企業が商品に懸ける思いや商品開発にまつわるストーリーを生活者に直接伝える機会を提供

(株)ルーク19

「サンプル百貨店」を運営する(株)ルーク19では、リアル会場で企業によるプレゼンテーションとサンプリングを行う「リアルサンプリングプロモーション(RSP)」を開催。参加者をブログ運営者に限定するこ とで波及効果を拡大し、参加企業から高い評価を獲得している。

リアル会場で企業からのプレゼンテーションとサンプル配布・販売を組み合わせたイベントを開催

 インターネットを介した申し込みに応じて、企業から提供される試供品やトライアルセットなどを、“興味がある”“試してみたい”という会員に無償または低料金で届け、試用・試食した会員の意見や感想などを生活者のナマの声として企業に届けるWebサイト「サンプル百貨店」を運営する(株)ルーク19。同社では、2006年2月からリアルな会場で企業からのプレゼンテーションとサンプリングを行うイベント「リアルサンプリングプロモーション(RSP)」を開催している。
 インターネット上でのビジネスを中心とする同社が、リアルな会場でのイベントに取り組むようになったのは、「サンプル百貨店」を利用する企業から、「サンプルを配布して意見や感想を収集する」だけでなく、「商品に懸ける思いや商品開発にまつわるストーリー、正しい使い方などを生活者に直接伝える」機会が欲しいという声が寄せられたことがきっかけだ。同社ではこのような要望に応えるため、「サンプル百貨店」会員の大半を占める女性の起床から就寝までの生活全般、例えば洗顔・歯磨き、化粧、朝食、昼食、掃除・洗濯などの家事、夕食などにかかわる商品について、企業からのプレゼンテーションとサンプルの配布や販売などを組み合わせたイベントとしてRSPを企画・開催することにしたのである。
 RSPは、その後年間6回程度開催されており、これまでの開催回数は28回にも及ぶ。開催場所は東京都内が中心であるが、首都圏以外に居住する「サンプル百貨店」会員からの要望が寄せられたことなどから、札幌、横浜、千葉、名古屋、京都、大阪、広島、福岡といった全国主要都市での開催も開始。現在では年間6回のうち、4回を東京、2回をその他のエリアで行うかたちが基本となっている。なお、具体的な会場としては各エリアのホテルが中心であるが、過去には話題性を喚起しようと、豪華客船を舞台に開催した例もあるとのことだ。
 RSPは通常、昼間(11時~14時30分)と夜間(19時~21時45分)の2部制で開催されている。これは、昼間は専業主婦層、夜間は独身OLや兼業主婦層が参加できるようにという配慮によるものであり、実際に多彩なプロフィールの女性が参加しているようだ。

参加対象をブログ運営者に限定

 RSPでは、1回当たり8社程度の企業が10分程度のプレゼンテーションを実施。参加者は着席でプレゼンテーションを聴き、その後、休憩時間に数十社(ブース出展のみを行う企業のブースを含む)のブースを回って試供品などを入手するほか、販売を行っている一部のブースでは特別価格で商品を購入することができる。参加費が無料であるにもかかわらず、1回の参加で一般の小売価格で3万円前後に相当する試供品などを入手できることから、同社としても当初は、試供品獲得目的の参加者が多数を占め、企業の商品に懸ける思いなどを伝えたいという狙いを充足できない事態になることを懸念していた。しかし、実際には参加する会員側でも「商品に関する知識を得たい」といったニーズが高く、例えば、企業のプレゼンテーションの際、熱心にメモを取る参加者なども少なくないようだ。また、参加者に依頼している試用・試食後のアンケート調査でも、回答時期を開催日の1週間後以降に設定しているにもかかわらず、回収率は70%に達しており、参加企業側から見てもプレゼンテーションとブース出展、アンケート回収などを含めて基本料金200万円に設定されている参加費用に十二分に見合う成果が実現されているようだ。実際に企業側の評価も高く、複数回の参加を行っている企業も多いとのこと。
 プレゼンテーションの内容に関しては、同社が薬事法に抵触しないかどうかなどのチェックを行うものの、基本的には参加企業に任せている。なお、例えば参加者にクイズを出題したり、ユーモアを交えて開発ストーリーを紹介したりするなど、趣向を凝らしたプレゼンテーションが高く評価される傾向があることから、初めて参加する企業に対しては、同社からその点についてのレクチャーを行っているとのことだ。
 RSPの参加対象は、当初、「サンプル百貨店」会員全般としていたが、知名度が向上するにつれ、参加希望が殺到するようになり、抽選で参加者を選ぶようになったことから、第3回から参加者の半数、第5回からは全員を、高い波及効果が望めるブログ運営者に限定した。それでも最近では毎回1,000人程度に設定している参加者数を上回る応募が寄せられているとのことである。なお、参加者に対しては、特別な試供品の提供などをインセンティブに、あらかじめ設定したキーワードを含むブログ記事をアップすることを推奨し、波及効果の拡大を図るとともに、それらの記事を自動収集して、フィードバックする仕組みを提供することで、参加企業のさらなる満足度アップにつなげている。さらに最近では、TwitterやUstreamを通じてリアルタイムでRSPの様子を発信する参加者も増えつつあり、波及効果はさらなる高まりを見せているようだ。

外部企業との連携によるスケールアップを図る

 RSP参加実績企業の業種は、食品メーカー、日用・雑貨品メーカー、製薬メーカー、スポーツ用品メーカーなどさまざまだ。配送コストの問題から「サンプル百貨店」を通じた試供品の配布が難しい冷凍食品メーカーなども参加している。また、例えばレーシック手術を行う眼科クリニックなどのサービス事業者がプレゼンテーションと資料の配布を目的に参加している例もある。
 RSPには生活者としての意識が高い参加者が多いことから、ブログ記事やアンケートへの回答などが商品改善の具体的な参考となるケースも多い。さらに、その改善が“RSPに参加した「サンプル百貨店」会員の意見による”ということが、流通バイヤーへの訴求要素となって、流通現場での売り場シェア拡大につながるといったケースも少なくないようだ。
 RSPの今後の方向性としては、外部企業との連携によるイベントのスケールアップが挙げられている。例えば、2010年8月27日に開催された「RSP in広島」では、地元TV局の(株)広島ホームテレビとの共同主催として、開催前にプレゼンテーション実施企業7社の30秒TVCMを各30回放映するとともに、開催当日には生中継を実施。さらに後日、RSPを特集した特別番組を放映することも決定している。また、広島県内を中心にスーパーマーケット「フレスタ」を展開する(株)フレスタの特別協賛も得ており、RSPに出展された商品の大半を「フレスタ」の特設コーナーで継続的に購入できる仕組みも構築したが、今後はこのような取り組みを強化していく意向だ。
 さらに2011年3月には豆腐関連業界団体の連合体である全豆連の主催により東京ビッグサイトで開催される「豆腐フェア(東京)」と連動して、大豆関連商品に限定したRSPを開催することなども予定。こうした業界特化型の取り組みも推進していく考えである。

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真剣に聴講するプレゼンテーションの様子(上)休憩時間には各ブースが大盛況に(下)


月刊『アイ・エム・プレス』2010年10月号の記事