電話・メールと並ぶ直接的なコミュニケーション・チャネルとしてチャット窓口を運用

マイクロソフト(株)

マイクロソフト(株)では、2007年から購入前の製品に関する問い合わせ窓口のひとつとしてチャットによる「マイクロソフト オンライン コンシェルジェ」を運用。電話やeメールとは異なるチャットのメリットを活用して、迅速で的確な対応を求めるユーザーのニーズに対応している。

チャットによるカスタマーサービス「マイクロソフト オンライン コンシェルジェ」

 「世界中のすべての人々とビジネスの持つ可能性を、最大限に引き出すための支援をすること」というミッションの下、コンピュータソフトウエアおよび関連製品の営業・マーケティングを展開するマイクロソフト(株)。同社では2007年4月から、購入前の製品に関する問い合わせ窓口のひとつとしてチャットによる「マイクロソフト オンライン コンシェルジェ」を運用している。
 「Microsoft Windows 7」「Microsoft Office」をはじめ、同社が手掛けるコンピュータソフトウエアや関連製品の分野では、当然のことながら、ユーザーが購入しようとする製品について疑問を持ったり、購入した製品が思うように操作できなかったりするケースも少なくない。「コンタクトセンターの仕組みを通じてお客様、パートナー様のエクスペリエンスを最大化する」というミッションの下、顧客満足度向上への取り組みを続ける同社カスタマーサービス&サポート部門では、Webサイト上で多くの自己解決策を提供するとともに、さまざまなチャネルを活用したカスタマーサービスを行っており、「マイクロソフト オンライン コンシェルジェ」はそのひとつの形態として位置付けられている。
 「マイクロソフト オンライン コンシェルジェ」の入り口は、同社カスタマーサービス&サポートWebサイトの「ご購入前の製品に関するお問い合わせ」ページにある。このページでは「よくあるお問い合わせ」をFAQとして表示すると同時に、2009年8月に日本語版を立ち上げた、質問を投稿したり、質問に回答したり、ほかの人への回答を参照したりすることで問題解決や疑問解明を図るコミュニティベースのサポートサイト「Microsoft Answers」を紹介。
 また、直接コミュニケーションを希望するユーザーのために「お電話での問い合わせ」(マイクロソフト カスタマー インフォメーション センター)、「メールでの問い合わせ」(Contact US)、「チャットでの問い合わせ」(マイクロソフト オンライン コンシェルジェ)の各窓口も紹介しており、ユーザーは希望するチャネルで問い合わせを行うことができる。なお、受付時間は電話、チャットが平日(土日・祝日と指定休業日以外)の9時30分~12時、13時~19時、eメールについては随時となっている。

電話・メールとは異なるメリットがある問い合わせ窓口として運用を継続

 「ご購入前の製品に関するお問い合わせ」ページからの問い合わせでは、電話によるものの比率が圧倒的に高い。eメールによるものがこれに続き、チャットを用いる「マイクロソフト オンライン コンシェルジェ」の利用は問い合わせ全体の数%程度だ。
 ユーザーからの直接的なコミュニケーションを、電話、eメール、チャットで受け付けるというかたちは、ワールドワイドのマイクロソフトで共通のものであり、先行してチャット対応をスタートしていた米国本社の例では、全体の10%以上がチャットによるものとなっている。この点について同社では、“変換”というステップが必要となる日本語は、英語などと比較してタイピングに時間がかかり、チャットが敬遠される傾向があるためと分析しており、同じ事情を持つ中国などでも同様の傾向が見られるとしている。
 同社では、このような傾向は今後も継続すると考えており、日本においてチャットの利用比率が急拡大することは想定していない。しかし、チャットにはユーザーにとって、電話、eメールとは異なるメリットがあると考えられることから、今後も選択肢のひとつとして運用を続けていく意向だ。
 例えば、製品の詳細な説明を音声のみで行うことは困難であるため、電話での対応においてもユーザーの疑問などに対応するWebページを紹介することがあるが、口頭でURLを伝える場合、ユーザーがメモを取るときに間違いが生じる可能性も否定できない。
 一方、チャットではテキストとしてURLを表示することも可能なので、ユーザーは確実にWebページにたどり着くことができる。また、eメールによる対応では、“翌々営業日まで”に返信を行う仕組みとなっていることから、ユーザーが回答を急いでいる場合ではニーズを充足できないというケースもある。その点チャットでは、受付時間内であればリアルタイムで対応が行われるため、迅速な対応を望むユーザーのニーズに応えられるというわけだ。
 なお、チャット、電話、eメールといったチャネル別で問い合わせ内容に大きな差異はないが、チャット、eメールでは、タイピングが必要になるという特性からか、比較的ITリテラシーが高いユーザーからの問い合わせが多い。

テンプレートの活用などで迅速な回答を実現

 「マイクロソフト オンライン コンシェルジェ」はマネージャー1名、スーパーバイザー(SV)1名、カスタマー・サービス・リプレゼンタティブ(CSR)5名の計7名体制によるチームで運用している。
 CSR1名が同時に対応を行うお客さまは最大でも2人まで。つまり、5名のCSRが同時にサービスを提供している場合でも、最大10人のお客さまにしか対応できないことになるが、これを上回る人数のお客さまから問い合わせが寄せられた場合は、必要に応じてSVやマネージャーも対応に当たったり、同じくテキストベースでの対応となるeメールでの問い合わせに対応するチームからスタッフを振り向けてもらったりすることにより対応している。ただし実際には、よくある問い合わせへの対応については、あらかじめ作成しておいたテンプレートを活用して迅速な回答を行うなどの取り組みによって、1件当りの対応時間は平均15~18分程度と以前に比べて短縮されており、そのようなケースは少ないようだ。
 なお、同社のカスタマーサービスでは、すべての問い合わせ窓口への対応は基本的にアウトソーシングしており、現状では実際の業務は国内4社、海外1社、計5社のコンタクトセンターで、それぞれの得意分野を生かした顧客対応を行っている。この点については「マイクロソフト オンライン コンシェルジェ」も同様であり、同社と担当コンタクトセンターが連携して業務を遂行している状況である。
 対応品質向上のための施策としては、電話やeメールでの対応と同様に、各マーケティングセクションからキャンペーン情報、新製品情報などを収集してナレッジ化するとともに、品質管理を担当するクオリティマネージャーが随時モニタリングを行い、必要に応じて指導を実施。これらの活動を継続することで、顧客満足度の恒常的な向上を追求している。
 なお、同社では前述の「Microsoft Answers」のほか、2010年11月にはTwitterを通じた情報発信を開始するなど、コミュニティやソーシャルメディアを通じた顧客コミュニケーションの強化を図っているが、今後は、これらと電話、eメール、チャットといった、いわば伝統的なダイレクトコミュニケーション・メディアを並行して運用することで、より幅広い層の顧客と多角的なコミュニケーションを図っていきたい考えである。

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Twitterを使ったSocial Mediaサポート(@MSHelpsJP)とコミュニティサポート(MS Answers)の画面


月刊『アイ・エム・プレス』2011年2月号の記事