Webサイトの全面リニューアルを機にレコメンデーション機能も強化

(株)セレクトスクエア

数多くの有名セレクトショップが出店する“オンライン・セレクトショップ”「SELECT SQUARE」は、2008年10月にWebサイトの全面リニューアルを実施した。ユーザーインタフェースの改良とともに、出店者の作業フロー簡素化、ログ解析をはじめとする分析機能の強化などを実施。今後のサービス拡充のためのWeb戦略について取材した。

大人向けのファッションビルをインターネット上で展開するイメージでサイトを運営

 2007年9月に総合商社・丸紅(株)のインキュベーション事業をMBO(Management Buy-out)するかたちで設立された(株)セレクトスクエアが運営する「SELECT SQUARE」は、「SHIPS」「BEAMS」「TOMORROWLAND」「united arrows green label relaxing」などをはじめとする、数多くの有名セレクトショップが出店する“オンライン・セレクトショップ”だ。
 同社では、大人向けのファッションビルをインターネット上で展開するイメージでサイトを運営している。その姿勢はファッション感度の高い顧客に支持され、業績は順調に推移しており、2007年度に約13億円であった売上高は、2008年度では25億円前後にまで拡大する見込みだ。また会員数も2008年度中には20万人規模に達することが見込まれており、その60%以上が過去1年以内の購買実績客とアクティブ率も高い。属性的には男女比はほぼ均等、平均年齢は32歳前後という状況で、客単価は春夏では1万3,000円~1万4,000円、秋冬では1万7,000円~1万8,000円前後だ。
 ビジネスモデルは、基本的に商品を預かって販売するという消化仕入れになっており、まさにファッションビルをインターネット上で再現する格好だ。
 現在、出店ショップ数は40以上で、ブランド数にして800以上。いずれも有名セレクトショップやブランドの公式ショップであり、家にいながらにして希少性の高いファッション・アイテムを入手できるECサイトとなっている。
 集客については、リスティング広告やアフィリエイト広告、バナー広告など、インターネット広告がメイン。そして、会員登録をした顧客に対しては、週1回配信のメールマガジンでの新商品案内などを通じて、リピート購入の促進を図っている。

積極的なWebパーソナライズを展開

 「SELECT SQUARE」は2008年10月にWebサイトの全面リニューアルを実施した。リニューアルのキーワードは“Independent & Sustainable”。「少し“先”を見据えながらも、“今”を楽しむことはファッションそのものである」という考えの下、人・社会・地球環境などのつながりが持続するライフスタイルを提唱していく。
 リニューアルの具体的なポイントは、①検索の精度向上・経路拡大、キーワード検索機能やビジュアルサーチ機能の強化などによる「欲しい商品を探しやすい」ユーザーインタフェースへの改良、②一度カートに入れた商品を「あとで買う」機能の追加、③ポイント利用の制限解除、④商品配送先住所の複数登録機能の追加など。そのほか、サイト全体のクリエイティブのトーンも、従来の大人向けの商業施設をイメージしたシックでラグジュアリー感を重視したものから、自然との調和を意識したものに変更し、さらに、バックヤードについても、出店者の作業フローの簡素化、ログ解析をはじめとする分析機能の強化などを図っている。
 また、今回のリニューアルでは、従来のパートナー企業のシステム利用から、独自システムに置き換えたことも大きな変更点と言える。これを機に、今後はユーザーや出店者の動向やニーズなどを基に、フレキシブルにサイトの改良を図っていく方針だ。
 「SELECT SQUARE」では従来からWebパーソナライズに積極的であり、すでに2007年春には、ユーザーがトップページのレイアウトを変更できる仕組みや、お気に入りのショップを5つまで登録できる機能を導入。また各ショップのページに気になる商品をリスト化できる「クローゼット」を用意し、「クローゼット」内でコーディネートのチェックができる機能も提供していた。また、購入履歴のデータマイニングをベースとするレコメンデーションにも積極的に取り組んでおり、今回のリニューアル後も、これらの方向性を持続し、さらに強化していく方針だ。
 なお、同社では、現状のレコメンデーション・システムを過渡期の技術と認識しており、そのロジックについてはコストパフォーマンスの最大化を目指して、試行錯誤を繰り返している状況だ。将来的にそれぞれの顧客について、より広範囲かつ詳細な行動履歴を把握できるようになれば、さらにその精度を高めることが可能であるとも考えており、その実現のために現状にとどまらない、より広範囲なサービスを提供することも視野に入れているとのことである。
 レコメンデーションに対する顧客の拒否反応については、これまでのところ、まったく見られないとのこと。限られた情報をベースとする現在のレコメンデーションのレベルでは、拒否反応を引き起こすまでの精度を実現することは難しいと考えており、当面は特に対策を講じる意向はない。

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2008年10月にリニューアルされたWebサイト画面

新たなベクトルの下で事業展開のスピードアップを図る

 「SELECT SQUARE」はeコマースサイトであり、基本的には、常に継続的に売り上げを拡大していくことを追求している。従って、レコメンデーションにおいても、いかに購入比率やリピート比率を高めて、売り上げ拡大に貢献できるかが、成否の判断基準となっている。もちろん、採算性も重視しており、アイデア先行で過剰な先行投資をすることは避け、投資と回収のバランスを取りながら理想のサイトづくりを進めいている状況だ。なお、同社ではサイトづくりに必要な技術について、自社のビジネス規模から考えて、要素技術の開発までは行わないことを方針としており、既存の技術の組み合わせによる最適化を目指しているとのこと。同社代表取締役の属健太郎氏によれば、「eコマース・システムはある程度成熟した“枯れた”技術であり、想像の範囲内で必要と思われる要素技術は、そのほとんどがすでに存在している」とのことだ。
 今後については、(株)セレクトスクエアの設立から1年を経過し、“Independent & Sustainable”という新たなベクトルも定めたことから、その方向性の下、事業展開のスピードを速めていく意向。これまでは、いわば“手なり”でビジネスを拡大してきたが、これからは多少“アクセル”を踏んで、2010年度には100億円規模の売り上げを実現していく考えだ。その中で、品揃えの拡充やコミュニケーション面でのサービス拡大などに取り組んでいくことで、「ファッションECサイト」にとどまらない、「ライフスタイルチャネル」としてのポジションを確立していく方針である。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年11月号の記事