デザイン性の高い商品の訴求を目的に伊勢丹新宿本店に期間限定のリアル店舗を出店

アスクル(株)

オフィス用品や理科学用品、医療材料などの通信販売を手掛けるアスクル(株)。同社では、「ハッピーオフィスネットワーク」の実現を目指して、2004年からデザイン性の高い商品の開発に注力。その商品を広く訴求することを目的に、2010年6月に東京の伊勢丹新宿本店に期間限定で出店。約70アイテムを販売した。

目指すは、ハッピーオフィスネットワーク

 アスクル(株)は、1993年3月からサービスを開始した、オフィスに必要なモノやサービスを「明日お届けする」トータル・オフィス・サポートサービスを提供する会社である。「お客様のために進化する」を企業理念とする同社では、年々、取り扱いアイテム数を拡大。「ハッピーオフィスネットワーク」をスローガンに、1日の中でも長い時間を過ごすオフィスを、商品やサービスを通じて幸せで楽しい場にすることを目指している。
 もともとは文具・オフィス家具の販売からスタートした同社だが、現在では文具、オフィス家具、キッチン用品、インテリア、飲料、生活雑貨に至る幅広いアイテムを取り扱っているほか、医療分野における手袋やマスクなどの一般消耗品や注射針やカテーテルといった医療材料も販売。
 カタログ掲載商品とインターネットショップのみで取り扱う商品を含めて、総アイテム数は9万点に達する。
 同社のビジネスモデルは、紙もしくはWebのカタログで商品を選び、ファクスもしくはインターネットで注文すると、当日もしくは翌日には届くというもの。このスピーディーな配送サービスと、オフィスで必要なものをリーズナブルな価格で購入できる点が、多くの顧客から支持されている所以だ。2011年5月期の連結売上高は約1,970億円。経済産業省の調査によると、全国の事業所数は600万に及ぶが、アスクルはこのうちの3分の1の事業所と、これまでに何らかの取引実績があるという。

トレードショーへの出店がきっかけで、伊勢丹新宿本店に期間限定ショップをオープン

 同社はもともと、大手文具・オフィス家具総合メーカーであるプラス(株)の一事業部門として発足し、プラスの製品の通信販売からスタートした。その後、他メーカーの製品の取り扱いも開始し、幅広い商品を早く、安価に提供することで、ビジネスを大きく成長させてきた。
 しかし、たくさんの商品を早く、安価に提供するだけでは、「ハッピーオフィスネットワーク」を実現することはできない。オフィスにいる時間は長いため、使うもの、目に入るものが、使い勝手が良いもの、心地良いもの、お気に入りのものであることが“ハッピー”につながると同社は考えた。そこで2004年にまずカタログデザインそのものを刷新。2005年から、オリジナル商品のデザイン性を高めることに注力し始めた。とは言っても、アバンギャルドなデザインではなく、ワーキングプレイスの日常になじむシンプルなものであることと、機能や品質にこだわって商品を開発。デザイン性の高い商品はとかく価格が高くなり、敬遠されがちだ。しかし同社は、多くの人に使ってもらえるようにと、リーズナブルな価格の日常の必需品にデザインを付加した。
 代表的な商品としてはボックスティッシュや紙コップなどがあり、また、コピー用紙をはじめとするオフィス向け商品のパッケージデザインも北欧デザイナーとの共同開発によるものだ。
 これらの商品は、通常は紙カタログやインターネットショップ経由で購入できるが、より多くの人々にオリジナルデザイン商品を体感してもらおうと、2009年10月30日から11月3日まで、東京ミッドタウンで開催されたDESIGNTIDE TOKYO 2009に「Askul Limited Store.」を出店した。DESIGNTIDE TOKYOは、インテリアや雑貨を中心に、数々の優れたデザインが発表され、デザインやその思考をトレードすることを目的とするエキシビションである。そこでオリジナルデザイン商品を展示・販売することで、オフィス用品の通販としてのイメージが強いアスクルが、デザイン性の高いオリジナル商品作りにも注力していることや、個人でも購入できる商品であることを訴求し、ブランドイメージを高めることを狙ったのだ。そこで同社の商品が伊勢丹関係者の目にとまったことから、2010年6月16日から30日まで、伊勢丹新宿本店に期間限定ショップを出店することとなった。

感度の高い顧客に向けて約70アイテムを展示・販売

 ショップの名称は、DESIGNTIDE TOKYOに出店した時と同じ「Askul Limited Store.」。会場は、伊勢丹新宿本店5階リビングフロアの「ザ・ステージ♯5」。「ザ・ステージ♯5」は、毎日の生活を豊かにするインテリアスタイルを期間限定で紹介するスペースで、感度の高い顧客に人気がある。
 ここでは、アスクルの代表的な商品である北欧デザイナーとの共同開発による電波時計、傘立て、スリッパ、ボックスティッシュなど、リビングを彩る約70のアイテムを展示・販売した。販売価格は、通販と同じ。カタログでは、業務用として複数個をまとめて販売している商品もあるが、リアル店舗ではバラでの販売も行った。
 DESIGNTIDE TOKYOは、デザイナーなどデザインのプロが集まるイベントだが、伊勢丹新宿本店への出店は一般生活者を対象としている。そういう意味では、これが同社初のリアル店舗と言える。この出店の目的は、販路拡大ではなく、あくまでデザイン性の高い商品を多くの人に知ってもらうこと。これまでアスクルを知らなかった人にオリジナル商品のデザイン性やアスクル・ブランドの世界観を体感してもらうと同時に、アスクルは知っているけれどデザイン性の高い商品を作っていることは知らなかったという顧客に商品を知ってもらうことだ。集客に当たっては、自社のWebサイトやメルマガを活用して既存顧客に対して告知したほか、『シティリビング東京版』で告知。プレゼント企画を実施することで、集客力を強化した。

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昨年6月、伊勢丹新宿本店に期間限定で出店した「Askul Limited Store.」(上)/北欧デザイナーとの共同開発などによるデザイン性の高いオリジナル商品群(下)

来店客から寄せられた声に効果を実感

 約2週間という短期間の出店であったが、来店客からは「アスクルを知らなかった。伊勢丹で初めて知った」「オフィスで通販を利用しているけれど、こんな商品があることは知らなかった。これから買います」「ボックスティッシュを購入しているけれど、こんなデザインのものがあるなんて知らなかった」といった声が寄せられた。具体的な数字での評価は行っていないものの、肌感覚として効果はあったと感じているという。さらに、来店客がSNSに投稿することで、リアル店舗やオリジナルデザイン商品の認知が広がっていったことからも、効果はあったと見ている。
 今後もアスクルでは、顧客に「楽しさ」や「新鮮さ」を与えられる商品を提供し続けていきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年8月号の記事