ソーシャルメディアを通じて『通販生活』ファンからの情報発信を促進

(株)カタログハウス

カタログ誌『通販生活』をメイン媒体に、通信販売事業を展開する(株)カタログハウスは、2010年、TwitterとFacebookのマーケティング活用を相次いで開始。ECを意識したプロモーションを展開するとともに、同社が提供する“こだわり”の商品に魅了される顧客からの情報発信も促進している。

ECへの取り組みの一環としてTwitterによる情報提供をスタート

 カタログ誌『通販生活』をメイン媒体として通信販売事業を展開する(株)カタログハウスでは、2010年4月に公式アカウントを取得してTwitterを通じた情報提供を開始。さらに同年12月にはFacebookに2種類のファンページを立ち上げるなど、ソーシャルメディアのマーケティング活用を加速している。
 同社の通信販売事業は1982年の創刊から30年近い歴史を誇り、読み物としても多くのファンを持つカタログ誌『通販生活』がメイン媒体であり、そのビジネスモデルは基本的には現在も変わらない。しかし近年では、『通販生活』を購読せずに、当初はカタログ誌の補完的な役割を担っていたWebサイトのみを利用して商品購入を行う顧客も徐々に増加。同社としてもNet通販事業部を中心にeコマース(以下、EC)への取り組みを本格化してきた。
 その基本的な手法は、インターネット広告などを通じて見込客のメールアドレスを取得し、メールマガジンを通じたコミュニケーションによって徐々に同社や同社商品への理解を深めてもらうことで、最終的に購買につなげるというものであった。しかし、最近ではメールアドレス取得のペースが伸び悩みつつある。そこで、それを補完する手段としてTwitterによる情報提供に白羽の矢を立てたのである。
 Twitter活用の検討においては、当初、“炎上”などのトラブルの可能性を危惧した。同社ではかねてよりECサイト上でスタッフ・ブログを公開してきたが、コメントが書き込まれた場合には、内容を確認し、必要に応じ編集してから掲載するという方法を採っていた。そのため、自社が関連するメディアにおいて生活者が発信する情報をリアルタイムかつ直接的に公開した経験がなかったからだ。
 しかし、外部の専門家に意見を求めたところ、Twitterではタイムラインに情報が流れ、また、一度に登録できる文字数も最大140文字にとどまることから、大きなトラブルにつながる可能性はほとんどないという回答を得た。そこで、2010年4月に公式アカウントを取得すると同時に、Net通販事業部のスタッフ8名もそれぞれ個人でアカウントを取得、Twitter活用のトライアルを開始した。
 その後、公式アカウントの運用から1カ月程度で、運用ノウハウなどもある程度得られたことから、2010年5月にはメールマガジンで公式アカウントを取得したことを告知。これにより、フォロワーの獲得に弾みがついた。さらに、2011年に入ってフォロワーに対するリフォローを開始して、RTにもこまめに対応するようにした結果、フォロワーの増加スピードが加速し、2011年1月末現在では2,200人以上のフォロワーを獲得するまでに至っている。
 Twitterの公式アカウントにおいては、単に情報発信を行ってECサイトへの誘導を行うだけでなく、イベント的なプロモーションも展開している。例えば2010年6月には、ECサイトを「www(だぶだぶ).通販生活」としてリニューアルしたことに合わせて行われた、同社のロングセラー「制汗パウダー ビフレデー」にかかわるキャンペーンの一環として、Twitter上で“ワキ”にちなんだ川柳を募集。多くの応募を得るとともに、前年同月比50~60%増の売上高を記録した。
 さらに、2010年秋にはやはり人気商品である「猫砂キャッツ・エコ」を対象とするRTキャンペーンを実施するなどさまざまな試みを進めており、今後もバリエーションに富んだ取り組みを行っていく意向である。

ECサイト全体のファンページに加えて特定商品を対象とするファンページも開設

 一方、Facebookについては、2010年夏から利用の検討を開始した。
  “こだわり”のある商品を販売する同社には、長年にわたって同社を利用する固定ファンも多い。そこで同社では、以前からそれらの顧客とのコミュニケーションを深める場として、コミュニティサイトのようなものを作りたいという希望を持っていた。しかし、独自に開設するにせよ、既存のSNSを利用するにせよ、相当のコストが必要となることから、なかなか実現に踏み切れなかった。
 そのような状況の中で、無料でファンページを立ち上げることができるFacebookはとても魅力的に映った。そこで具体的な検討を開始し、欧米では企業によるファンページ運用の成功例も多いことがわかったことなどから、2010年12月、Facebook上にファンページを開設する運びとなった。
 開設したファンページは、ECサイトと同名の「www.通販生活」と「オラソニックUSBスピーカー」の2種類。前者はECサイト「www.通販生活」全体のファンページ、後者は同社としては初めての試みであるインターネット限定販売のPC接続用スピーカー「オラソニックUSBスピーカー」のみのファンページである。
 ECサイト全体ではなく、特定の商品のみを対象とするファンページも開設した背景には、将来的には同社が取り扱う商品それぞれのファンページを開設したいという思いがある。前述の通り同社では、いずれも“こだわり”のある商品を販売しており、年1回実施している「読者が選んだ暮らしの道具ベスト100」という企画で16年連続して1位を獲得している「メディカル枕」をはじめ、固定ファンを獲得しているロングセラーが多い。それらのファンとコミュニケーションする場を設けて、それぞれの商品に対する思いなどを公開してもらうことで、偏りのない商品の魅力の発信につなげていこうというわけだ。同社では、商品を供給するメーカーの理解などを得た上で、できれば2011年中には20商品程度を対象とするファンページを立ち上げたいとしている。

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ECサイト「www(だぶだぶ).通販生活」のトップページ

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Facebookのファンページ

既存メディアとの連携強化が課題

 同社のソーシャルメディアのマーケティング活用における今後の課題としては、既存メディアとの連携の強化が挙げられている。
 同社のビジネスモデルにおいては、前述の通り、カタログ誌『通販生活』がメイン媒体である。従って、クリエイティブにおいても、読み物としての性格を持つ『通販生活』を編集することが第一義となっており、その中からECサイトやソーシャルメディアでそのまま活用できるコンテンツを見出すことは難しい。そのため、新たに専用のコンテンツを制作しなければならないなど、非効率な面があるのだ。
 そこで、『通販生活』を作る段階から、ECサイトやソーシャルメディアにおけるコンテンツ活用を意識し、いわば“1ソース・マルチユース”といったかたちとすることを目指しているのだが、ページが固定的なカタログ誌と階層構造でユーザーがコンテンツを自由に転移できるインターネットという媒体特性の違いから、その実現は容易ではない。
 しかし同社では、この困難な命題に向けて、継続的な取り組みを行い、『通販生活』の魅力を維持しつつコンテンツの共有も図って、双方の運用を効率化していく方針である。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年3月号の記事