コミュニティー・サイトを通じて100万人を超える会員に写真の楽しさを訴求

オリンパスイメージング(株)

オリンパスイメージング(株)では、同社のデジタルカメラ・ユーザーを対象に写真投稿コミュニティー・サイト「フォトパス」を運営。「写真を通じて会員同士のコミュニケーションを広げ、写真をより楽しんでもらう」ためのサポートを通じて、会員のロイヤルティの向上を図っている。

月間3万枚前後・累積80万枚以上の写真投稿

 オリンパスグループで、デジタルカメラ、ICレコーダーなどの製造・販売を手掛けるオリンパスイメージング(株)では、2007年3月から同社のデジタルカメラ・ユーザーを対象に写真投稿コミュニティー・サイト「フォトパス(fotopus.com)」を運営。同サイトを通じてさまざまなサービスを提供することで、同社のデジタルカメラ・ユーザーのカメラライフをサポートしている。
 フォトパスは、「写真を通じて会員同士のコミュニケーションを広げ、写真をより楽しんでもらう」ことがコンセプトとなっており、写真を投稿したり、投稿された写真に対してコメントを書き込んだりすることが基本的な機能となっている。閲覧は誰でも可能であるが、写真の投稿やコメントの書き込みなどを行うためには、サイト上で同社デジタルカメラのユーザー登録を行い、無料の「スタンダード会員」、または有料(入会金735円、年会費2,940円)の「プレミア会員」としての登録を行うことが必要となる。
 フォトパスでは運営開始以来、順調に会員を拡大しており、2011年2月現在では会員数が100万人を突破している。特に最近では、写真ブームの広がりを背景に従来比較的少なかった若年層や女性の会員が増加。写真投稿も活発に行われており、投稿枚数は月間3万枚前後、累積では80万枚以上にも及んでいる。ちなみにフォトパスでは会員1人の1日の投稿枚数を10枚までに制限しているが、ほぼ毎日10枚ずつ投稿している会員も存在するとのことだ。また、それらの写真に対するコメントの書き込みも盛んで、1日平均3,000件前後の書き込みがなされている。

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フォトパス(fotopus.com)にはコミュや添削サービスなど多彩なメニューが用意され、日々、活発な書き込み、投稿が行われている

“おもてなし”から会員の能動的な活動のサポートへ

 フォトパスではスタート当初、同社がメーカーとして会員を“おもてなし”するという観点でサービス提供が行われていた。しかし昨今では、会員のニーズがサービスを享受することだけでなく、能動的にサービスを楽しむことにあるという認識から、会員が積極的に参加する本来的な意味での“コミュニティー”の形成を意識したサービス提供が行われている。
 例えば、フォトパス内のコンテンツとして2010年7月に導入したSNS「フォトパスコミュ」は、自然や風景を題材とする“山コミュ”、日常の街角写真を題材とする“街コミュ”、水中写真をテーマとする“マリンコミュ”など、撮影テーマをベースに設定。また、プロ写真家が管理人を務める“コミュ”には、好きな話題でトピックスを立てられる機能が設けられており、会員の能動的な参画を促している。
 また、2010年にスタートした「オリンパスライブ」は、USTREAMを使い、同社主催の各種イベントやプロ写真家による写真講座をライブ配信するサービスであるが、さらにこれにTwitter連携機能を盛り込み、ライブ内容に関する会員同士のコミュニケーションを促進している。
 一方で、スタート当初は一定数を用意していた有名タレントによるコンテンツなどは、あまり関心が寄せられなかったことなどから、現在では減少傾向にあるとのことだ。
 フォトパスは基本的にインターネット上で運営される写真投稿コミュニティー・サイトだが、会員同士の交流を活発化するという観点から、リアルな場でのイベントなども数多く開催している。例えば同社の東京・大阪のショールームなどで、プロカメラマンによる撮影テクニックなどに関する講義や会員の作品展示などを内容とするイベントを2カ月に1回程度開催し、毎回500~1,000人規模の会員の参加を得ている。その際、会員同士が同一の“コミュ”に参加しているなど、コミュニティー上で何らかの接点があることが多いことから、「初めて会った気がしない」という感想が多く寄せられ、さらに、このようなリアルな場での交流を経て、コミュニティー上でのコミュニケーションがさらに活性化されるといった好循環が生まれつつある。
 なお、100万人を超える会員の中でも、特に活発に活動する会員が10~15%存在しており、最近ではこれらの会員がフォトパス上のさまざまなコンテンツで主導的な役割を果たす雰囲気が醸成されつつあることから、事務局機能を担う同社が活動をリードする必要性は減少している。しかし、一方で写真やコメントの数が増加したことなどにより、公序良俗や著作権保護という観点からそれらのチェックを行い、必要に応じて注意喚起を行うといった作業の必要性は増加しており、運営のために一定のマンパワーが必要な状況に変わりはないとのことだ。

露出機会の設定や技術指導により会員の写真への意欲を維持・向上

 同社が最近、フォトパスのコンセプトである「写真を通じて会員同士のコミュニケーションを広げ、写真をより楽しんでもらう」ことを実現するために注力しているのが、会員の写真を公開する機会を増やすことによって、会員の「よりよい写真を撮りたい」という意欲を喚起することだ。
 例えば、東京・大阪のショールームでは定期的に会員の作品を展示。また、同社協賛のイベントの一環として京都の名刹・東寺に会員の作品を展示したり、カメラ店の店頭に設置する販促物や製品カタログなどにも許可を得た上で会員の作品を掲載したりするなど、さまざまな場面で会員の写真の露出を図っている。
 さらに、2010年10月には、従来、郵送ベースで提供していたプロ写真家による写真添削サービスをサイト経由で手軽に行えるようにするなど、会員の技術向上をサポートする仕組みの充実にも力を入れており、これらを通じて、会員の写真に対する意欲の維持・向上を図っていく考えである。
 なお、デジタルカメラ・メーカーである同社が、写真投稿コミュニティー・サイトを運営する背景には、当然のことながら、このサイトを通じて会員の同社へのロイヤルティーを向上し、最終的には同社製品の継続購入につなげる狙いがある。例えば「フォトパスコミュ」の中の女性限定のコミュ「フォトルージュコミュ」で、写真愛好者の中では比較的一般的な、光に放射状のアクセントをつける効果を演出するクロスフィルターの話題が盛り上がり、「クロスフィルターが装着可能なマイクロ一眼カメラを初めて購入して使ってみた」といった書き込みが見られるようになるなど、ある程度のプラス効果は確認できるようになってきたようだ。しかし、具体的な成果が表れるのはカメラ関連製品の購入サイクルから考えて、これからと同社は期待している。
 今後の課題としては、サイトのパフォーマンスの維持・向上が挙げられている。特に写真投稿コミュニティー・サイトの基本機能である「見たい写真をすぐに見つけられる」という部分については、常にNO.1を目指す。例えば「野鳥」「鉄道」など趣味性が高い分野では詳細な情報に基づいた整然とした分類を、また、「水中」「旅行&旅」など感性が重視される分野では逆に「かわいい」「きれい」など曖昧な検索ができる分類を、1枚1枚の写真に担当者がマニュアルでタグを付与。他の写真投稿サイトとは一線を画す、専門性が高く、なおかつ使い勝手の良い環境を維持していく方針だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年4月号の記事