オリジナル・シミュレーションシステムと職人技2つを駆使して“自分だけの一足”を提供

ミズノ(株)

日本を代表する老舗スポーツ用品メーカーのミズノ(株)では、“自分だけの一足”を求めるランナーに応えるために、レース用ランニングシューズのオーダー・システムを展開。カラーリングなどを選べる「スペクトラ」をオンライン上でシミュレーションできるサービスを開始した。また、同社のクラフトマンが手掛けるシューズ作成も好評を博している。

創業以来、日本のスポーツとともに歩んだ歴史

 1906(明治39)年、水野兄弟商会として設立され、今や日本を代表するスポーツ用品総合メーカーのミズノ(株)。創業当初から、当時はまだ高嶺の花であった硬式野球ボールを販売するなど、同社は日本におけるスポーツ史にその名を刻み続けてきた。今年2月に開催されたバンクーバー冬季五輪において銀・銅メダルを獲得した、日本スピードスケート陣の金色に輝く同社製ハイテク・スーツはまだ記憶に新しい。
 また同社は、アジア、北米、欧州、豪州にもその販路を拡大、世界的に見ても有名ブランドの仲間入りを果たしており、今回の冬季五輪においても3カ国10競技の選手が同社製品を使用した。諸外国からの支持を得る原動力となっているのが、そのクオリティの高さである。
 少し古い話では、1980~1990年代における4回の夏季五輪陸上競技において、9個の金メダルと1個の銀メダルを獲得したカール・ルイス選手に「魔法の靴」と言わしめた超軽量シューズを提供。近年においては2004年、米国大リーグの年間安打記録を84年ぶりに塗り替えたイチロー選手の「魔法の杖」と呼ばれる極細バットも提供した。このように超一流のアスリートをも魅了するさまざまな用具は、同社の“ものづくり”の精神と匠の業から生み出されているのだ。
 国内外に生産・販売拠点を持つ同社の連結売上高は約1,620億円(2009年3月期)。今期は長引く世界的な景気低迷の影響を受け10%程度の減額を予想しているが、そんな中、堅調に推移しているのが、ランニングシューズ部門である。2007年度の132万足以降、3年連続で販売数を伸ばし、2010年度は157万足を予測する。同社ランニング事業では、「すべてはランナーのために」をコンセプトに、シューズやアパレルといった商品展開にとどまらず、ランニングクリニックの実施やシューズ選びについてのアドバイス、シューズ選択機器の設置など、幅広くランナーをサポートしている。

ランニング・ブームの中オーダー・シューズが人気

 昨今のランニング・ブームの火付け役とも言われているのが、東京都心部の名所を巡る「東京マラソン」。2007年の初実施時における参加者の応募倍率が3.0倍だったのに対し、今年は8.9倍にまで達した。この大会に出ることを目標にした市民ランナーが増え、都内ランニングコースのメッカとも言える皇居外周は、時にラッシュの様相を見せている。また、この層を取り込もうとしたシューズメーカーなどが、ランニングの講習会をはじめ、更衣室・シャワーなどの設備面にまで踏み込んだサービスを展開しているのも最近よく聞く話だ。そんな、本格的に走るランナーたちの間で人気を呼んでいるのが、自身の個性を存分に発揮できるシューズのオーダー・システムである。
 ミズノが手掛けるレース用ランニングシューズのオーダー・システムは、大きく分けて2種類。ひとつは、オンライン上で同社オリジナルのシミュレーション・システムを使用して製作できる「スペクトラ」。これはカラーデザインのオーダーを主な目的としたもので、オンライン上でのシミュレーションとしては、従来ウエアのみで展開していたが、昨今のランニング・ブームに対応して、この2月からレース用ランニングシューズにも拡大した。
 具体的には、①シューズタイプ2種類(エキスパート&レーシング)、②アッパースタイル2種類(ひもタイプ&ベルトタイプ)、③シューズタイプに応じて選べるソールタイプが各3種類で、これらを組み合わせるかたちだ。アッパー、メッシュ、補強、靴ひもなどは同色となるが、シューズ本体は9色、ロゴのラインは19色、ネームの刺しゅうは14色の中から選べ、色の組み合わせだけで1,800種類を超える。自宅などのパソコン上で好みのカラーデザインが決まったら、その情報をプリントアウトしてミズノ製品取扱店に持参すると注文は完了、4週間ほどででき上がる。価格は1万8,900円からと定番商品よりも高額だが、既製品では満足しない、こだわりの強いユーザーには好評だ。また、ランニング・クラブなどが、同一デザインのシューズをまとめてオーダーするケースも多いそうである。

根強い人気を誇る職人技のオーダーメイド

 同社が提供するもうひとつのシューズオーダーは、直営の2店舗、エスポートミズノ(東京)とミズノ大阪店だけで取り扱っているものだ。これは、ランナーの足にフィットしたシューズを提供するために、シューズフィッターの資格を持つ店舗スタッフが足型を採寸、さらにユーザーに足の状態を聞いたり、スタッフが視認して気付いたりした特徴なども加味して製作する。左右での足の大きさの違いなどにも対応しており、またサイズピッチも一般的な0.5mmの半分、0.25mm刻みにしていることから、より足にフィットするシューズの製作が可能だ。
 さらに、“シューズ作りの名人”宮本クラフトマンが行う「シューズオーダー会」は人気の的である。この会では、パフォーマンスアップのために特別なチューンナップを希望するランナーや、外反母趾や内反小趾といったトラブルを抱えたユーザーへの対応も可能とするなど、現在考えられる最高のサービスを実現していると好評を博している。3月27日(土)と28日(日)に開催された同会には、15分刻みで予約客が来場、2日間で40人がオーダーするという盛況ぶり。定員オーバーのため、5月2日(日)と3日(月)に開催される次回オーダー会に回された予約が、相当数に上っている状況だ。
 オーダー会の内容は、まず体重の掛かり具合を写し取れる特殊なボードで足型を採取。それに宮本氏が片足ごとに10カ所あまりを採寸したデータを書き入れていく。その後、現在の足の具合などをヒアリング。リピーターには、その使用感なども尋ねながら今回の仕様を決めるという、きめ細かな作業が行われる。こちらの料金は2万3,000円からで、納品までのリードタイムは約2カ月だが、工場の混み具合によっても異なる。
 なお、宮本氏によれば、最も注意を払っている点は、データに頼らずしっかりとランナーの声を聴くことと、自分の目で見た直感を大事にすること。最も難しい点は、「自分に合うシューズはこれだ」と初めから決め付けているランナーの思い込みを正すこと。また、技術的に最も困難なのは、足先のかたちが「スクエア型」と呼ばれる、すべての指の長さがほぼ等しい足に合わせることだそうである。
 会場でのヒアリング結果を総合すると、1年程度のサイクルでリピートするランナーが多く、また、初めてオーダーするランナーの場合には、所属しているランニング・クラブや、楽しみながら一緒に走っている仲間などからの口コミがかなりの影響を与えていることがわかった。
 前記2つのシューズオーダーは、言わば職人仕事。製造数には限界があるが、順調に販売数を伸ばしており、2005年度の2,700足から、3,100足、3,700足、4,500足とその伸び率は年々増加している状況だ。同社ではこれからも、こだわりを持ったランナーに「自分だけの一足」を提供することを通し、ミズノファンの育成に努めるのはもちろん、現在のランニング・ブームをさらに盛り上げていくために、マラソン大会を協賛するなどのPR活動も強化していく意向である。

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シューズクラフトマン宮本氏が直接採寸する「シューズオーダー会」

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オンライン上で気軽に試せる「スペクトラ」


月刊『アイ・エム・プレス』2010年5月号の記事