約6年をかけてお客様の需要を見極めネットスーパーへ本格的に参入

(株)イトーヨーカ堂

(株)イトーヨーカ堂では、お客様の買い物をサポートするサービスを各種取り揃えている。中でも、2001年3月から一部店舗で実験を続けてきたネットスーパー事業については、2008年春までに80店舗に拡大する計画を推進中。リアル店舗を通じて提供するサービスのみならず、ネットを活用したeコマース事業のさらなる深耕を図ることで、多様化するお客様のライフスタイルに応えていく意向だ。

2008年春までにネットスーパーを80店舗に拡大する計画

(株)セブン&アイ・ホールディングス傘下の総合スーパー、(株)イトーヨーカ堂。同社は2001年から一部店舗で実験を続けてきたお買い物代行サービス「イトーヨーカドー ネットスーパー」を、2008年春までに80店舗に拡大する計画だ。
 そもそも同社がネットスーパー事業を手掛けた理由は、高齢化によって来店客が減少すると予測されること、団塊世代のECに対する需要が高まっていることなどが挙げられる。こうした中で2001年3月から、葛西店(江戸川区東葛西)で実験を開始した。
 その後、2005年8月に2店目となる大宮宮原店(さいたま市北区)で同事業をスタート。2007年5月までに10店舗での開始に踏み切った。ネットスーパーへの本格参入に向けて、お客様の需要を見極めながら、約6年をかけてお客様にとって便利な仕組みを築いてきたのだ。一方、システム面の整備も進めてきた。当初、お客様からの注文は、各店のパソコンで処理していたが、2007年5月中旬から複数店舗の注文を地域ごとにまとめて処理できるITシステムを本格的に導入。以降は、1カ月に10店舗から15店舗のペースで対象店を拡大し、約半年で77店舗を数えるまでになった。
 ネットスーパーの利用客は、ネット初心者からネットのヘビーユーザーまで幅広く、「一度、店頭に行ったことがあるから(ネットスーパーを)使ってみよう」というお客様がほとんど。実際問題、ネットスーパーの実施店舗拡大に伴い、普段は近くのスーパーや生協などの宅配サービスを利用し、週末だけ「イトーヨーカドー」に来店していたお客様の平日利用が急速に伸びてきた。また、商品やセキュリティ面についての安心感・信頼感から同社のネットスーパーを利用するようになったお客様も多く見られるという。

取扱商品は約3万点 1日2回の商品入れ替えを実施

 現在、同社のネットスーパーは、首都圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)と中京(愛知)・関西(奈良、大阪、兵庫)地区で展開されている。個店ごとの商圏は3~5kmと異なるが、ネットスーパーではそれ以外でも各店の配達可能エリアすべてをカバー。登録時に会員が指定した届け先ごとに、店舗を振り分ける仕組みになっている。
 取扱商品は、店頭で販売している食料品や日用品、新聞折込みチラシ掲載品(一部商品除く)など約3万点。商品の入れ替えや価格の変更は1日2回、夕方16~17時、21時30分~22時の時間帯で行っており、この時間帯はネットスーパー自体の“閉店時間”となっている。ちなみに、2007年12月17日までは、21時30分~22時の時間帯は0時~0時30分だったが、12月18日から翌日配布される新聞折込みチラシの商品を前日に閲覧し、注文できる仕組みに変更した。Webサイト上でのチラシの掲載方法にはデジタルとPDFの2種類がある。
 価格については、特売商品をはじめすべての商品を店舗と同様に設定している。配達料金は、1回につき315円(税込み)。なお、購入金額が店舗ごとに決められた金額を上回る場合は、配達料金が無料となるキャンペーンを適宜実施している。
 注文は、“閉店時間”を除く1日22時間30分受け付けており、5つの注文締切時間と5つの配達時間帯を用意。時間帯により、受注後、最短3時間で配達している。翌日分の注文や、配達時間帯の指定も可能だ(図表1)。

【図表1】注文時間帯と配達時間
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 出荷に当たっては、野菜や魚、肉など売り場ごとの担当者が店頭に並んでいる商品の中から選んでピッキングから梱包までを責任をもって担当。割れやすい卵などは緩衝材で保護し、生ものや冷凍食品はきちんと保冷バックで温度を保ちながら、最良の状態で管理し、業務委託先の配送会社に配達を依頼する。また、商品のピッキング・梱包作業は、注文直後ではなく、出荷時間に合わせて行う仕組み。可能な限り新鮮なものをお届けしようというこの取り組みは、お客様から好評を博している。
 代金決済方法としては、クレジットカード決済と代金引換の2通りを用意。サービス開始以前は、代金引換が大半を占めることを予想していたが、現状はクレジットカード利用者が6割を占めている。

イトーヨーカ堂2 イトーヨーカ堂 1

「イトーヨーカドーネットスーパー」。配達先の住所を入力すると、配達エリアにある店舗のネットスーパーに振り分けられる仕組みになっている

エリア拡大とともに会員数も半年間で約13万人に増大

 同社のネットスーパー対象エリアの世帯数は約1,000万世帯。2007年5月時点では2万人弱だった会員数はエリア拡大とともに増大、2007年12月現在、約15万人を数えている。会員にはマンション居住者が多く、乳幼児を抱える世帯や働く女性など、買い物に時間を割くことが難しい人たちの利用が大多数を占める。また、親と離れて住んでいる子どもが親の居住地を配達エリアとするネットスーパーに代理注文をするといったケースも急増しているという。会員のほとんどは、「週末は店舗で、平日はネットスーパーで」といった具合に2つのチャネルをライフスタイルに応じて使い分けているという。
 1日の受注件数は、1店舗当たり70件。中には100件以上に及ぶ店舗もある。会員の7割近くが週1~3回以上利用しており、2日に1回利用する会員も少なくないなど、リピート率はかなり高い。利用が増加するのは、新聞折込みチラシの配布後、雨の日など。客単価は6,000円前後で、食品に限って言えば店舗の倍に及ぶという。
 会員の獲得手段は店頭や週1回配布している新聞折込みチラシでの告知。最近では、主婦仲間やブログの書き込みによる口コミが新規顧客獲得につながるケースが増加している。
 同社では、ネットスーパーの利便性の向上に注力しており、2007年12月から「ネットでクッキングをサポート 1クリックで献立材料をまとめ買い!」というサービスを開始。レシピ機能とともに、毎日の献立に悩んでいる人や買い物の時間を割くことができない人をターゲットに、商品を一括購入できる仕組みを競合他社に先駆けて導入した。
 今後、同社では、新店を中心にネットスーパーを併設していくほか、サイト上からスピーディーに購入できる仕組みづくりやお客様の購買意欲をかき立てる提案型のサイト作りに取り組んでいく意向だ。レシピ機能の充実のほか、店頭との連動を図りながら、店舗同様の買い物経験を提供することで、ネット会員の増大を目指していく。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年2月号の記事