フィギュア商品化のためのインターネット人気投票で予想を大幅に上回る得票を獲得

(株)メガハウス

(株)バンダイのグループ会社でフィギュアの企画・開発・製造などを手掛ける(株)メガハウスでは、インターネット上で、ユーザーからの投票で上位になったキャラクターを商品化する「G.E.M. 銀魂商品化総選挙」を実施。予想を大幅に上回る得票を獲得し、多くの新たな知見を獲得した。

ユーザーからの投票により人気アニメのフィギュア商品化キャラクターを決定

 玩具メーカー大手の(株)バンダイのグループ会社としてトイ、玩具菓子、フィギュア、一般ゲームなどの企画・開発および製造・販売を手掛ける(株)メガハウス。同社では2012年2~4月、バンダイの公式オンラインショッピングサイト「プレミアムバンダイ」を舞台に、「G.E.M.銀魂(ぎんたま)商品化総選挙」を実施した。
 「G.E.M.」は同社が手掛けるハイクオリティ・フィギュアシリーズ。多くのフィギュアが男性をメインターゲットとしている中、20~30代の女性をメインターゲットとしている点が大きな特徴であり、これまでにいずれも人気アニメ・コミック作品である「HUNTER×HUNTER」「るろうに剣心」「コードギアス反逆のルルーシュ R2」「BLEACH」「鋼の錬金術師」などのキャラクターを商品化し、その精巧さなどから高い人気を博してきた。メーカー希望小売価格は7,000円台が中心で、ホビー店、キャラクター・ショップのほか、ホビー系の通販サイトを主な販路としている。
 一方、「銀魂」は『週刊少年ジャンプ』に連載されているコミックを原作にテレビ東京系列で放映された人気アニメ作品で、これまでにもいくつかのキャラクターが「G.E.M.」シリーズで商品化されている。
 今回の「G.E.M.銀魂商品化総選挙」は、「あなたの1票が商品化を決める」というキャッチフレーズの下、「銀魂」に登場する56名のキャラクターを候補に挙げ、ユーザーからの投票によって、上位にランクされたキャラクターを商品化するというものである。
 同社がフィギュアの商品化過程において、ユーザーからの投票を受け付けたのは今回が初めてではない。2011年夏に、やはり「銀魂」のキャラクターである「エリザベス」について、「プレミアムバンダイ」上で商品化リクエストを受け付け、リクエストが3,000件を超えた時点で商品化を決定するという企画を実施した。その際、Twitterによる情報発信を行ったところ、当該キャラクターのファンから投票を呼び掛けるツイートが数多く自然発生するなどして、多くの波及効果が確認されたことから、その拡大版として実施することとなったのが、今回の「G.E.M.銀魂商品化総選挙」である。

事前の予想を大幅に上回る投票を獲得

 「G.E.M.銀魂商品化総選挙」では、できるだけ多くのキャラクターを候補にしたいという考えから、登場場面が少ないマニアックなもの含めて56名のキャラクターを抽出。それを14名ずつ4つの「選挙区」に分けて予選ラウンドを実施し、各選挙区の上位2名を対象に決勝ラウンドを実施した。2段階というかたちを採ったのは、2回の投票を行うことで選挙に参加するユーザーの関与度を高めるとともに、票が分散し過ぎることを避けるという狙いがあった。予選ラウンドは特に条件を付けずに誰でも投票できるかたちとしたが、決勝ラウンドについては、より真剣に投票してほしいという意図から、「プレミアムバンダイ」への会員登録を投票権獲得の条件とした。なお選挙期間は、予選ラウンドを2012年2月6日から3月6日、決勝ラウンドを同3月19日から4月20日の、それぞれ約1カ月間とした。
 告知については、「プレミアムバンダイ」や同社の通販サイト「メガトレショップ」で行ったほか、「銀魂」が連載されている『週刊少年ジャンプ』誌上や、「銀魂」のTVアニメを制作する(株)サンライズが運営する「銀魂」の公式Twitterアカウント「GINTAMA_PR(銀魂ぴーあーる)」などを舞台に、積極的な露出を実施した。また、「プレミアムバンダイ」内の「G.E.M.銀魂商品化総選挙」サイトでは、「♯gem_gintama」を使って総選挙についてのツイートを行うことを推奨。ユーザーのツイートによる波及効果が発揮されることを目指した。
 その結果、選挙期間の序盤からTwitter上で自分が応援するキャラクターへの投票を呼び掛けるユーザーのツイートなどが盛り上がり、予選ラウンドの総投票数は同社の事前の予想である1万~2万票程度を大幅に上回って24万件超にも及ぶという結果となり、「プレミアムバンダイ」への会員登録を条件とした決勝ラウンドでも期待を上回る投票を獲得することができた。
 なお、企画開始時点では「得票数上位のキャラクターを商品化する」とだけ告知し、何位までのキャラクターを商品化するかは発表していなかったが、投票数が予想を大幅に上回ったことから、すでに得票数1~3位のキャラクターの商品化を決定。さらに4位以降のキャラクターについても商品化を検討しているという。各キャラクターの得票数については公表していないが、フィギュアでは一般的に販売数が5,000体を超えればヒット商品と言われている中で、上位のキャラクターは十分にヒットを期待できる票数を獲得した模様だ。

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告知とクチコミの拡散に威力を発揮した「銀魂」の公式Twitterアカウント「GINTAMA_PR」(上)/1~3位の商品化決定を発表する「メガトレショップ」の画面(右)

総選挙におけるユーザーの行動から新たな発見も

 今回の企画で総投票数が予想を大幅に上回った理由として、同社では、「銀魂」の公式Twitterアカウント「GINTAMA_PR」での告知の影響力が大きかったと分析しており、フィギュアという趣味性の高い商品とTwitterの親和性の高さが立証された結果となった。また、女性ユーザーの多い「G.E.M.」シリーズの特性から男性キャラクターに人気が集まるのではないかと予想していたところ、女性キャラクターにも相当数の投票があり、実際に得票数で1位になったのは同作品のヒロインである「神楽」であったことから、「女性ユーザーだから男性キャラクターだけが好き」という固定概念が必ずしも当てはまらないことがわかるなど、新たな発見もあった。さらに「銀魂」のファンでありながら、フィギュア「G.E.M.」シリーズの存在をあまり意識していなかった層にも、この企画によってその存在を強く意識させ、投票という積極的な関与につながったことから、マーケット拡大の可能性も見出すことができた。
 一方で、企画が序盤から予想以上の盛り上がりを見せ、若干尻すぼみの雰囲気になったことから、得票数の見極めとそれに基づいた適当な実施期間の設定が必要であるという反省点も得られた。
 なお、フィギュアの商品化においては、商品化決定から実際の発売までに数カ月から1年という期間が必要であることから、総選挙により盛り上がった雰囲気を冷まさないことを狙い、「プレミアムバンダイ」内の「G.E.M.銀魂商品化総選挙」サイトについては継続的に運営することを決定。製作過程を公開するなど、定期的な情報発信を行っていく方針である。
 また、今回の企画が同社の当初の思惑を超え、単なるアンケート的なものに終わらず、多くのユーザーの購買意欲の喚起を期待できるものとなったことから、後続企画もスタート。すでに対戦型ゲームブックのキャラクターをフィギュア化した「クイーンズブレード」シリーズで、過去に発売したフィギュアの中から再販する商品を選ぶ総選挙を実施するなど、今後もさまざまな機会でインターネットを活用したユーザー参加型の企画を実施していく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』2012年6月号の記事