容量無制限の写真・動画共有SNS

ウノウ(株)「フォト蔵」

デジタル写真・動画をアップロードして保存できる「フォト蔵」。アップロードした写真・動画はアルバム単位で公開範囲を設定でき、それぞれに説明文やタグを付けたり、並べ替えたりすることができる。登録会員数は20万人超。家族写真をアップロードするファミリー層のほか、団塊の世代以上の男性層やブロガーなどの利用も増加している。

写真や動画を共有するSNSサイト

 ウノウ(株)が運営する「フォト蔵」は、写真や動画の共有が行えるSNSサイトである。
 「フォト蔵」がオープンしたのは2005年。当時はデジタルカメラの価格が低下して急速に普及が進み、また、ケータイのカメラ機能が向上したことで、デジタル写真を撮影する人が急増した時期であった。世界に通用するWebサービスの提供を模索していたウノウはこのような状況を背景に、ケースや被写体によって一般に公開されたり、家族や仲間内だけで共有されたりするなど、多様な性格を持つ写真・動画という素材とSNSの相性がよい点に注目して、テーマを写真・動画に特化したSNSを開発し、提供を開始したのである。
 「フォト蔵」の基本的な機能は、デジタル写真・動画をアップロードして保存できること。アップロードした写真・動画は、基本的にインターネット上で公開する「公開アルバム」、“友達”全員に公開する「友達アルバム」のいずれかに保存されるが、さらに、「フォト蔵会員のみに公開する」「選んだ友達に公開する」「公開しない(自分以外は見られない)」アルバムを作成・保存することもできる。つまり、アルバム単位で公開範囲を設定できるわけである。
 アップロードした写真・動画には説明文やタグを付けることもできる。また、アルバムの表紙をどれにするか、アルバム内でどのように並べるかなども自由に設定できるようになっており、まさにWeb上でリアルなアルバムを作成しているかのようだ。
 「フォト蔵」の最大の特徴は、アップロードの合計容量に制限がないこと。月間最大容量は当初1GBだが、アップロードした写真・動画に他の会員からコメントが付いたり、他の会員のお気に入りに追加してもらったりすることによって付与される「フォト蔵ポイント」が40ポイント以上になると3GBにまで拡大される仕組みになっており、気軽にアップロードできる環境が整えられている。

1,200以上のコミュニティが活動中

 「フォト蔵」はオープン型のSNSであり、誰でも無料で会員登録することができる。2009年2月現在の登録会員数は20万人超。家族写真をアップロードするファミリー層などが中心だが、最近では定年退職後に趣味として写真を始めた団塊の世代以上の男性層なども増加している。また、アップロードの合計容量に制限がないため、写真掲載に制限があるブログサービスを利用しているブロガーが、ストレージとして利用するケースも増えているようだ。居住エリアでは首都圏の比率がやや高いものの、ほぼ人口分布に近いかたちで全国に会員が存在する。
 会員の獲得に関しては、ブログパーツの配布などは行ったものの、ほとんどが口コミによるものである。自分がアップロードした写真・動画を見てもらうために、マイページの「友達を誘う」機能などで、友人・知人・親族などを誘うケースが多いようだ。それ以外では、2007年に「フォト蔵」に集まった写真からセレクトしたムック『ZOOMo』を刊行することを企画し、その告知を行ったところ反響が大きく、新たな会員登録・投稿につながったとのことである。
 アップロードされる写真・動画の内容は、家族・友人とのスナップ、旅行記録、風景、子供の運動会の風景など多種多様。「公開アルバム」にアップロードされるのは約4割で、約6割は何らかのかたちで閲覧に制限が設けられている。特に2007年以降では、ケータイのカメラ機能の高画質化が進んだことから、ケータイにより撮影された写真・動画の比率も増加している。アップロードされる写真・動画は1日平均3万点前後。公序良俗・著作権遵守の観点から、「公開しない(自分以外は見られない)」以外の設定のものについてはスタッフが目視で監視を行っているものの、問題があるケース自体が少なく、また、問題がある場合でも他の会員からの通報などがあることから、深刻なトラブルが生じたケースはないとのことである。
 「フォト蔵」では、写真・動画を介したコミュニケーションを活性化するためのコンテンツも数多く用意されている。例えば、マイページでは「友達」を設定することができ、メッセージの交換ができるほか、「友達」がアップデートを行ったり、日記を更新したりすると「最新情報」として報告される。また、撮影対象などをテーマとするコミュニティーを作ることもでき、すでに1,200以上のコミュニティーが形成されている。これらの中には、単に写真・動画を投稿し合うだけでなく、オフ会としてリアルの撮影会を実施している例なども少なくないようだ。そのほか、気に入った写真・動画を登録する機能や、掲示板機能などもある。

収益性の向上が大きなテーマ

 「フォト蔵」は広告型のビジネスモデルで運営されている。主な収益源はバナー広告であり、写真加工ソフトなど写真関連のみならず、生活に密着した日用品全般の広告が掲載されている。
 そのほかでは、「フォト蔵」上で企業とのタイアップによるフォトコンテストが実施されることもある。例えば、新聞社とのタイアップにより、夏休みに子どもが撮影した写真のコンテストを実施するなどの例があるとのことだ。
 なお、現状では増え続ける写真・動画データに対応するためのサーバの拡張などに伴う投資が先行している状態であり、今後、いかに収益性を向上していくかが大きなテーマとなっている。
 そのための施策としては、さまざまな企業とのタイアップが検討されている。例えば、近年ではPC以外の端末からインターネットに接続するケースが増えていることから、これら新たなインターネット接続端末の提供企業とは積極的にタイアップしていく方針であり、すでにデジタルフォトフレームを製造・販売する企業との連携などを実現している。
 また、前出のムック『ZOOMo』の評判が高かったことから、企業のスポンサードにより「フォト蔵」上でフォトコンテストを実施し、そこに集まった素材を出版物として刊行するサービスなども検討している。
 さらに、将来的には有料サービスの提供も視野に入れており、現状は無料で提供されているサービスに、どのような付加価値を追加すれば有料サービス化できるかについて、社内での検討を進めているとのことである。
 そのほか、今後の課題としては、類似サービスとの差別化が挙げられている。
 「フォト蔵」がスタートした当初は、写真共有サイト自体が少なかったが、最近では大手プロバイダーやブログポータルなども類似のサービスの提供を開始している。現状ではこれらに対し、「容量制限なし」という部分である程度の差別化が図れているが、公開性が高いインターネット上でのサービスの宿命として、基本的な機能は同質化しつつある。同社ではこの状況に対し、当面は動作性や安定性などサイトの基本的なパフォーマンスを向上し続けることで対処していく方針である。

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さまざまなシーンでのフォトライフを大容量でサポート。コメントやメッセージで気が付けば知らない人ともつながっている


月刊『アイ・エム・プレス』2009年4月号の記事