多様なチャネルを通じたクーポン配布で来店促進を図る

(株)レインズインターナショナル

(株)レインズインターナショナルでは、展開する焼肉レストランチェーン「牛角」の販売促進において、クーポンの配布を法人営業、街頭などでのチラシ配りと並ぶ重要な手段として位置付け。メールマガジンのほか、ソーシャルメディアを通じたクーポンの配布も実施している。

ケータイ向けメールマガジン「レインズメール」でクーポンを配布

 1996年に創業した焼肉レストランチェーン「牛角」をはじめ、「土間土間」「しゃぶしゃぶ 温野菜」「かまどか」など、さまざまなブランドで外食フランチャイズ・チェーンを展開する(株)レインズインターナショナル。同社では「牛角」の販売促進においてクーポンの配布を法人営業、街頭などでのチラシ配りと並ぶ重要な手段として位置付けており、積極的な活用を行うことでリピーターの獲得、来店促進につなげている。
 同社のクーポン戦略において中心となっているのが、ケータイ向けメールマガジン「レインズメール」を通じたクーポンの配布である。その内容はフランチャイズを中心に構成される全国630店舗それぞれで「牛角メール会員」を募集。登録した会員に対して、登録店舗から「○○店からのご案内です」というかたちで「お会計10%OFF」「□□1皿無料」などのオファーを含むeメールを配信し、来店してメール画面を提示した会員に対して割引サービスを提供するというもの。本部が作成した内容を全国一斉配信することが基本となっているが、フランチャイジー店舗が独自のeメールの配信を希望した場合には、エリアマネジャーが確認した上で個店単位での配信を行うこともある。なお、会員登録に当たっては、アンケートを行って、メールアドレスのほかに年代、性別、同伴者などの情報を収集し、登録店舗の情報とともにデータベース化しているが、現状では細かいセグメントに基づくeメール配信は実施していない。
 同社がこのような取り組みを開始したのは2004年ごろ。外部企業のシステムに参加するかたちでスタートしたが、eメールに送り主として登録した個店名が表示されず、また、同社店舗で登録した会員にシステム提供企業の別のクライアント企業からの広告メールが配信され、苦情につながるケースもあったことを受けて、2008年から配信自体は外部委託ながらも独自のシステムを構築。以降、現在のかたちで運用を続けている。

来店客の20%をメール会員に

 eメールの配信頻度は、基本的に最大週1回としているが、例えば「本日から1週間のキャンペーンです」というメールを配信した6日後に、「本日がキャンペーンの最終日です」というeメールを配信することもある。なお、頻繁にeメールが届くことを理由に退会を希望した会員に対しては、eメールの配信を月に1回だけにするというオファーを通して、退会防止を図っている。
 会員数は公表していないが、全国で数百万人規模に及んでいるとのこと。なお、同社ではフランチャイズ・直営の各店舗に対して、来店客の20%に会員登録してもらうことを推奨・指導しており、その目標をクリアしている店舗も少なくないそうだ。
 配信したeメールについては、毎回、反応率を検証している。特に反応率が高かったeメールについては、タイトル、本文、レイアウト、オファーの内容などの各要素を検証し、知見として蓄積。それを以後のメールに反映することで、反応率の向上を図っている。ちなみに反応率は現状1%未満とのことで、店舗の立地や会員属性などによる差異はさほど見受けられないという。

ソーシャルメディアを経由したクーポン配布も展開

 同社が「レインズメール」以外のクーポン配布チャネルとして2010年から活用を開始したのが、ソーシャルメディアとして注目を集めているTwitter、Facebookである。
 まずTwitterについては、「@gyukaku29」という公式アカウントを取得。2万2,000人近いフォロワーを集め、「牛角」のキャンペーン情報などを発信しているが、その中で月に2~3回、おのおの3日間程度、来店時にフォロー画面を見せると「お会計10%OFF」「□□1皿無料」といったキャンペーンを実施。フォロワーにオファーの内容についての希望を募るなどして、双方向型のコミュニケーションを取りながらクーポン配布を行っている。また、Twitterでは同社代表取締役社長CEOの西山知義氏も個人アカウントを取得し、2万6,000人以上のフォロワーを獲得していることから、公式アカウントと西山氏がTwitter上で提供するオファーの内容についてのやり取りを行い、その経過をあますところなく公開するなどによりライブ感の演出につなげている。ちなみにこうしたやり取りについては、実施時間やテーマはあらかじめ定めているものの、内容は基本的にアドリブであり、公式アカウントで提示したオファーの内容について西山氏がリアルタイムで“ダメ出し”を行うなど、リアリティの高さが人気を博しているとのことである。
 なお、Twitterによるクーポン配布の反応率は「レインズメール」と同等であるが、クーポンを使ったフォロワーが感想をTwitter上でつぶやくことによって情報が波及するような効果も見られることから、今後も積極的な運用を継続していく意向である。
 一方、Facebookついては、「炭火焼肉酒家 牛角」名でFacebookページを開設。キャンペーン情報やトピックスなどを発信しているが、その中で「いいね!で割引券」というコンテンツを設置。割引券表紙画面をプリントアウトして会計時に提示すると500円を割り引くというサービスを提供している。現在、ファン数は1,000人強という状況であるが、今後も継続的な情報発信を行うことで、活性化を図っていく考えだ。
 なお、店舗で来店客を対象に会員を募集する「レインズメール」によるクーポン配布がリピーターの拡大を主目的としているのに対して、ソーシャルメディアを通じたクーポン配布は新規顧客の獲得を目指すものと位置付けられており、今後もこれらを組み合わせて運用することで、各店舗での安定した集客を図っていく方針である。

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Twitter の公式アカウント「@gyukaku29」では、月に2~3回、割引キャンペーンを実施。Facebookページ「炭火焼肉酒家 牛角」でも割引サービスを提供している

ソーシャルゲームを通じたクーポン配布も検討

 前述した通り、同社では「牛角」のほかにも、「土間土間」「しゃぶしゃぶ 温野菜」「かまどか」など、さまざまな外食ブランドを展開しており、「牛角」と類似したクーポン施策を展開しているチェーンも存在する。ブランド間の連携については、現状では成功事例などのノウハウの共有にとどまっているが、今後はメール会員の承諾を得た上で、例えば「牛角の姉妹ブランド○○からのご案内です」といった内容のeメールを配信するなど、会員という資産を共有することも検討している。
 また、同社では(株)ゆめみがiPhoneで提供している位置情報連動ソーシャルゲームアプリ「MyTown」とタイアップし、実在する建物を購入してアプリ内の自分の土地へ購入した建物を自由に配置して街づくりを楽しむこのゲームの中で、ゲームユーザーが「牛角」の外観をイメージした建物を取得することができるようにしているが、このゲームを通じてクーポンを配布することも検討している。
 同社では、今後もさらにクーポン配布経路の多様化を進め、クーポン取得層の拡大を図ることで、より一層の来店促進につなげていく考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2012年1月号の記事