セグメント情報を組み合わせ高い費用対効果を実現

(株)オーエムシーカード

(株)オーエムシーカードでは、利用代金明細書を活用した情報提供を積極的に展開。マーケット・セグメンテーションをきめ細かく行い、独自の分析により運用値で80万通りの組み合わせを実現。One to Oneのメディアによる適切な情報提供が、レスポンス率の向上に寄与している。

利用代金明細書を活用し会員に最適な“バリュー”を提供

 現在、会員数は約840万人を数え、2006年2月時点でのカード利用率は65.4%と業界最高水準を誇る(株)オーエムシーカード。同社は、「カスタマー・バリュー・チェーン(CVC)」の展開により、会員一人ひとりのライフステージに合わせて生涯にわたり暮らしをサポートすることを企業理念としている。また、一方で、他社との戦略的な提携を積極的に展開し、幅広いCVC商品・サービス群を用意。現在、アライアンス企業は約250社を数える。
 同社は、B to B to Cの中間のBとして、アライアンス企業と会員とのメリットの橋渡し役を担っている。つまり、同社からの情報提供というスタイルを保ちつつ、会員へアライアンス企業の商品・サービス情報を届けているのだ。会員にとっては、自分の興味のある分野の情報が届き、アライアンス企業にとっては、よりターゲットされた見込客へアプローチすることが可能と言えるだろう。
 CVC商品・サービスの案内には、「カードご利用代金明細書」(以下、利用代金明細書)、会員限定のインターネットサイト「くらし快適.net」、会員情報誌「OMC NEWS」の3つのチャネルを活用している。中でも、毎月約300万通を郵送している利用代金明細書は、定期的な情報提供を通じて顧客との関係強化を図るコミュニケーション・ツールとして、重要な位置付けを担っている。
 利用代金明細書には、個々の会員の利用金額とポイント獲得数を明記するとともに、「パーソナルメッセージ」というスペースを設け、CVC商品・サービスの案内をはじめとするさまざまな情報を発信している。目的は、会員の利用シーンを活性化すること。同社CVC推進部では、掲載内容の一部についてさまざまなアライアンス企業と調整の上、どの会員にどのメッセージを提供するかを決定している。
 そもそも利用代金明細書は、前月にカードを利用した会員に必ず郵送するものであり、言わば「正式な請求書」という性格を持つ。一般のDMと比べて開封率が高く、かつ一定期間保管されるなど、ほかのプロモーション・メディアとは一線を画した独自の媒体となっている。
 さらに、顧客の購買履歴などを分析し、適した情報を適した顧客だけに提供することができるため、アライアンス先からは投資対効果が高いと好評。また、コストの面でも、通常のDMを発送する際には郵券代と製作コストが発生するが、利用代金明細書への掲載については1通何円という契約であり、郵券代を考える必要がない。

7カ所をバリアブル・プリンティング 同一の組み合わせはわずか3~5人

 マーケット・セグメンテーションの項目は、カードへの入会申込時に記入した属性区分が25項目、カード利用により蓄積される購買履歴などの利用区分が34項目、ISPの加入有無などのネット関連項目が2項目、保険会社や加入商品などの保険関連項目が6項目、特別区分が2項目。計69項目と非常に細かい。
 同社では、このカード会員情報をデータマイニング用データに置き換え、コンテンツやメッセージをデータウエアハウス上で統合する。セグメントの方法は、デモグラフィック属性に加え、利用状況などから複数の軸をクロスして決定している。
 例えば、通信関連の情報であれば、年齢、住まい、利用属性(心理変数)を想定しながら、インターネット決済の経験がある会員を抽出したり、コンテンツ商品関連の情報であれば、テーマパークに行ったり映画を観る頻度の高い層を抽出する。また通販であれば、通販の利用経験がある層を抽出するといった具合だ。
 こうしてセグメント情報を取り出して、個別の組み合わせを選択し、パーソナル・メッセージを、バリアブルプリンティングにより利用代金明細書に印字。
 メッセージの内容は、割引クーポンを印字した店舗への送客であったり、フリーダイヤルを大きく表示した資料請求の窓口案内であったり、二次元コードを使ったケータイECサイトへの誘導であったりと実にさまざまだ。
 バリアブルなメッセージ欄は、表面のモノクロ3カ所と、裏面のカラー4カ所の計7カ所(資料1)。2005年から裏面がカラーで印刷できるようになった。

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【資料1】利用代金明細書の表面(写真左)・裏面(写真左)サンプル。A3サイズの表面3カ所、裏面4カ所のスペースにバリアブルプリンティングを行う。

 掲載内容の企画は、毎月700ほどが上がっているという。理屈で言えば無限大の組み合わせが可能だが、運用値は約80万通りで、毎月300万通のうち、同一の組み合わせでの掲載はわずか3~5人であるという。

お客様のニーズを知り価値ある媒体に

 こうした広告出稿には、定量的評価のための実績出力システム「MARKS(Marketing Action, Response watch & Knowledge accumulation System)」を活用している。
 成功事例のひとつとして、次の住宅関連の広告がある。居住エリア、年収、居住区分(分譲/賃貸)、戸建/マンション、居住年数、名義などの項目をクロスさせて見込み度の高いターゲットを抽出し、利用代金明細書の裏面の特定スペースに「リフォーム」に関する資料請求を訴求する広告を掲載した。そして、同社がIVR(自動音声応答装置)により資料請求を受け付け、資料の送付時には同社からの案内状を添え、後日アライアンス企業から案内がある旨を伝えた。資料送付後、アライアンス企業からアウトバウンドを行ったところ、最終的に15件が成約に至ったそうだ。
 現在、同社では、単体DMの活用は縮小傾向にあり、利用代金明細書の効率的な活用へと重点を移している。顧客のニーズに合致した商品の案内とさらなるカードの利用促進を図るため、まずはニーズを把握し、それがアライアンス企業の商品・サービスと合致するかどうかを見極めながら、CVCをさらに推進していく意向だ。
 アライアンス企業のマーケケティング・サポートの面では、特に、Webサイトへの誘導媒体としての活用に意欲を見せる。アライアンス企業では、自社Webサイトへの集客合戦が激化しており、SEOなどネット単体では効果を上げるのが難しくなっている。そこで、見込み度の高い会員の自宅へ確実に届く利用代金明細書を、Webへの集客メディアとしても提案していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年2月号の記事