新製品を紹介する紙DMでさらなる販売促進を図る

(株)ベネッセコーポレーション

教材に、絵本、映像媒体、知育玩具を取り入れ、今や幼児の通信教育の世界では押しも押されもせぬトップを走り続ける(株)ベネッセコーポレーション(以下ベネッセ)。幼児用学習講座「こどもちゃれんじ」の会員数は現在約130万人で、その数は対象年齢の子どもの5人に1人に当たるという。20周年を迎えた今年、2~6歳向けの「こどもちゃれんじ」に「おたんじょうび記念号」が新たに追加された。同社ではこれをフックに、紙DMによる新規顧客獲得に拍車をかけている。

紙でできた教材は紙でPR

 国内でも有数のDMユーザーとして知られるベネッセ。一見して、発送の手間もコストもかかると思われる紙DMだが、「こどもちゃれんじ」では“紙でできた教材の良さは紙で伝えるのがベスト”だという。子どもの教育をいつからどのように始めるかというのは、近年、幼い子どもを持つ親たちにとって大きな関心事になっている。「こどもちゃれんじ」では、紙DMを通じて、店頭などで手にとって見ることができない同社教材の一部を体験してもらうという方法を効果的に活用している。
 紙DMに封入されている教材のサンプルは、年齢によって細かく分かれている。例えば、乳児期はまだ親の関心は身体的な発達に集中しているが、1歳半の健康診断の頃から、洗顔や歯みがき、早寝・早起きなどの生活習慣に移ってくる。この時期に発信される、生活習慣を意識させる紙DMには、高い反応があるという。また、満1歳以前の生後6カ月のコースには、“起き上がりこぼし”などの知育玩具が含まれているが、その玩具を自分の“お友だち”として認識できるようになるのは1歳を過ぎてからである。
 「こどもちゃれんじ」の教材である絵本の一部をサンプルとして抜粋し、人気キャラクター「しましまとらのしまじろう」が生活の中でするべきことを見本として示す。子どもができたら台紙にシールを貼ることで達成感を持たせるなどの教材サンプルは、紙DMならではの機能と言えるだろう。なぜならば、そのサンプルが紙であることで、親と子のコミュニケーション・ツールになる。また、キャラクターを“友だち”と考えられるようになる1歳半前後の子どもとその親たちにとってはその一部を体験できるという点で、紙DMが入会に結び付く率が高いのである。

「おたんじょうび記念号」の目指すもの

 20周年を迎えるのを機に、「こどもちゃれんじ」ではこの4月から「おたんじょうび記念号」の提供を開始する。
 これは誕生月にのみ通常の教材に同梱されるもので、①作家による絵本仕立てのページと親子でそのときの年齢の記録を残すページが合本されたハードカバーの書籍、②お祝いムードを盛り上げるバースデーソング入りのCD、③各年齢に合わせたカードやバッグなどのお祝いアイテムで構成されている。
 同号の狙いは「誕生日をきっかけに命の大切さを意識し、愛する/愛される喜びを親子で共有してもらう」ことだ。同年齢の子どもであれば同じ教材が届くわけだが、記録を残すページについては一人ひとりが作成するもの。そのページを作る過程には親子の絆を再認識できる要素がふんだんに盛り込まれているわけである。“いのち”や“愛”の大切さを表現するには、このような親子での共同作業が何よりも大切。また、教育に携わる企業としてこのようなエモーショナルな面にも気を配ることで、信頼を得るということも視野に入れている。

ピンポイントでDMを発信するために

 今回取り上げた「おたんじょうび記念号」を前面に押し出した紙DMは、ベネッセの乳幼児雑誌の広告やイベントへの参加などを通して、資料請求などを希望した家庭に送付される。DMの構成はレター、メッセージカード、ブローシャー、申し込みはがきなど。その段階で生年別、さらに生年が低い場合は月齢別に異なるクリエイティブを採用している。そのため、紙DMはタイミングをピンポイントで発信する必要がある。前述した健康診断の時期、誕生日のほかに、保育園・幼稚園の入園時期などもそれにあたるわけだ。
 親にとって子どもには、同年齢の子どもと横並びでいてほしい部分と、年齢にかかわらず個人の成長過程を見極めたい部分が共存している。とくに就園以前の乳幼児の家庭で、生活必需品とはいえない通信教育の価値を理解してもらうためには、その子どもの発達に合ったカリキュラムの存在を知ってもらうことが必要だ。

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「2さいのおたんじょうび記念号」DM 左から、封筒、メッセージカード、オファー(体験用シール)、ブローシャー(パンフレット)2点、申し込みはがき

会員サービスにはWebを活用

 教材そのもののプロモーションは紙DMだが、ベネッセでは、“入会前の顧客に向けての情報発信”と“会員サービス”にWebを活用している。Web上に一般的な子育て情報を掲載すると同時に、悩みを受け止める場を設け、しつけなどの生活習慣上の問題解決の糸口として「こどもちゃれんじ」の受講を促しているのだ。例えば、子どもに人気の高い“しまじろう”と一緒に早寝・早起きや歯みがきをするように促す。そしてWebから資料請求をすれば、パンフレットや申込用紙のほかに、「こどもちゃれんじ」の教材サンプルや親に向けての子育て情報誌が送られてくるといった具合だ。
 子どものやる気を引き出す材料と親の欲しいものがセットされていることで、Webからの資料請求が入会につながることもある。そういった意味では、Webも「こどもちゃれんじ」の入会促進を担っているといえるだろう。
 このほか、会員に対しては、同年代の子どもをもつ親同士が交流できるような、横つながりのサイトの新設を模索中である。
 「こどもちゃれんじ」では、さらに、就学以前の子どもが保育園児か幼稚園児かで教材を変えることも検討している。すなわち、親と過ごす時間の短い保育園児か、いつでも親が面倒を見られる幼稚園児かで教材の活用方法が違ってくるためである。
 これが完成した暁には、年齢のほかにも子どもたちの個性に配慮してターゲットをセグメンテーションし、DMの構成をそれに合わせて変えていくことも視野に入れている。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年4月号の記事