「接客ロールプレイングコンテスト」でスタッフの販売力を底上げ

(株)インターメスティック

「ゾフ」ブランドを展開する(株)インターメスティックは、眼鏡の小売業界にSPA方式で切り込み、低価格でファッショナブルな眼鏡で若い世代に支持されている。人の介在が不可欠な商品だけに、付加価値や優位性につながる接客力を何よりも重視。昨年スタートした「接客ロールプレイングコンテスト」を今年はさらに強化する。

“半医半商”の商品特性から技術・接客の両面で教育

 (株)インターメスティックが運営するブランド「ゾフ」は、眼鏡業界にファストファッションの風を取り入れようと、SPA(製造小売業)方式を導入し、2001年からおしゃれなオリジナルブランド眼鏡をレンズ付きで販売。5,250円・7,350円・9,450円という手軽な価格やファッショナブルなデザインなどが若者に受け、2012年3月末時点で店舗数は121店(国内113店・海外8店)に広がった。店舗では常時300型・4色と1,200アイテムを品揃えし、複数の眼鏡を使い分けるライフスタイルを提案している。路面店やビルの上層階が多い従来型の眼鏡店とは異なり、若年層が好む感度が高いショッピングセンターのアパレルや雑貨フロアを中心に出店。眼鏡をファッションの一部ととらえ、戦略を展開する。上場5社などが多店舗展開を推進する眼鏡業界において、同社は現在、10位程度の位置付け。業績はこの10年右肩上がりを維持し、2011年12月期の売上高はグループ連結で105億円となった。2018年度には500億円を目指す。
 最近は40~60代のお客さまも増えてきたが、中心は20~30代で55%を占める。昨年からはTwitterやFacebookでの販促・告知も開始しており、中でも人気漫画やゲームとのコラボレーション展開が注目を集め、多くの新規顧客開拓につながった。自社のWebサイトではネット通販をはじめWebカメラを使って商品を試せるサービス「ゾフ・ミラー」なども展開しているが、やはり店舗に足を運んでもらうことが最終目的となる。そこから先は“人”が介在する接客術が勝負。視力測定や加工、フィッティングといった眼鏡の販売に不可欠な独特の技術系知識も含め、販売スタッフの力量が頼りだ。さらにファッション性も重視していることから、お客さまの服や身に付けている小物などにマッチする商品を提案するセンスも求められる。眼鏡はその商品特性から半分が視力矯正という医療的側面、半分が商いである「半医半商」の業種と言われており、販売スタッフにはどちらのスキルも欠かせない。

「接客ロールプレイングコンテスト」の内容をより拡大・改善して開催

 「販売スタッフが主役」(上野剛史社長)という同社が昨年開始したのが、「接客ロールプレイングコンテスト」だ。全店から参加者を募り、予選会を経た上で決勝大会を開き、優秀な接客スキルを持つ販売スタッフを表彰するというもの。「接客力の強化」をテーマに、全店の接客力を底上げすることを目的に企画された。まずは全国を7ブロックに分け、各店1名、合計102名の参加者がブロック予選に挑戦。予選を勝ち上がった30名が昨年11月に東京で開催された決勝大会に進んだ。参加者の選出方法は店舗の自由裁量とし、店内でロールプレイング大会を開いて代表者を選んだり、投票で決めたり、立候補者を募ったりとさまざまだった。予選通過者については、本社の教育グループがロールプレイングの勉強会を実施。教育担当者が参加者ごとの課題をその場で洗い出してアドバイスし、決勝大会に向けてスキルのブラッシュアップを図った。
 決勝大会は審査委員長の上野社長に教育担当役員など2名を加えた3名の社内審査員と、教育系の専門コンサルタントの社外審査員2名が審査。参加者1名が6分間の持ち時間の中で、お客さま役に対し、いかに的確に商品を提案し、クロージングまでつなげられるかというロールプレイを競い合った。女優経験もあるモデル2名がお客さま役を務め、服や小物を何回かチェンジし、参加者の臨機応変な対応を試した。審査員は「待機・接客・会計・商品お渡し・お見送り」の流れに基づき、「お客さまのニーズや悩み、不安、疑問を把握しているか」「お客さまのライフスタイルをもとに提案ができているか」などをチェック。いかにお客さまの心をとらえてニーズを聞き出し、その人に合った提案ができるかという視点に立って審査し、優勝・準優勝各1名、3位2名、審査員特別賞2名、優秀賞5名を選出した。現在、上位4名はゴールドバッジ、他7名はシルバーバッジを付けて店頭に立っている。将来的には、全店に1名はバッジ保有者を配置したい考えだ。
 2回目の「接客ロールプレイングコンテスト」もすでに2月から募集を開始した。1回目のコンテストをさまざまな角度から検証して反省点を挙げ、改善に向けた見直しを図っている。まずは店舗が多いにもかかわらず前回は1ブロックとしていた東京を今回は東・西の2ブロックとし、全国を8ブロックに分割。前回は各店1名だった参加者枠を最大3名まで広げ、決勝大会には10名増の40名が出場することになった。少数精鋭を選ぶのではなく、全社における接客力の底上げを目的としていることから、可能な限り多くの販売スタッフにかかわってもらいたいとの思いがその背景にある。決勝大会の会場も前回は立ち見が出るほど活況だったため、今年はより多くのスタッフが見られるように2倍の広さの会場を確保した。
 前回と比べて最も大きく変わったのは、各店や販売スタッフをいかに同じベクトルに向かわせながらコンテストに巻き込んでいくかについての仕掛けづくり。これまでは会社主導で毎月、各店に「どのような取り組みをしたか」についてのレポート提出を義務付けていた。今年からはこれを見直し、各店が自由に書き込み・閲覧できるWeb上の専用フォルダを設置。あえてフォーマットも定めず、自主的に自店の取り組みや事例をアップできるようにした。ある店舗が紹介したシートを見たほかの店舗がそれを独自にカスタマイズして使ったり、教育グループが活用して横展開するなど、店舗や販売スタッフが自ら発信していくかたちにシフトさせたのだ。

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2011年に行われた「第1回ロールプレイングコンテスト」の模様

今後の課題は受賞者の接客力を生かす仕組みづくり

 「接客ロールプレイングコンテスト」は終了後4カ月しか経過していないため、その効果はまだ目には見えてこない。ただ、最近は、本社や各店宛てに届くお客さまからの感謝のレターが増えてきたという感触をつかんでいる。こういったレターは全社で共有し、スタッフのモチベーション・アップとともに、さらなるCS向上につなげることを目指している。
 より拡充が図られた「接客ロールプレイングコンテスト」だが、今後の課題は、受賞者の接客力を最大限に生かせる環境を整備すること。受賞者の接客力がほかのスタッフに伝播していくような仕組みを確立させたいとしている。
 また同社では、スタッフのモチベーション・アップを図るためのもうひとつの取り組みとして、毎月、販売実績や優れた提案提出などでスタッフを評価する「ゾフパフォーマンスアワード」を実施している。こちらもまだ4年目とあって、完成されているとは言い切れず試行錯誤が続けられているが、「ゾフ接客ロールプレイングコンテスト」とともにうまく活用し、さらなる接客力の向上につなげていきたい考えだ。
 接客力と同時に、専門的な技術力の底上げを図っていくことも必要不可欠である。これに関しては入社後、勤続年数に応じて技術研修を定期的に実施し、技術力の向上に努めているが、今後、技術水準をさらに高めていく意向で、すでに教育制度の見直しに着手している。
 今後も販売スタッフの接客力をフックに、同社ならではの優位性を生み出し、競合他社との差別化を図っていく意向だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2012年5月号の記事