoo』「いいね!」でプレゼントキャンペーン”で、告知メディアのひとつとしてLINE公式アカウントを活用したところ、応募の9割強がLINEを経由したものとなり、キャンペーンの活性化に大きく貢献する結果となった。
 ただし同社では、公式アカウントの運用に料金がかかるものの、その規模や即効性の面からいわば“スマホ上のマスメディア”としての地位を確立しつつあるLINEと、運用コストは抑えられるものの、緩やかなコミュニケーションの充実は図れても即効性を期待することが難しいソーシャルメディアとでは、基本的に性格が異なると考えており、今後も双方の特性を意識しながら、連携を図っていきたい考えである。
 なお、同社では、LINE公式アカウントが急速に「友だち」数を増やすことができた背景として、「カーネル・サンダース」という極めて知名度と人気の高いキャラクターを有していることが大きかったと分析している。例えば、2012年11月から12月にかけて、期間限定で「友だち」を対象に無料で配信した8種類の「カーネル・サンダース」スタンプ(テキストメッセージに挿入できるイラスト)は非常に高い人気を博し、これを目当てとする「友だち」登録につながったとのこと。今後もさまざまなかたちで「カーネル・サンダース」を有効活用することで、LINE活用の効果拡大を図っていく意向である。
 さらに今後の課題としては、LINE上で獲得した「友だち」をいかに来店させて、実購買、ひいては収益の向上につなげていくかという点が挙げられている。
 例えば、前述の「10円ポテト」クーポンなどは、若年層のユーザーを店舗に送客するという意味では、絶大な効果を発揮したが、特に可処分所得の少ない学生層などでは「10円ポテト」のみを注文するケースも少なくなかった。
 これについては、従来からのメイン顧客層であるファミリー層とは異なるLINEユーザーをターゲットとしたことで、その行動パターンが読めなかったことも一因となっていると認識している。今後は別途活用している汎用型会員プログラム「Ponta」と連携することなどで、LINE経由のクーポン使用ユーザーの行動パターンの把握に努め、より効果的な配信につなげていく意向である。

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LINEで、490万人以上の「友だち」にクーポンを配信。「10円ポテト」は特に大きな反響を呼んだ獲得

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O2O施策には、TwitterやFacebook、メールマガジンなども活用されている


月刊『アイ・エム・プレス』2013年5月号の記事