情報提供とコミュニケーションでファン化を推進

タワーレコード(株)

ミュージックフリークに絶大なる支持を得ているタワーレコード(株)。同社では、店頭および総合音楽ポータルサイト「TOWER RECORDS ONLINE」への集客、さらには売上増を目的に、ソーシャルメディアの活用をスタート。ジャンル別にソーシャルメディアを選択し、アカウントを開設することで、ファンにダイレクトに情報を提供する戦略が功を奏し、集客数を伸ばしている。

K-POPを中心にソーシャルメディアのマーケティング活用をスタート

 「The Best Place to Find Music =音楽と出会う最良の場所」をすべてのお客さまに提供するというミッションのもと、音楽、映像ソフトの販売をはじめ、レーベル事業まで手掛けるタワーレコード(株)。コーポレート・ボイスに「NO MUSIC, NO LIFE.」を掲げ、さまざまなお客さまに、さまざまなチャネルで、最新の音楽と音楽情報を提供することによって、音楽シーンのさらなる活性化と、音楽でお客さまの生活を豊かにすることを目指している。
 販売チャネルは、店舗およびインターネット、モバイルサイト。「タワーレコード」を83店舗、駅ナカ駅チカ小型店の「TOWERmini」を4店舗、計87店舗を展開しているほか、総合音楽ポータルサイト「TOWER RECORDS ONLINE」を運営している。近年は、ソーシャルメディアの普及の波に乗り、Twitter、Facebookなどを積極的に取り入れてきた。ソーシャルメディアを通じてアーティストや商品に関する情報を提供するとともに、顧客とのコミュニケーションを推進することでタワーレコードのファンを増やし、店頭および「TOWER RECORDS ONLINE」への集客を促進。最終的には売り上げに貢献することが目的だ。
 ソーシャルメディアのマーケティング活用に当たっては、社員3名によるソーシャルマーケティング推進プロジェクトを発足。企業としてソーシャルメディアを利用するのであれば、売り上げにつなげなければいけないという考えのもと、取り組みを開始した。同社はJ-POPから落語まで、さまざまなジャンルのコンテンツを扱っているが、まずは今、市場が拡大傾向にあり、一番ビビッドな反応が期待できるK-POPに的を絞り、ソーシャルメディアのマーケティング活用に着手した。

ソーシャルメディアの特性に合わせた情報を発信

 現在、利用しているソーシャルメディアは、Twitter、Facebook、mixi、Google+、YouTube、Ustream、ブログなど。ソーシャルメディアごとの特性や利用者の属性に合わせた情報発信を行っている。
 Twitterは、店舗ごと、ジャンルごとにアカウントを開設しており、その数は50以上に及ぶ。運用ルールは共有しているが、発信する情報の内容やタイミングはそれぞれの担当者に任せている。主な発信内容は、商品やアーティスト、イベントの情報など。アクティブサポートは行っていないが、直接寄せられた質問には個別に対応している。
 Facebookは、タワーレコード(株)の企業ページをはじめ、K-POPなど3つのジャンル別ページと新宿店など4つの店舗別ページ等を用意。企業ページでは主にプレスリリースに基づいた情報など、ジャンル別ページではジャンルに特化した情報、店舗別ページではインストアイベントのレポートや店頭情報を発信している。例えばジャンル別ページで商品の「詳細を見る」ボタンを押すと、「TOWER RECORDS ONLINE」のページが開く仕組みで、集客と購買促進が図られている。
 Facebookページでは各種キャンペーンも展開している。昨年5月には、企業ページ内に「タワーレコード夏フェス応援グッズ」のページを設けて商品を紹介。商品説明の下にある「購入する」ボタンをクリックすると「TOWER RECORDS ONLINE」上の商品ページにジャンプするという方法で販売促進を図った。またK-POPのページでは、今年2月、Facebookユーザー限定で対象商品の最大30%オフと送料無料を特典とした「K-POP BIG OFF!キャンペーン」を展開。こちらも「夏フェス応援グッズ」と同様に「TOWER RECORDS ONLINE」とリンクして、同サイトで注文を完結する仕組み。
 Google+については、情報発信と検索効果を期待して活用をスタート。同社が制作しているフリーマガジンの編集部が作ったオリジナルコンテンツを発信している。
 mixiは、K-POPにジャンルを限定して活用。ジャンルを限定した理由は、K-POPファンにはmixiのコミュニティやファンサイトを通じて情報を収集している女性が多いと推察したためだという。
 Ustreamは、インストアイベントのライブ配信のほか、同社が制作するK-POP番組の配信、YouTubeでは、アーティストのメッセージ動画や、自社レーベルのアーティストのミュージックビデオなどを公開している。
 ブログは、渋谷店とK-POPで用意。K-POPのブログでは、店頭、アーティスト、商品の情報をはじめ、Ustream番組のレポートなどを発信している。

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割引キャンペーンなどを告知して購買活性化を図っているK-POPのFacebookページ

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Twitterのアカウント数は店舗ごと、ジャンルごとに50以上ある

1年でECサイトへの送客数が3倍に

 いずれのソーシャルメディアも店頭および「TOWER RECORDS ONLINE」への集客と売り上げへの貢献を目的としているものの、同社では性急に販売につなげることは難しいと見ており、まずは集客に注力しているのが実際のところ。ただし、ソーシャルメディアごとの特性を生かした情報発信が功を奏し、キャンペーンや商品に対する認知が高まった結果、ソーシャルメディアから「TOWER RECORDS ONLINE」への送客数はこの1年で3倍に増えた。中でも、TwitterとFacebookの集客力は、看過することのできないものになりつつある。また、徐々にだが、コンバージョンも上がり始めている。この集客や売り上げへの貢献を広告出稿費に換算すると、2,000万円以上になる。
 それだけでなく、ソーシャルメディアは、タワーレコードの特色である手書きPOP同様、スタッフの思いをお客さまに伝え、お客さまと同じ目線でコミュニケーションを図ることで“顔が見える”マーケティングを可能にすると同社は考えているという。

ジャンルをより細分化し、コミュニティを活性化

 同社ではこれまで主にK-POPファンに向けてソーシャルメディアの活用を進めてきたが、一定の効果が認められたため、今後はほかのジャンルにも活用範囲を広げていく方針。
 TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを活用すれば、システム開発費などをかけずにコミュニティサイトを立ち上げることができる。そのため、フォロワー数や「いいね!」数を追求するのではなく、参加者は小規模であっても活発なコミュニケーションが行われるコミュニティを数多く設置したいというのが同社の考え。今後は、ジャンルを細分化し、アカウントを増やしていくことで、ミュージックフリークにダイレクトにアプローチできる環境を整えていきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2012年4月号の記事