眼鏡・コンタクトレンズ選び支援システムにより検討顧客の購入率を向上

(株)一誠堂

眼鏡・コンタクトレンズ・宝飾品・時計の老舗専門店である(株)一誠堂では、2005年に眼鏡・コンタクトレンズ選び支援システム「アクティビジュ」を導入。鏡に内蔵されたカメラで顔を撮影してPCに顔写真を取り込み、さまざまなシミュレーションを行うシステムにより、コンサルティング販売の充実化を図っている。利用顧客からは好評を博しており、検討顧客の購入率を向上させ、平均接客時間も短縮されるなど、大きな効果がもたらされている状況だ。

コンサルティング販売の徹底で多くのファンを獲得

 (株)一誠堂は「おしゃれな街」として人気の高い東京・自由が丘の駅前で75年以上の歴史を誇る眼鏡・コンタクトレンズ・宝飾品・時計の老舗専門店だ。幅広い品揃えや専門性の高いサービスの提供に加えて、本館ビル5階ではイベントホール「ルサロン」を、また近隣では同社の60周年記念に設立した、アール・ヌーヴォー時代のガラス工芸品を収蔵した一誠堂美術館を運営するなど、社会への貢献を意識した諸活動の展開により、地域社会からも高い評価を受けている。
 世界的なブランド品など、高級品中心の品揃えを行っている同社の顧客は、経済的にある程度余裕がある30代後半から70代の層が中心。居住エリアも比較的富裕層が多い東京都目黒区・世田谷区・大田区・品川区、川崎市中原区などが多い。
 同社ではこれらの顧客に対して、「最高の商品と満足」を提供することを目指し、豊富な専門知識を備えたスタッフによって、徹底したコンサルティング販売を実施している。さらにアフターサービスにも力を入れており、例えば眼鏡の購入顧客に対しては、独自に作成したノートタイプの保証書を発行。購入後2週間、3カ月、6カ月、1年、2年、3年という節目に無料の点検・調整サービスや視力検査サービスを提供している。このような姿勢は多くの顧客に歓迎されており、「眼鏡と時計」「時計と宝飾品」のように複数分野にまたがって利用するなど、同社に対するロイヤルティの高い層も数多く存在しているようだ。
 このように顧客本位の営業を展開する同社が、眼鏡・コンタクトレンズの販売において、より高い満足を提供するために導入・活用しているのが、眼鏡・コンタクトレンズ選びの支援システム「アクティビジュ」だ。

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「おしゃれな街」自由が丘駅前の老舗。

手軽に使えるシミュレーション・システム

 従来、眼鏡については、“遠近両用”など複数用途を1本でまかなうことが多かったが、近年では用途・目的別に複数の眼鏡を利用する人も増えてきた。また、実用的な部分だけでなく、ファッション・アイテムとしての注目度も高まっており、デザインにこだわる人も増加している。しかし、特に視力が低く、度数が高いレンズを必要とする人では、レンズの入っていないフレームを試着しても、自分の目で確認できないという問題点が生じていた。
 このような状況に対して同社が2005年に導入したのが、アクティビジュだ。
 アクティビジュは、鏡に内蔵されたカメラで顔を撮影してPCに顔写真を取り込み、その顔写真にフレームを掛けてみたり、カラーコンタクトレンズを入れてみたりといったシミュレーションを行うことで眼鏡・コンタクトレンズ選びを支援するシステム。保存されたシミュレーション結果を、通常使用している眼鏡などを掛けて見ることができるため、視力が低い人でも自分の目で確認することが可能だ。フランスで開発されたシステムであり、日本国内ではセイコーオプティカルプロダクツ(株)が提供を行っている。
 アクティビジュでは、撮影した顔を4枚まで並べることができ、異なる角度からの印象を確認したり、複数のフレームを比較しながら選んだりすることも可能だ。また、欲しいフレームの形にカットしたレンズの厚さを3D画面で見ることもできる。さらに、レンズの厚みによる光の屈折の違いがもたらす目の大きさの違いを表現する機能もあり、視力に応じたレンズを入れた場合のイメージを確認することも可能である。
 そのほか、3秒間の動画を録画する機能や、レンズの色を変更する機能なども備えており、眼鏡・コンタクトレンズ選びを総合的に支援するシステムとなっている。
 操作は比較的簡単であり、PCを日常的に利用している人であれば直感的に操作することができる。同社でもアクティビジュの操作について特別な研修などは行っていないが、販売スタッフのほとんどが操作可能な状況である。
 同社では、1990年ごろから類似のシミュレーション・システムを導入していたが、動作が遅いなどの欠点があり、徐々に活用されなくなっていた。その中で取り引きのある卸売業者からアクティビジュを紹介され、機能面が充実していることに加え、「比較的コンパクトで機械が大げさでなく、店頭においても違和感がないこと」「専用機ではなく、通常のPCを活用するシステムであるため、非使用時はほかの業務にも使え、効率的」などの特徴が、同社に適しているという判断により導入を決めたとのことである。

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「アクティビジュ」では写真4枚を見比べることが可能

最大の導入効果は検討顧客の購入率向上

 コンサルティング販売を基本とする同社では、アクティビジュの利用に関してもセルフサービスではなく、販売スタッフから推奨するかたちとしている。その中でもすべての顧客に利用を勧めるわけではなく、商品選択に迷っている人やデザインなどへのこだわりが強い人などを対象とすることが多い。現状では眼鏡購入顧客の半数程度について利用しているとのことだ。
 システム導入の最大の効果としては、検討顧客の購入率の向上が挙げられる。まさに「百聞は一見にしかず」であり、利用時のイメージを自らの目で確認できることは、購入意志の決定を大きくサポートしているようだ。また、平均接客時間もシステム非利用の場合と比較して20~30%程度短縮化されているとのことであり、販売効率も向上している。
 視力が低く、度数が高いレンズを必要とする人を中心に、利用顧客の満足度も高い。特に異なる角度からの印象を確認したり、複数のフレームを並べて比較したりできることに対する評価が高いようだ。
 同社ではこうした中、アクティビジュの利用について、これまでのところ十分な費用対効果が実現されているものと評価している。
 アクティビジュを活用した販売では、現状、大きな問題点は生じていない。ただし、まれにシステム上の不具合を起こすことがあり、接客上の有力なツールとなっているだけに、さらなる安定性を求めているとのことだ。また、可能であれば解像度のより一層の向上や、例えばモンタージュのように画像の中の眼鏡部分のみを変更できるなどの新機能の追加も期待している。
 同社にとってアクティビジュは、コンサルティング販売を充実させるためのツールであり、販売活動の主役はあくまで販売スタッフだ。今後も、販売スタッフが顧客とのコミュニケーションを通じてニーズを把握し、的確なコンサルティングを行うことにより、より高い顧客満足の実現を図っていく意向であり、そのサポートのためにアクティビジュをはじめとするツール類を活用していく方針である。


月刊『アイ・エム・プレス』2009年3月号の記事