オンライン書店「e-hon」で書店とお客さまの接点を創造

(株)トーハン

書籍や雑誌などの卸売業である(株)トーハンでは、2000年11月、オンライン書店「e-hon」を開設。書店へのEC機能の提供にとどまらず、注文商品の店頭受け取りによって来店を促進しているほか、トーハン主導によるeメール・プロモーションなども展開している。

オンライン書店「e-hon」で店舗をサポート

 出版社と書店をつなぐ卸売業として1949年に設立した(株)トーハン。以来、出版物の普及を図るべく高度な物流・情報インフラとグローバルな流通ネットワークを構築するとともに、開業の相談から日常の運営に至るまで、得意先(以下、書店)へのきめ細かいサポートを推進している。
 取扱商品は書籍や雑誌などの出版物のほか、CD・DVDなど約80万点。全国にある約1万5,000店の書店のうち、約6,000店との取引がある。
 トーハンが実施している書店サポートのひとつに「e-hon」がある。「e-hon」は、書店の売り上げアップや新規顧客の獲得、既存顧客へのサービスの充実を目的にスタートしたオンライン書店で、2000年11月にサービス提供を開始した。当初は書籍のみを取り扱っていたが、その後、雑誌やCD・DVD、さらには読書に関連したグッズなどの周辺アイテムにまで取扱商品を拡大。加えて、モバイルやスマートフォンにも対応して利便性を高め、今日に至っている。

My書店登録でお客さまと書店を紐付け三方良しの構造を実現

 「e-hon」は、お客さまが「e-hon」に会員登録の上、商品を注文すると、店頭渡し、または、宅配で商品を受け取ることができるサービス。会員登録は無料で、送料については、店頭受け取りは無料、宅配の場合は税込み1,500円以上の注文で無料となる。
 会員は登録時に必ず、「e-hon」加盟書店の中から「My書店」を選んで登録する。店頭渡しの場合にはこの「My書店」で受け取る仕組みだが、店頭渡しは利用せずに宅配のみを利用する場合でも、あるいは購入商品が本かCD・DVDか物販かにかかわらず、すべての売り上げは「My書店」として登録されている加盟書店の売り上げとしてカウントされる。「My書店」によってお客さまと書店を紐付けることで、三方良しの構造を実現しているのだ。
 トーハンの得意先である書店が「e-hon」に加盟すると、EC機能により、トーハンが保有する約80万点の在庫をまるで自らが保有する在庫のようにフル活用できる。このほか、独自Webサイトを開設する、パーソナライゼーション機能によりお客さまの好みに合った書籍やCD・DVDなどをeメールでお勧めするなど、充実したサービスを利用することも可能となっている。このように、店頭にとどまらないさまざまなプロモーションを展開できる点が、「e-hon」加盟のメリットと言える。
 また「e-hon」では、ほかのオンライン書店との差別化を図り、集客を促進するため、書店の店員が本をお勧めする「本のソムリエ」など魅力的なコンテンツの開発にも注力。読書にまつわるこだわりの商品を集めた「セレクト商品フロア」ではここでしか買えないオリジナル商品も扱っており、これらも書店の売り上げに貢献している。
 加盟に必要な費用としては、入会金3万円と月会費3,000円に加え、個別包装と物流手数料として本体価格の7%(上限200円)に当たる金額を徴収している。

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書店の店員が本を勧める「本のソムリエ」のページ

「e-hon」加盟店は47都道府県を網羅

 2011年10月末現在の「e-hon」加盟店は約2,900店舗。一部、加盟店のない町村があるものの、全都道府県を網羅している。
 会員数は現在、約100万人。会員の属性を見ると、年代は30~40代が多く、性別では男性が多い傾向にあるという。新規会員の獲得は書店ごとに行っており、各店ではチラシの配布やプレゼント付きのキャンペーンなどを実施。トーハンでは、ノベルティグッズを提供するなどしてこれをサポートしている。
 加盟店1店舗当たりの保有会員数は平均して約300人。中には、約20店舗を有するチェーンで9万人もの会員を獲得しているケースもあるという。ただし、会員情報の管理は基本的にトーハンで行っており、書店で把握している会員の個人情報は氏名のみ。会員が注文した商品をなかなか受け取りに来ないといった場合には、書店の運用画面で処理することにより、会員宛てに督促のeメールが配信できる仕組みになっている。
 一方、「e-hon」の利用を促進するための施策としては、eメールを活用している。トーハン主導で配信するeメールは、お客さまに「e-hon」を思い出してもらうことを目的にした週1回のウイークリーメールと、入会時に登録した関心のあるテーマや購買履歴に基づいて配信対象をセグメントしているターゲットメールの2種類。ターゲットメールのバリエーションは、月に数百種類に上るという。いずれも、希望者のみを対象に配信している。
 このほか、書店主導で自店の会員にeメールを送ることも可能だ。配信方法は簡単で、文章を作成して「e-hon」の管理画面上で自店の会員を送付先に指定するだけでよい。前述の通り、書店は個人情報を持たなくても、「e-hon」の仕組みを使うことで効果的なプロモーションを展開することができるのである。

店頭受け渡しのリードタイムの短縮や「e-hon」の認知度向上が課題

 トーハンがWebサイト上で実施しているアンケートの結果によると、実際に「e-hon」で書籍やCD・DVDなどを購入している会員からは、「以前は専門店で購入していた楽譜がe-honで買えるので、助かっている」「引っ越ししても学生時代からお世話になっている書店の会員になっている」「図書カードはネット書店では使えないが、e-honの店頭受け取りでは使用できるので嬉しい」といった声が寄せられており、おおむね好評を得ている。
 また、書店からは「e-hon」が来店促進につながっている点や、来店時に併売を誘発していることなど、プラスアルファのアクションが得られる点が評価されているという。
 現在、トーハンでは、店頭渡しの場合のリードタイムの短縮を課題としている。これには出版物の輸送ルートを利用しており、宅配より若干日にちを要しているが、一方で宅配は翌日配送が可能なことから、店頭渡しについてもより早いお届けを目指していく意向だ。
 また、「e-hon」の認知度向上も課題である。約2,900の加盟書店の利用者がすべて「e-hon」会員となり、利用してほしいと考えている。
 さらに、書籍や雑誌以外の取扱商材の拡充を図ることも課題という。書店が売りたいと思うものや、47都道府県に加盟店がある強みを生かして、例えば和紙製のブックカバーなど、地方色が豊かなものを取り扱っていきたいとのこと。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年12月号の記事