ロイヤルティの高い組合員 新規加入促進にSNS、ブログを活用

パルシステム生活協同組合連合会

「くらしの課題解決」をモットーに、食の安全やライフステージ別のカタログ展開など、独自の取り組みを見せる生協のパルシステム。乳幼児のいる家庭を対象に、ブログやアフィリエイトを駆使してネット上での口コミを推進。今後は組合員と一般生活者の双方が利用可能な公式ブログを立ち上げ、ますます口コミを活性化させようとしている。

インターネットは生協と組合員を結ぶコミュニケーション・ツール

 パルシステム生活協同組合連合会(以下、パルシステム)は、首都圏を中心とした1都7県にある10の地域生協から構成される連合組織であり、加盟している会員生協から業務委託を受けて事業運営を行っている。事業の基盤には「くらしの課題解決」という考え方があり、食品の安全性を最重要視した独自の商品政策・基準により事業を展開するほか、ライフステージ別に組合員のくらしに役立つ3種類のカタログを用意、全国の生協に先駆けて“個人宅配”を行うなど、独自の取り組みを展開。2007年1月時点のパルシステム登録組合員数は87万世帯に上る。実際に利用している組合員の約35%に当たる21万世帯超がインターネットの利用登録を行い、約10万人が毎週生協を利用している。
 同連合会のインターネット事業を手掛けるのは、グループ会社の(株)コープネクストだ。インターネットを介した注文は、OCRや電話に比べて客単価が約7%高く、2006年度の事業高は全体の20%に当たる320億円規模。インターネット事業を組合員とパルシステムを結ぶコミュニケーション・ツールとして位置付けて良好な関係を構築し、ひいては利用高の向上を図るCRM施策に取り組んでいる。また、生協自体が「古い」というイメージを持たれがちであることから、若年層に対して生協のイメージを向上させるためにも、インターネット事業を積極展開している。
 そもそもパルシステムの利用は組合に加入することが前提条件であるが、ひとたび組合員になるとリピート率が高く、またロイヤルティも高いという特徴がある。従って、最大のテーマは「いかにして組合員になっていただくか」ということ。そこで、新規加入促進を目的に、ネット活用によるさまざまな口コミ展開をスタートさせた。

乳幼児のいる家庭では20%がブロガー 組合員のブログで商品紹介を促進

 ブログの活用を開始したのは2006年6月のこと。インターネットの利用登録をした組合員向けに、公式サイト内に「コミュニケーションボード」というコーナーを開設し、新商品を中心に紹介して欲しい商品を週替わりで提示。組合員が、その商品を購入して試食の様子を自身のブログに掲載し、コミュニケーションボードに報告を書き込むと、インセンティブとして商品代金がポイント還元されるという仕組みだ。さらに、掲載記事の一部をパルシステムのメルマガやコミュニケーションボード上で紹介する特典もついているため、組合員にとっても自身のブログの読者を増やすチャンスとなる。
 掲載してもらう記事の条件は次の4つ。①パルシステムから購入したことが書かれていること、②商品名が書かれていること、③商品・調理・試食の様子などの画像が掲載されていること、④パルシステムへのリンクがあること、である。
 現在、「ブログでパル商品紹介」に参加しているブログ数は1週間に50件程度。口コミ効果を狙うにはまだまだ少ない数字なので、週に1,000件、月に1万件の利用を目標にし、1人でも多くの組合員が参加するよう、さまざまな手段を講じている。1年前に行ったオンラインモニターアンケートによると、乳幼児のいる家庭向けのカタログ「YUMYUM」の利用者のうち、現役のブロガーは20%、過去に経験がある人と今後ブログをやりたいという人を合わせると、実に50%という結果が出ている。組合員のインターネット利用登録者が20万世帯あることを鑑みると、この比率はまだまだ拡大する余地がある。
 商品紹介以外にも、パルシステムのTVCMを組合員のブログ上で紹介してもらう、というキャンペーンを展開中である。具体的には、TVCMの画像・動画をブログに貼り付けるか、指定の画像に自分で考えたセリフを加えてブログで紹介するというもの。掲載すると200ポイントが付与されるほか、ブログをコミュニケーションボード上で紹介してもらえる特典もついている。キャンペーンを開始して間もないが、140件の応募が集まり、商品紹介より反響が良いとのことだ。

パルシステム

「ブログでパル商品紹介」の結果は組合員以外も見ることができる

資料請求がゴールのアフィリエイト イメージキャラクターの認知度UPを狙ったSNS

 アフィリエイトについては2003年から開始しており、大手アフィリエイト・サービス会社を中心に数社と提携している。内容は、資料請求を1件獲得するごとに1,000円が報酬として支払われるというもの。個人ブロガーのうち、紹介用の専用ページを作るなど、工夫を凝らしている人もおり、最も多い人で月に60件ほどを獲得しているそうだ。アフィリエイトは、個人より法人での活用が活発であり、有力な会員制サイトでバナーを貼るなどの展開が見られるとのこと。
 SNSについては、mixi上で、パルシステムのイメージキャラクターである牛の「こんせんくん」を公式アカウントのメンバーとして登録。2006年11月にスタートしたばかりであるが、1,000人を超える“マイミクシィー”を集めた。この展開については、あくまでもブランディングの一貫として「こんせんくん」の認知を広げることを目的としているため、生協色を出していない。毎日、愛らしいコメントを書き込むことにより、ファンを楽しませるという。
 そのほかにも、mixi上には自発的に立ち上がったパルシステムのコミュニティがある。中には会員数3,000人を超える大型コミュニティもあり、会員同士がパルシステムの商品の利用方法などについて、自由に語り合っているとのことだ。
 コミュニティサイトへの取り組みは、今回が初めてではない。実は、2000年から2003年にかけて自社サイト上で掲示板を活用したコミュニティサイトを運営していたのだ。当時は、ブログが普及する前ということもあり、ネット上でのマナーが浸透しておらず、サイト上で会員同士のトラブルが絶えなかったために閉鎖したという経緯がある。パルシステムではこのとき、企業によるコミュニティ運営の難しさを知ることとなった。現在ではこの教訓を踏まえ、個人のブログを活用した、自発的な口コミ展開に注力している。

新規獲得を狙ってオープン型の公式ブログを開設予定

 先にも述べたが、現在の課題は、ブログを利用している組合員を取り込めていないことだ。アフィリエイトについても同様である。そのために、今後は組合員に対して各施策への参加を積極的に呼びかけていく予定だ。
 この春には、パルシステムの公式ブログを開設する。まずは、現在ネット登録者の多い乳幼児のいる家庭(YUMYUM読者)を主なターゲットとし、関心の高い「食育」や「手作り味噌・梅干」などのテーマを取り上げていきたいとしている。このブログは自社サイト外で立ち上げ、組合員だけではなく一般生活者の参加も募ることで、双方の交流につなげようとしている。そして、自発的な口コミを発生させ、新規加入促進につなげるほか、参加者にとっても自身のブログを公開する格好の場にしていく構えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年3月号の記事