ネットの特性を生かした仕組みづくりと店舗との連携を両立し売り上げを拡大

(株)ソフマップ

(株)ソフマップのECサイト「ソフマップ・ドットコム」は、「店舗とは違うプラスαのサービスを提供できる」利点を最大限に活かし、品揃えの強化とサービス向上を図っている。店舗とネットで会員制度を共通化し、購買の利便性を高める施策を展開。新品、中古品を同時に購入できるようにバックヤード体制を整備した。平均客単価は店舗の約3倍と、実績を上げている。

店舗プラスαのサービスを掲げるソフマップ・ドットコム

 デジタルグッズの専門小売業として、東京・秋葉原と大阪・日本橋をはじめ全国で28店舗を展開する(株)ソフマップ。取扱商品は、パソコンならびにパソコン周辺機器、ゲーム/DVDソフト、デジタル家電、中古ハード/ソフト製品と多岐にわたる。2006年2月には(株)ビックカメラと資本・業務提携を行い、同社の連結子会社となった。
 eコマース事業の発端は1995年にさかのぼる。ソフマップではもともと、店頭商品のカタログ通販を行っており、その流れからECの仕組みを構築するのも早かった。「店舗でできることはすべてネットでも」という方針の下、同業他社に先行してネット戦略を展開。1999年には外部ベンダーにシステム構築を依頼し「バーチャルストア」をスタートした。さらに2000年には、「ソフマップ・ドットコム」と改名し、「店舗とは違うプラスアルファのサービスを提供できる」ネット戦略の核として、その位置付けをシフトした。その後、2005年12月に「ソフマップ・ドットコム」をリニューアル。サーバやソフトウエアを刷新し、データセンターを移動することで、十分なバックヤード体制を整備し、サイトの強化を図った。

操作性・検索性を向上し新品・中古品を同一カゴで購入可能に

 リニューアルにおいては、まず、探しやすく購入しやすいサイトを目指し、操作性・検索性を向上した。そのひとつの例として、新品、中古品を同時に購入できるようにしたことが挙げられる。もともと、新品販売サイトの後から中古品販売・買い取りサイトを増築するかたちで開始しており、それぞれ別のシステムを採用していたことから、データベースが連動しておらず、新品・中古品を同時に購入する場合、それぞれのページで別々に決済する必要があった。これがリニューアル後は、新品・中古品を並べて表示することが可能になり、同一カゴで購入できるようになった。
 サービスの向上にも力を入れている。以前は、1万円以上購入した場合に送料無料としていたが、1,000円以上の買い物でも送料無料にした。1,000円以上の商品がほとんどであるため、実質的には、ほぼ送料無料。これは好評を得ているという。また、品揃えの強化も図った。スペース的な制約が少ないというネットの特性を活かし、店舗で取り扱っていない商品も積極的に取り扱っており、ソフマップ・ドットコムの商品点数は現在、約8万点にも及んでいる。

売上全体の8%がネット販売 店舗とネットで会員制度を共通化

 これらの取り組みにより、ネットの平均客単価は店舗の約3倍に上っており、現在、ネットでの売り上げが同社の売り上げ全体の約8%を占める。同業他社での比率が1~2%と言われる中、ネットでの売上比率が高いことがわかる。
 なお同社では、店舗とネットの会員制度(ソフマップ会員)を共通化している。現在、会員数は約415万人。ネットで入会した場合は、後日ポイントカードが郵送される仕組みだ。ちなみに、ネットでの購入者のうち約9割がソフマップ会員である。
 また、ネット購入者の大半は店舗商圏内の居住者だ。このうち、ソフマップ会員の店舗とネットでの購買履歴を見ると、商品に応じてネットと店舗を使い分けていることがわかるという。例えば、新作ソフトの予約はネットで行い、実際に販売された後、その利用のために必要な機器を店舗で購入するというように、顧客は店舗とネットを回遊しているようだ。

ネットのインフラを活用して店舗との相乗効果を狙う

 こうしたことから、同社では、店舗と共通するサービスが必要であり、かつネットの特性を生かした販促の仕組みづくりが必要と判断。現在、ネットと店舗の連携戦略の見直しを図っているという。
 ソフマップ・ドットコムをソフマップの看板として、ネット販売の機能強化だけにとどまらず、積極的に店舗のセール情報を提供したり、キャンペーン告知を行っている。また、店舗別のメールマガジンやケータイメールによるアプローチも展開し、店舗とネットを組み合わせた販促活動を推進しているのだ。ネットのインフラを活用して店舗への集客を実現できれば、ネットとは一味違う対面での接客によって、付加価値の高いコミュニケーションを図れるという利点がある。わかりづらい商品や、新商品、PC周辺機器など、店員の丁寧な説明によって販売をサポートできる商品については、積極的に店頭に足を運んでいただいたほうが良い。ネットに誘導して購入を完結していただく流れだけになると、店舗より厳しいネット世界の価格競争に巻き込まれてしまう可能性もある。
 また、ネットには、ソフトウエアの先行予約や新製品などの先行情報を出してその反応を見るなど、店舗のパイロットショップ的な機能も持たせている。これにより、物理的に制約のある店舗で、効率的な品揃えと売り場作りを実現できるというわけだ。

品揃えの強化と店舗商圏外の顧客獲得が課題

 ソフマップ・ドットコムの今後の課題としては、品揃えの強化と出店エリア以外の顧客を獲得することが挙げられている。
 前述のビックカメラとの提携により商品調達力が強化され、品揃え拡充の下準備が整った。実際に、2006年夏には、いわゆる白物家電に当たるエアコンのキャンペーンを成功させた。一見、同社のイメージとかけ離れた商材であっても、お客様は“信頼のおけるサイトで購買を完結したい”と考える傾向があるとの前提のもとに、限定品や付加価値の高い商品を中心に、さまざまなフックを用意して購入機会の増大を図っているという。また、今後1年で30万点を目標に、商品数を増やしていく計画。特に今期は、調理家電を中心に販売を拡大していく。
 また、店舗がない地域の顧客に対してソフマップの認知を上げ、顧客数を拡大していくことを目指す。アフィリエイトや他サイトとのリンクなど、ネット上のネットワークを増やしていくことを検討中だ。
 一方で、ネットならではの大変さがつきまとうことも事実だ。商品点数が増え、キャンペーンを活性化するということは、管理面での負担が増大することを意味する。しかし、ネット上の不備は企業全体のイメージダウンにつながりかねないため、メンテナンスは入念に行っている。
 2005年12月のリニューアルから1年を迎える同社。ソフマップ・ドットコムでは、一人ひとりの年間購入金額を上げる仕組みが揃ったところで、今後は、取扱商品点数の拡大や、サイトの機能改善を継続的に行うことにより、販売サイトとしての魅力を高めていきたいとしている。

ソフマップ

ソフマップ・ドットコムのトップページ。実に多くの商品情報が詰まっている。右側にソフマップの店舗情報を掲載。左側には商品ジャンル別のアイコンが並び、新着情報はRSS配信される仕組みだ


月刊『アイ・エム・プレス』2006年11月号の記事