ファンとの交流の中で物販事業の強化を図る

新日本プロレスリング(株)

グッズ類の売り上げを興行収入に次ぐ貴重な収入源とするプロレスリング興行大手の新日本プロレスリング(株)では、2006年に独自運営の通販専用サイトを開設。Twitter、Facebookの運用開始を経て、2011年11月にはFacebookコマースへの取り組みを開始している。

物販が売上高の2割近くを占める重要な収入源

 日本を代表するプロレスラーの1人であったアントニオ猪木氏が中心となって1972年1月に設立された新日本プロレスリング(株)。同社はその後、経営面でさまざまな変遷を経てきたが、2012年2月、カードゲームメーカーの(株)ブシロードの子会社となって新たなスタートを切った。
 プロレスリング興行を事業の中心とする同社では、当然のことながら、10数億円の規模に達する年間売上高の大半が興行収入によって占められているが、実は物販収入も比較的多く、売上高の2割近くを占める重要な収入源となっている。
 取扱商品はTシャツ、タオル、ストラップ、カレンダー、マスクといった同社所属選手に関連するグッズ類のほか、プロレスリング大会・試合の様子を収めたDVD、関連書籍など300アイテム以上。売れ筋商品は単価2,500~ 4,000円前後のTシャツなどだが、最近では、IWGPチャンピオンベルトのおもちゃタイプのレプリカ「IWGPプラスチックベルト」などの独自開発によるユニークな商品が、12月の忘年会シーズンを中心にパーティー・グッズとしても人気を集めた。
 販売チャネルの中心は大会・試合会場の特設売店。さらに約10 年前に「楽天市場」のショップとして開設し、2006年に独自運営に移行した通販サイト「闘魂SHOP」があり、ここでの売り上げが堅調に拡大。グッズ売り上げ全体の2割強を占めるまでになっている。
 通販サイト「闘魂SHOP」のターゲットは当然のことながらプロレスファン、“新日”ファンであり、その大半は男性だ。年代的には20代後半~30代前半が最も多く、次いで10代後半~20代前半の層が続いている。居住エリアは全国に分布しており、人口と比例するかたちで関東居住者の比率が高いが、近年では絶対数こそ少ないものの、熱心なプロレスファンを中心に海外在住者からの注文も増えつつあるなど、その販売エリアは拡大傾向にある。

比較的早い段階からソーシャルメディアに積極対応

 同社では2009年11月にTwitterの公式アカウント(@nipw1972)を取得し、運営を開始。Facebookについても2010年11月に公式Facebookページを開設するなど、ソーシャルメディアについて比較的早い段階から積極的な対応を行ってきた。これは、興行を事業の中心とする企業として、安定した集客を実現するために、ファンと継続的なコミュニケーションを取りつつ、大会・試合に関する情報発信、所属選手からのメッセージの発信を行うことを目指すもの。実際にTwitter、Facebookともに1日数回から日によっては10回以上の情報発信を行い、フォロワーやファンからの投稿も受け付けることで、双方向型のコミュニケーションを実現している。
 特にTwitterについては、スタートから2年半近くを経て、1万4,000人近いフォロワーを集めており、“新日”ファンの多くに重要な情報入手経路として認知されている。
 一方、Facebookページについては、2011年5月にニューヨークでの興行に先駆けて、これの告知、集客のためのグローバルな情報発信を目指して立ち上げたところ、日本国内のファンからの反響も大きかったため、本格運用に踏み切ったという経緯があり、開設から1年半弱で、8,000人近いファンを集めるに至っている。
 物販を大きな収入源とし、通販専用サイトの運営にも力を入れている同社が、積極的に活用してきたソーシャルメディアをeコマースの舞台にもしていきたいと考えるのはいわば当然のことであり、2011年後半からその具体的な取り組みが進められることとなった。

「闘魂SHOP Facebook店」を開設

 同社が運営する通販専用サイト「闘魂SHOP」では、前述の通り、海外からのアクセスも徐々に増加している。しかし、現状、言語的には日本語のみの対応であり、英語などでの対応は行っていない。将来的なニーズの拡大を考えれば英語での対応をするべきだが、英語版の通販専用サイトを独自に立ち上げるには数千万円規模の初期投資が必要となる。このような状況の中で、同社では、すでに運用を始めており、世界共通のインターフェースとも言えるFacebookに注目。Facebookコマースを展開することを決めた。
 これは、Facebookコマース向けのショッピングカート・アプリ「storelike(ストアライク)」の提供を行う(株)あしたラボラトリーから、そのプロトタイプを無償で提供するというオファーがあったことから具現化。2011年11月に、とりあえず日本語版のみのα版をスタートさせた。
 「闘魂SHOP Facebook店」は、公式Facebookページの1コンテンツとしての位置付け。取扱商品は同社の物販事業における売れ筋商品であるTシャツを中心に30アイテム前後で、受注は前出の「storelike」を通じて行い、決済はクレジットカードのみの受け付け。商品の配送には宅配便を利用している。
 スタートから間もないため、現状では認知度の向上に努めている段階だ。例えば人気のTシャツにFacebook店限定カラーをラインナップし、大会・試合会場などでそのサンプルを着用したスタッフがFacebookページの告知活動を行うといった地道な取り組みが功を奏し、アクセス数、売り上げとも着実に拡大を続けている。
 また、従来の「闘魂SHOP」では漠然としかわからなかった顧客プロフィールが、実名登録を基本とするFacebookを通じて明らかになったり、ソーシャルメディアならではの情報拡散効果により、従来からのプロレスファンにとどまらない客層の獲得につながったりといった効果も生まれており、今後も積極的な運用を行っていく方針だ。
 さらに今後は、例えば所属選手主導の商品づくりの過程をFacebookページ上で公開し、でき上がった商品を販売するなど、情報提供と物販の融合にチャレンジしていく。また、企画当初の目標であった英語版の立ち上げの準備も進める。
 そして、これらの取り組みを通じて、現状では10%程度にとどまっているFacebookページのファンの中の物販利用者の比率を50%までに高め、物販事業全体のさらなる活性化を図っていきたい考えである。

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「闘魂SHOP Facebook店」ではファン限定商品も用意してファンの獲得を促進

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「闘魂SHOP Facebook店」限定商品第2弾「IWGP V11」T シャツ(グレー、3,500円)を着る棚橋弘至選手。ちなみに黒は会場および通販、白は「闘魂SHOP 水道橋店」での限定販売だ


月刊『アイ・エム・プレス』2012年4月号の記事