在宅オペレータを積極的に活用しプロフィットセンター化を図る

(株)アクスイリュージョン

鍵・水道・ガストラブル対応などの生活関連サービスを24時間体制で受け付けている(株)アクスイリュージョン。同社では、売り上げ増大を狙いコールセンターを設置したが、その狙いとは逆に売り上げは減少傾向にあった。そこで、子育てにともない離職している保険営業経験者など営業スキルの高い人材を確保するため、在宅コールセンターの構築を目指した。現在、一時期減少していた受注件数も増加の兆しを見せている。

導入・運用のコストを抑えるためにASPサービスを活用

 鍵・水道・ガストラブル対応などの生活関連サービスや、中古車売買、自動車修理の仲介事業を手掛ける(株)アクスイリュージョン。同社の主力サービスである「マルチ救急24」では、防犯用の鍵、防犯ガラス施工、水漏れ・トイレの詰まり対応、パソコン設定、ベビーシッターなど、生活上のあらゆるトラブル救助サービスを24時間体制で受け付けているほか、「中古車情報館」では、中古車の個人売買の仲介や自動車修理を、「チョイスQQ24」では法人向けの会員サービスを提供している。
 いずれもコールセンターを営業窓口に据え、加盟店を通じたサービスを提供することで千葉、東京、神奈川を中心に全国に展開中。営業は、自動車情報誌などにフリーダイヤルを大きく表示した広告を掲載し、コールセンターにて入電を受け付ける方式をとっている。
 コールセンターの構築に当たっては(株)ビッツテージのASPサービス「keepa」を採用。keepaは、スキルベースルーティングやCTI、通話録音、コンタクト管理、レポーティングなど、コンタクトセンターに必要な基本機能を盛り込んだサービスであり、インターネット環境と電話回線さえあれば、簡単に、どこでもコールセンターを構築することが可能だ。
 アクスイリュージョンでは、初期・運用の両面からコストが安く済むことから、ASP形式のkeepaの導入を決定。在宅オペレータを活用したコールセンターを2007年2月に開設した。これまでうまく機能していなかった同社のコールセンターは、導入直後からアクティブなプロフィットセンターとして生まれ変わり、効果はてき面に現れているという。

在宅オペレータを活用したコールセンターの構想を実現

 現在のビジネスモデルにたどり着くまでには、紆余曲折があった。1998年に中古車売買事業からスタートした同社は、自動車の修理、鍵、水道・ガラスなどのトラブル対応という順に事業領域を拡大。当初は、千葉県内にあった同社の自動車販売店にて、スタッフが中古車販売の営業と兼務するかたちで、すべてのトラブル救助サービスの受注に対応していた。
 同社では、スタッフが業務を兼務しながらも、順調にトラブル救助サービスの売り上げを伸ばしてきたことから、専従のスタッフを置くことでより一層の売り上げ拡大を狙おうと、3年後の2001年にコールセンターを開設。自動車関連事業を従来からの営業スタッフに担当させる一方、生活関連事業にはコールセンターで対応することにした。
 しかし、このように担当組織を分けたにもかかわらず、結果的には期待した成果は上がらず、売り上げの低下を招いてしまった。同社ではこの理由を、これまでは自動車販売で培ってきた営業力のあるスタッフが、トラブルを抱えた顧客のニーズを汲み取りながらトラブル救助サービスの受注業務を行っていたところを、単なる注文受付の経験しかないオペレータが入電対応を行うようになったために営業力が低下し、受注の機会損失を招いたと分析。そこで、オペレータのやる気を促すために報酬を時給制から歩合制に変えた。これに伴い一時的には売り上げが向上したものの長くは続かず、オペレータが次々に辞めていくという悪循環に陥ったことから、1年後には再び時給制に戻すことになった。当時のオペレータは3人体制で、1日15件程度を受け付けていたという。
 2003年にはサービス対象地域の拡大に伴い、オペレータ数を増やすことになった。しかしながら、営業スキルの高いオペレータの確保や定着が難しい上に、受注件数も思いのほか伸び悩んだ。2005年には400~500件/月あった受注件数も、2006年に入ってからは250~300件/月に減少。サービスの対象地域を1都3県に絞り、事業を縮小することになった。さらにコスト面では、社内にコールセンターを設置したことで、人件費がかさんでもいた。
 同社では、この頃から在宅オペレータを活用したコールセンターの構想を練り始めていた。それは、現在子育て中の保険営業経験者など、営業スキルのある優秀な人材が離職していると考えたからだ。当初は、在宅ワークの可能性を検討しても、コストに見合うコールセンターの構築方法がなかなか見当たらずにいたが、Keepaに出会ったことで課題が解決。現在は初期導入コスト50万円のほか、運用コストは12万円/月(5席まで)で済んでいるという。さらに、直営店と加盟店の救助スタッフのスケジュール管理を行うシステムを自社開発。入電のあった時点で、在宅オペレータがお客様のニーズに合った適切な店舗およびスタッフを検索し、振り分ける仕組みを構築した。こうして、2007年2月に在宅コールセンターを開設。現在では、1日に70件ペースでの入電を受け付けている。

受注率20~30%を誇る在宅オペレータの存在

 在宅コールセンターを導入してからは、オペレータ5名体制で運営している。同社では、個々のオペレータのスキルや待機時間によって入電した際の優先順位を付けるスキルベースルーティングを利用している。新人オペレータの起用に当たっては、1日の研修とシステムのセットアップを行った上で、マニュアルを配布している。これまで1~3カ月で辞めるオペレータが多かったが、在宅になってからは定着率も高く、これまでのところは離職者もいない。在宅にしたことでの唯一のデメリットは生活音が生じることであるが、現在のところお客様からのクレームもなく、受注減を招くような影響は出ていないという。
 オペレータの報酬は、在宅コールセンターの構築に合わせて再び歩合制を導入。受注額と問い合わせ件数(受注に至らない対応件数)で決まる。入電件数に対する受注率は20~30%くらい。効率の良いオペレータで時給(19時~24時の5時間)にして850円程度だ。受注率が10%未満の場合には雇用契約を見直す規定になっているが、在宅になって以降、対象者は出ていない。入電のあった時のみの在宅ワークなので、同社にとってはオペレータの稼働率向上につながる一方、オペレータからも自分の時間を有効に使えると好評を博している。
 同社のトラブル救助サービスは24時間受付であるが、現在のところ深夜の対応についてはエージェンシーに業務委託している。しかし、在宅オペレータのほうが受注率は高く、対応品質も良いことから、深夜対応が可能な在宅オペレータの確保を検討しているという。品質管理については、モニタリングと録音のチェックを同社社長自らが行っているが、将来的にはこの業務についても専用の在宅オペレータを起用する予定だ。また、外部のエージェンシーに委託してカスタマーセンターを設置する予定で、クレーム対応およびクレームの吸い上げを積極的に行い、さらなる対応品質の向上に努めていきたいとしている。
 今後の展望としては、1日に200~300件ペースの入電を目標とし、在宅オペレータ数も30~40人に増やしていきたいとしている。将来的には、在宅ワークのコールセンターとして独立させ、同社の新たな事業の柱としていく計画だ。
 また、在宅ワークの場合、同僚の姿が見えないため、オペレータ一人ひとりのモチベーションを高めるための働きかけも欠かせない。そのためには、入電数に見合った報酬の基準や、平均と比較してどの位置にいるかなどをオペレータにフィードバックする仕組みなどをこれまで以上に整備していくことが必要だ。そこで同社では、社長自らが先頭に立って、詳細なオペレータの評価基準づくりに取り組んでいる最中である。
 新しい雇用形態である在宅ワークは、大手企業での導入が始まったことからもわかるように、今後普及していくことが予想される。同社は、ASPサービスを活用して、このワークスタイルを積極的に推進し、コールセンターを運営していく構えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年6月号の記事