梱包資材削減の要望をベースに循環型の新配送サービスをスタート

アスクル(株)

オフィス用品の当日・翌日配送サービスを手掛けるアスクル(株) では、顧客アンケートの「物流・配送」分野において、サービス改善に関する要望の最上位に“過剰包装”が挙がるなど、かねてから梱包材の省資源化に対する期待の声が寄せられていた。そこで同社では、2009年4月に“ごみゼロ配送”に向けた新配送サービス「ECO-TURN配送」をスタート。利用企業の8割近くから肯定的な評価を得ている。

「お客様のために進化する」ことを目指しVOCを積極活用

 「明日来る」に由来する「アスクル」というサービス名称をそのまま会社名としたアスクル(株)。1993年3月に大手文具総合メーカーであるプラス(株)の1事業部としてスタートした後、1997年5月に分社独立するかたちで設立された同社は、中小事業所をはじめとする顧客に、オフィスで必要なものを届けるサービスを全国で展開(沖縄・離島を除く)。専用のカタログ(紙媒体またはWeb)で商品を選び、FAXやインターネットで注文すると、当日または翌日に商品が配送されるという、従来にはなかったサービスモデルを確立した。2009年8月現在、取扱商品はオフィス用品からインテリアまで4万アイテムを超え、2009年5月期の連結売上高は1,904億6,900万円に及んでいる。
 同社の企業理念は「お客様のために進化する―Innovate for Customer―」。創業以来、この理念に基づき、顧客と社会にとって必要なものを最も望ましいかたちで提供することを目指して、その実現のために、常に顧客の声(VOC)を聞きながら、商品、サービスの内容、システムを進化させてきた。
 例えば、2005年に導入したCRMシステム「シンクロスマイル」では、電話・FAX・eメール・アンケートなどにより寄せられたVOCを購買履歴と結び付けたかたちで蓄積し、その内容の一部を全社員がイントラネットの「シンクロハート」上で共有できるシステムを構築した。さらに2008年からは、VOCの社内共有・活用を一層強化する機会として、お問い合わせセンターの担当者が、VOCから得られた知見などを紹介する「お客様の声を聴く会」を月1回開催。社員であれば誰でも参加でき、実際に毎回、商品仕入れ、サービス開発、販促担当のほか管理部門などさまざまな部門から20~30名程度が参加して、業務の参考としている。
 このような動きの中から、2009年4月に“ごみゼロ配送”の実現に向けてスタートした新配送サービスが「ECO-TURN(エコターン)配送」である。

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梱包材の省資源化を図る「ECO-TURN配送」

環境負荷の低減を目的とした新配送サービスをスタート

 「ECO-TURN配送」は、再利用可能なリターナブルバッグ(通い袋)や折りたたみコンテナ(通い箱)によって商品を届け、回収し、再び商品の配送に使用する新しい配送サービスだ。従来から同社が顧客オフィスでの廃棄物削減を目的として行ってきた、高さ調節が可能な段ボール箱の使用による紙緩衝材の削減や、紙袋などの使用による簡易梱包の取り組みをさらに推し進めたものと言える。
 同社では2003年6月に「アスクル環境方針」を制定(2009年5月改定)。さらに、2009年にはCO2排出量と資源消費量について、2008年5月期の数値を基準に2010年5月期から3カ年の具体的な目標数値を明示した「全社環境中期目標」を掲げ、その方針・目標に基づき、「仕入・調達」「開発・選定」「社内管理」「販売・配送」「回収・循環」の各段階における環境面での具体的な活動目標・計画を“5つの約束”として明文化するなど、環境負荷の低減に関して積極的な取り組みを行っている。その中で「販売・配送」に関する“約束”は、「サービス進化と環境優位性の両面を常にセットで考え、環境負荷の少ない商品の販売・配送サービスをご提供します」というものであり、「ECO-TURN配送」はこの流れに沿ったものと言えるだろう。
 この新配送サービス提供の大きなきっかけとなったのは、2008年にカタログ上で行った顧客アンケートの「物流・配送」分野で、サービス改善の要望として最上位に“過剰包装”が挙げられたことだ。この結果を受けて、配送サービスのマネジメントを担当するロジスティックス配送マネジメント部では、「ECO-TURN配送」の仕組みを考案。まずは2008年9月、都内の顧客企業4社でのテストを開始し、一定期間の運用の後、対象企業の担当者から新サービスに対する意見をヒアリングしたところ、「ゴミが減った」「段ボールを処理する面倒な作業がなくなった」「資源のムダがなくてよい」といった肯定的な声が数多く寄せられたため、2009年4月、東京都内の10区(港、千代田、中央、豊島、文京、板橋、杉並、練馬、北、中野)でオフィス用品電子一括購買システム「アスクルアリーナ」を利用している顧客を対象に、サービスの本格運用を開始した。その後、2009年6月には東京23区内で定期的な購入実績がある顧客に対象を広げており、将来的には東京以外の大都市にも対象エリアを拡大する計画である。ちなみに同社では、東京23区内での「ECO-TURN配送」の実施により、梱包資材として使用している段ボール箱などを年間約1,200トン、CO2排出量換算では約700トン削減できると試算しており、前出の「全社環境中期目標」達成のための大きな柱となっている。
 「ECO-TURN配送」は2009年4月に本格運用がスタートしたが、さらなるサービスのブラッシュアップのためにも、VOCの収集が行われている。それが、「ECO-TURN配送」利用企業約1万2,000社を対象に行ったアンケート調査である。
 同調査では、「ECO-TURN配送」利用企業の満足度や満足・不満ポイントなどを確認。回答があった1,745社の総合評価では「大変満足」が26.1%、「満足」が50.3%と8割近くが肯定的であり、「ゴミの削減」「資源の有効活用」といった部分だけでなく、「商品がすぐに取り出せる」点も高く評価されるなど、事前の予想とは異なる知見も得られた。
 一方で、「次回配送時に回収されるまでの折りたたみコンテナの保管場所がない」「次回配送時に担当者が不在の場合もあり、梱包資材の返却が難しい」といった声も寄せられたことから、希望に応じて、納品時に梱包資材を回収するサービスなども追加し、利用企業の顧客満足度向上につなげている。

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納品時もVOC収集の場に

 同社では2009年4月、従来から1,500台以上のトラックによる配送を業務委託していた物流会社Bizex(株)を100%子会社化した。これは、顧客に商品を届ける最終段階まで、同社が責任を持って配送品質をコントロールできる体制を確立することを目的としている。これにより、通販という販売形態を採る同社にとって、貴重な顧客との直接・対面接触機会である“納品”というサービスをラストワンマイル化することでVOCを収集し、「ECO-TURN配送」など今後拡大予定の循環型配送プラットフォームの構築に向け、配送パートナーとともに協働していく考えだ。同社では今後さらに、VOCに基づく商品、サービス、システムの進化を図っていく方針である。


月刊『アイ・エム・プレス』2009年10月号の記事