“営業ミックスモデル”でお客さま満足度と営業生産性を飛躍的に向上

日興コーディアル証券(株)

日興コーディアル証券(株)お客様サービスセンターでは、従来のインバウンド機能に加え、ターゲット別の3つのアウトバウンド機能を有し、明確なミッションの下、お客さまとの能動的なコミュニケーションを展開。同社が構築中の営業ミックスモデルにおいて重要な役割を果たしている。

営業ミックスモデルにおいて中核的な役割を担うアウトバウンド・コールセンター

 日興コーディアル証券(株)は、1944年4月に川島屋證券(株)と旧・日興證券(株)との新設合併によって設立された日興證券(株)から、2001年10月に日興證券グループの持株会社体制への移行に伴って証券業およびその他営業の全部を承継。さらに2009年10月1日から、三井住友フィナンシャルグループの一員としての営業を開始し、新たなスタートを切った日本を代表する証券会社の1社である。
 同社の基本的な営業スタイルは、創業から長きにわたり、本支店の営業担当者による対面営業であった。当然のことながら、電話もお客さまとのコミニュケーションツールとして活用されていたが、それらは基本的には対面営業を補完する手段とされていた。2000年10月に、営業の生産性を飛躍的に向上させるための営業生産性革命の第一フェーズとして、電話による注文や問い合わせに対応するコールセンターを開設し、フリーダイヤルによる対応を開始した。
 また、2001年11月には、営業担当者のコンサルティング時間をさらに創出すべく、支店の代表電話の対応を専門的に行うファイナンシャルサービスセンターを東京・池袋、名古屋、大阪の3カ所にオープンした。そして、2007年9月には、組織的にこれらを統合して、インバウンド・アウトバウンドのテレマーケティング業務を一手に担う組織として「お客様サービスセンター」を開設し、現在に至っている。
 さらに、2007年からは第二フェーズとして「本支店」「お客様サービスセンター」「本社専門部署」および日興イージートレード(PC、携帯電話によるオンライントレード)と、eメールセンターからなる「ITチャネル」という、それぞれのチャネル特性を生かしつつ相互に機能を連携させる“営業ミックスモデル”の構築に着手した。このことで、センターの強みである「継続的なコンタクト」「お客様情報の収集と蓄積力」「標準化された対応力」「効率的オペレーション」を生かし、さらなるチャネルの融合に取り組んでいる。これは、従来の営業担当者による個人技を組織技へと移行させたということだ。その中でも、お客様サービスセンターのアウトバウンドは、本支店とともに能動的な営業活動を展開する部門として位置付けられており、同社が目指す営業ミックスモデルにおいても中核的な役割を担う存在となっている。

100名強のオペレータで3種類のアウトバウンド・テレマーケティングを展開

 同社お客様サービスセンターは2009年9月現在、東京の木場と池袋、名古屋、大阪、沖縄の5拠点・8センター体制で運営されており、これらのセンター内でインバウンドに加えた以下の3つのアウトバウンド業務が展開されている。
 ひとつ目が、保有商品に対するフォローコールで、ターゲットは同社の顧客の中でも特に運用金額が大きい優良顧客層。これらの顧客に対して保有商品の状況を定期的かつタイムリーにフォローするほか、新商品の紹介や資産運用に関する無料セミナーの告知・招待などを随時実施。顧客を担当する本支店の営業担当者のサポートを行うとともに、これらのプレミアム性の高いサービスを提供することで同社に対するロイヤルティーの維持・向上を図ることがミッションとなっている。
 2つ目は、既存の個人顧客を対象に、商品・サービスの提案やニーズのヒアリングを行うことにより、顧客との関係構築を図るアプローチ。これにより、“日興ファン”として厚い取引関係の維持・拡大を図ることを狙いとしている。
 3つ目は、中堅企業や公益法人などの法人顧客向けのアウトバウンド。顧客の役に立つ情報提供や金融商品ニーズのヒアリングを通じて、営業担当者が顧客を訪問するきっかけづくりとしてのアポイント取りを行うもので、いわゆる顧客開拓や顧客活性化の前工程を担っている。
 アウトバウンド・コールの戦略については本社の専門部署で協議され、対象者リストやアプローチのテーマが決定される。それを受け、お客様サービスセンターではデータベースや経験に基づく分析データを活用し、顧客本人やキーパーソンにできる限りリーチできるような架電手法やスケジュールを立案する。これには本社部門が協力して、オペレータがしっかり顧客に提案できるよう、研修の機会を積極的に設けている。
 また、すべての顧客へのアプローチ状況については、同社の全社的なCRMシステムであるCCIS(コーディアル・カスタマー・インフォメーション・システム)でリアルタイムに共有されている。このように、それぞれの顧客に対して全社レベルで最適なアプローチを行うための仕組みが構築されている状況だ。
 なお、前述のCCISには、本人にリーチするための工夫として、インバウンド・コール受信時や支店営業担当者の訪問時などに収集した最適なアプローチ曜日・時間帯、希望連絡先(一般固定電話か携帯電話か)などの情報も記録されているため、顧客の都合がよい日時や連絡先に架電することで、アウトバウンド業務の効率化を図っている。さらには顧客から収集した属性やニーズを基にデータマイニングを行い、顧客ニーズに合致した情報をタイムリーに提供することで顧客満足度の向上を図っている。コール件数は時期によって変動するが、合計で1日平均6,000~7,000件前後となっている。

タイムリーな情報提供・フォローで顧客満足度を向上

 同社のアウトバウンド・コールは単なる商品セールスではなく、顧客に合わせた情報提供やフォローコールをタイムリーに行うことを目指している。制度改正などのタイミングに合わせた情報提供と、幅広い商品知識に裏付けされたアプローチにより、法人顧客に対するアポイント獲得率は10数%に達し、優秀な営業担当者と比較しても群を抜いている。また、アポイント獲得情報はすぐに営業担当者に伝達され、連携が図れる仕組みが構築されており、スピーディーな対応とその後の継続的アプローチによって数百億円の取引実績につながっている。一方、保有商品への定期的なフォローコールに対する顧客満足度も高く、同コールにより高い解約抑止効果、買い増し効果が出ている。
 同社では「リテールビジネス」において、営業社員の提案力、お客様サービスセンターの組織力、ITチャネルの利便性を融合させた“営業ミックスモデル”をさらに推進していく意向であり、その一翼を担うお客様サービスセンターを重要な位置付けと認識。今後もインバウンドを含め、顧客との接点を質・量ともに拡大し、顧客への価値提供を推進することを通じて、存在感のある証券会社を目指していく方針である。

0911C3

日興コーディアル証券 お客様サービスセンター


月刊『アイ・エム・プレス』2009年11月号の記事