安全・安心な食品を届けるために人材教育に注力する

らでぃっしゅぼーや(株)

環境NPOの活動から生まれたらでぃっしゅぼーや(株)は、会員制宅配事業者のパイオニア。創業から20年を経て、7,000アイテムの商品、10万世帯の会員を誇るまでに成長した。安全・安心への強いこだわりに満ちた生産基準を定め、生産者・販売会社・配送スタッフが三位一体となるためのイベントを恒例化。顧客接点の拡充に努めている。

“環境保全型生産基準”が今注目の有機食品マーケットを創造

  らでぃっしゅぼーや(株)は、「持続可能な社会の実現」を理念に掲げた環境NPO「日本リサイクル運動市民の会」(1977~1987年)を母体として、1988年に誕生した。安全なものを食べたいと思ってもなかなか手に入らなかった当時、誰でも手軽に安全な野菜を入手できる、画期的な会員制宅配サービスを開発した。翌年には、畜産品・水産品・加工食品・環境に配慮した日用品の取り扱いを始め、現在では約7,000アイテムを、全国の会員約10万世帯に販売。2009年2月期の売上高は対前年比7.4%増の228億7,000万円、営業利益は対前年比25.6%増の8億3,400万円に達している。
 一方、「食の安全」「環境保全」というテーマに共感・賛同する生産者も増え、現在では全国約2,600軒(うちメーカーは約500社)と契約、主力商品である農作物の供給には一層の安定感が出てきた。
 さらに、創業当時から徹底したトレーサビリティにこだわり、食・農業・環境に関する情報や、産地・生産者の紹介などを伝える情報誌「おはなしSalad」を会員宅に毎月配布。そのほか、生産者と生活者が交流する「産地交流会」を全国各地で年間数十回も開催するなど、単なる食品宅配会社とは一線を画する“時代に先駆けた”取り組みが特徴となっている。
 同社への会員登録は、Webサイトとコールセンターで受け付けており、注文はWebサイトかカタログとOCR用紙を利用する。基本となる商品は、年間を通して提供される野菜と、季節限定の野菜をセットにした「ぱれっと」。それと一緒にカタログ「元気くん」を毎週決められた曜日に宅配する仕組みになっている。なお、配送される商品はすべて、独自の環境保全型生産基準「RADIX」に則ったものである。

暮れなずむ町の“出会い”と“気付き”

 同社は、日本において20年以上の歴史を積み重ね、リーディング・カンパニーとしての高いブランド力と商品開発力で順調な成長を遂げている。その原動力となっているのが、同社に商品を納入している生産者とメーカーの会員組織「Radixの会」と、会員宅までの配送を担う企業で構成される「Radicleの会」である。同社は、両組織を“クルマの両輪”ととらえ、相互に訪問し合う機会を数多く設けるなど、会員宅に「“ホンモノ”を届けることへのプライドを持つ」という共通意識の醸成を目指している。
 前述の2つの組織は、同社創業時からの歴史を持つが、相互交流は2006年に開催された「『Radixの会』総会 食の文化祭」に、「Radicleの会」の配送スタッフ134人が参加した時から始まった。舞台となったのは、TBS系で放送された「3年B組金八先生」のロケ地として有名な「足立区立第二中学校(2005年3月末廃校)」跡。まさにドラマチックな“出会い”の場が用意された。
 しかし、幕を開けてみるとそれは「理解し合えていると思っていたお互いのことがわかっていない、“双方の片想い”」(「Radicleの会」会長市川一紀氏)への“気付き”の場となった。ここから同社の、産地から会員宅までを一本の線で結ぶための本格的な取り組みが始まり、現在は年数回開かれている「若者集会」を中心とした相互交流に注力している。
 一方、生活者と触れ合う“最前線”に立つ、全国12社、約350人の配送スタッフで組織される「Radicleの会」では、生産者の“想い”を生活者に届け、生活者の“声なき声”を拾い上げるために“顧客接点”における教育が重要であることを痛感。独自にさまざまな研修を行うこととなった。

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配送スタッフも田んぼに入る若者集会。この経験が会員との会話で説得力を生む

生産者の“想い”を伝え、生活者の“声なき声”を聞く取り組み

 配送スタッフはそれぞれの配送会社に採用されると、まずは1~3日の座学による研修を受け、らでぃっしゅぼーや社の歴史や宅配事業の仕組みなどについて学ぶ。次に、先輩社員の配送車に同乗してのOJT期間が約6週間も設けられている。単なるルート配送の業務であれば、これほどの期間を費やす必要はない。しかし、同社の配送スタッフが担っているのは単なる配送業務にとどまらず、Webサイトにアクセスできない会員に商品の特長を伝えたり、コンタクトセンターにクレームを言うほどではない小さな不満・疑問を聞き出したりすること。そのために覚えることは多岐にわたっているのだ。なお、以上のプロセスは初期教育第1弾として各配送会社内で実施されている。
 初期教育第2弾として用意されているのが「Radicleの会」が主催する、全国の配送会社を横断する「新人研修」である。キャリア6カ月~1年の新人を集めて行われるこの研修では、商品知識やビジネスマナーの習得は当然として、“同期の絆”を育むことも重視している。全員が同じような体験と不安を抱えており、また、年齢が近いこともあって、すぐに親しくなることができるという。この研修での目立った成果としては、離職率が大きく下がった点を挙げることができる。日常業務では孤独感を感じても、全国では同期の仲間が頑張っていると思うと辛抱できるということのようだ。
 それから少し間をおき、入社後5~10年の業務責任者を対象に行っているのが「ビジネスリーダー研修」だ。各配送会社の所長や部長などの肩書きを持つ、経営層の“右腕”的人材を集め、部下である配送スタッフを導くための研修を行っている。
 なお、本格的な人材教育に取り組んでからまだ間もないこともあり、教育の成果を数値で挙げることは難しいが、積極的な声掛けを必要とする季節限定商品などは毎回20%以上の伸びを示し、コールセンターへのクレームが減少傾向にあることなどを踏まえ、同社では効果が現れ始めていると認識している。
 現時点における人材教育の課題として挙げられるのは、初期教育を終えた配送スタッフへのフォロー研修と、キャリア2~5年の配送スタッフへの研修制度がまだないこと。同社がスタッフへの教育に注力するのは、配送スタッフを会員と触れ合う唯一の接点であり、同社の“顔”として考えているから。同社のイメージする最良の配送スタッフは、マンガの「サザエさん」に出てくる「三河屋さんの御用聞き」の親近感と、高級ホテルのコンシェルジュの気品を併せ持った人物だという。
 同社の扱う商品は、一般的なGMSやSMに比べれば確かに価格が高い。しかし同社では、「高いのではなく真っ当な値段なのです」と語る。前述の若者集会で、生産現場の大変さを体験した配送スタッフは堂々とこれを説明できるようだ。生活者が“安さ”を求めすぎたために、一連の食品表示の偽装問題などを招いたとするならば、説得力のある一言ではないだろうか?


月刊『アイ・エム・プレス』2009年6月号の記事