常に新鮮な売り場づくりを目指すことでPCによるネット通販を上回るまでに成長

(株)ネットプライス

2000年3月、(株)ネットプライスでは、商品の購入申込者が集まれば集まるほど、価格が下がり、普段よりおトクな価格で購入できるインターネット上での販売モデル「ギャザリング」(共同購入)を日本でいち早くスタート。また、2000年9月には、他社に先駆けて、携帯電話を使ったケータイ通販市場への参入も果たした。現在、同社の売上高に占めるケータイ通販は約6割を越えるまでに成長している。

ギャザリングシステムによる「ちびギャザ」事業を展開

 (株)ネットプライスは、2000年9月、当時、普及期にあった(株)NTTドコモのiモード上でケータイ通販サイト「ちびギャザ」の展開を開始した、ケータイ通販市場の先駆的存在だ。2000年3月に事業をスタートした時は、PCサイト「ネットプライス」経由の受注が中心であったが、現在ではケータイ通販での受注がPC経由を上回る状況となっている。
 なお、同社は2007年2月に持株会社制に移行。現在では持株会社である(株)ネットプライスドットコムの下、ドロップシッピング事業の(株)もしも、化粧品企画販売事業の(株)シアン、インターネットオークション関連事業の(株)デファクトスタンダード、海外事業関連EC事業の(株)ショップエアラインなどのグループ企業と連携して事業を展開している。
 「ちびギャザ」の最大の特色は、PCサイト「ネットプライス」同様、独自の「ギャザリングシステム」を採用していること。このシステムでは、原則として1週間(火曜日13時から翌週火曜日13時まで)の販売期間中における商品の購入申し込み数量に応じて、販売価格を通常3~4段階に設定。申し込み数量が設定数量に達した場合には販売価格が値下がりする。限定された販売期間における1商品当たりの受注件数をより多く集めることで、仕入先に対する価格交渉力を確保する。それにより、仕入れ価格を下げ、さらに受注発注で在庫リスクを軽減化し、高いコストパフォーマンスを実現している点が特徴的だ。
 2007年10月現在、「ちびギャザ」の登録会員数は約100万人。そのうちの約90%は25~40歳を中心とした女性である。一方で、男性向け商品を揃えた「オトコのギャザ」コーナーを設けるなど男性向け商品の拡充も図っており、同コーナーのシェアが売上高ベースで12~13%を占めるなど、一定の成果を上げている。

常に新鮮な商品を調達することにより魅力ある売り場を実現

 「ちびギャザ」の取扱商品は週500~600アイテム前後。その大半を毎週、つまり年間50回以上入れ替えており、月間の取扱商品は1,500~2,000アイテムに及ぶ。商品ジャンルは、ファッション、美容・健康商品、生活雑貨・食品などを中心に非常に幅広い。それぞれ得意の商品ジャンルを持つバイヤーチームが、日々パートナー企業(仕入先)と商談を行い、常に新鮮な商品を調達することにより、魅力ある売り場づくりを図っている。なお、商品の更新は原則として週1回火曜日に行っているが、特に魅力的な商品が入手できた際には、「ゲリラギャザ」と称して、火曜日から翌火曜日の販売期間の途中であっても、お客様に提供している。
 価格帯については底値(販売数量が最高レベルに達した場合の価格)で平均約5,000円。底値2,980円、3,980円の商品から、7,000~8,000円前後の商品までさまざまな価格の商品の充実を図っている。ちなみに、それ以上の高額商品も取り扱っており、100万円以上ものブランドバッグを販売することもあるとのことだ。客単価については、1万円をやや超える程度となっている。
 なお、配送については、販売期間終了後、同社のセンターに各パートナー企業から発注商品が納品され、全国のお客様へ発送する体制がとられている。また、代金回収については代引きとクレジットカード決済を可能としており、現状では、ほぼ半数ずつの利用となっている。

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ケータイでの検索エンジンの利用拡大に伴いSEOにも注力

 以前、ケータイ通販実施企業が少なかった黎明期では、勝手サイトの広告メールを積極的に利用し、会員獲得で高い効果を上げていたが、近年ではその費用対効果は低下傾向にある。同社では、新規顧客の獲得施策として、ケータイサイトでも検索エンジンの利用が拡大しつつあることから、SEO(検索エンジン最適化)への取り組みを始めている。そのほかでは、既存顧客が友人や家族などに「ちびギャザ」やその取扱商品を紹介する「すすめーる」機能やアフィリエイト機能「みんなのアフィリエイト」も有効に機能しているようだ。また、他社、特に雑誌・TV・ラジオ等のメディア企業など外部メディアとの提携も事業スタート時から積極展開している。これは、いわば「ちびギャザ」事業のOEM提供であり、同社が商品とギャザリングサイトを提供し、提携先企業が自社会員向けのサービスとして集客を行うというもの。地方大手ネットメディアやTV局、大手出版社などが提携先となるケースが多く、これら提携先の企業イメージの高さがケータイ通販への抵抗感を低減している。「ちびギャザ」の自社ユーザーに加え、ケータイ通販全体としてのユーザー層拡大という効果もあるようだ。
 一方、リピートオーダー促進策の中心はメールマガジンだ。現在、商品を更新する火曜日と、木・土曜日の週3回、全会員を対象に配信しているほか、希望者には商品ジャンルごとのメールマガジンも随時配信している。そのほか、お得意様を対象とするカタログ冊子の送付なども実施。また、2005年1月には購入額100円ごとに1ポイントが付与される「とくポイント」制度も導入した。これらの施策により、初回購入顧客がその後半年以内に再購入を行う比率は50%を超えている。

“人が集まる”という特性を活かし、新しい商品・サービスの創造につなげる

 いち早くケータイ通販市場に参入した同社は、これまでケータイ画面がモノクロであった時代から培ったケータイ通販独特の商品訴求ノウハウなどを武器に市場をリードしてきた。近年では参入企業が増加し、企業間競争が激化してきたことから、さらなる差別化への取り組みを積極的に展開している。その中心に据えられているのが、「ギャザリングの再定義」だ。
 同社が運営するギャザリングシステムでは従来、“共同購入により人気のある商品をより低価格で提供すること”がコンセプトの軸となっていた。将来的にはこれを“人が集まることにより新しい商品やサービスを作る”=“人が集まることによる付加価値創造という新しいECスタイル”、という段階にまで昇華することを目指している。
 これまでも顧客から寄せられる多数の声をパートナー企業に伝え、商品を改良するなどの動きは恒常的に行ってきたが、今後はこれを、同社と顧客・パートナー企業が一体となったコラボレーションスタイルに発展させていく意向だ。
 また、再定義された「ギャザリング」が強力に進んでゆくためには、「ちびギャザ」がこれまで以上に話題となり、常に人が集まっている状態が必要である。サイト(商品)更新回数のますますの増加や、さまざまなコラボレーション、物販以外のコンテンツ充実など、新しい取り組みを次々と打ち出す方針である。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年11月号の記事