付加価値をもつタイアップ先と組みインパクトの強いキャンペーンで見込客を獲得

(株)ジェーシービー

若年男性や新社会人を対象に、“男磨き”をサポートするセグメントカード「JCB E.GO(イーゴ)」を提供する(株)ジェーシービー。サービス開始1周年記念として、プジョー・ジャポン(株)の新車「PEUGEOT1007」をプレゼントするオープンキャンペーンを実施。応募者数は予想を上回り、認知度向上とメールマガジン会員獲得に成功した。

“車”をフックとした独自のサービスで若年男性にアピール

 (株)ジェーシービーは、2004年11月、20~30代の若年男性をメインターゲットに「JCB E.GO(イーゴ)」の発行を開始した。位置付けは、“キレイ”をキーワードに女性のライフスタイルを提案した同社初のセグメントカード「JCB LINDA(リンダ)」の男性版。紙の利用代金明細書を発行せず、ネット上で利用代金明細を確認するなど、対象層にとって親和性のあるチャネルを活用している。
 対象層の消費行動を分析し、週末や深夜など急に現金が必要になったときに年1.00%の利率で上限3万円まで利用できる 「Sakutto Cashing (サクッとキャッシング)」や、ポイントの自動キャッシュバックなど、独自のサービスを提供。また、車関連のサポートを受けられる「JCBロードサービス」をはじめ、車関係のトラブルへの見舞金制度を用意するなど、サポート体制を充実させている。現在、会員数は約9万人に達する。
 同社では、発行開始から1年を記念して、会員サービスの柱となる“車”をフックとしたキャンペーンを企画。特に、同社が中長期的な視点で重要視している「使い続けていただくカード」となることに留意した。「まずは認知度を上げるため、E.GOの専用サイトへ来てほしい、と考えました」(マーケティング本部 販売促進一部 セグメント販促グループ 秋山慎太郎氏)。応募に当たっては、氏名とeメールアドレスだけを登録してもらい、その後メールマガジンなどさまざまな仕掛けで会員化を図るかたちにした。
 プジョー・ジャポン(株)とのコラボレーションは、ちょうどこの頃、「PEUGEOT1007」が2006年3月に発売されることを知った秋山氏が、キャンペーンの賞品として採用を持ちかけたのがきっかけ。プジョー・ジャポン側から見ると、代理店以外の新たなチャネルで新車種発売のアピールができ、広告費もかからないという利点があった。

銀行の店頭にプジョーのポスターを掲示 視覚的なインパクトを狙う

 「E.GO 1周年記念キャンペーン」は、2006年2月16日~5月31日の間に2回に分けて実施。賞品の「PEUGEOT1007」は、カードの色と同じレッド(第1弾)とブラック(第2弾) の2台を用意した。応募方法は、専用サイトにアクセスし、氏名、eメールアドレスを入力し、アンケートに答えて完了するというものだ。
 当初は約2万4,000人の応募を予想していたが、実際の応募者数は約6万5,000人に上った。また、Webサイトの月間平均ページビュー(PV)は、キャンペーン開始前は25万~30万PVだったところ、期間中は月間で200万PVと、10倍近く増加した。終了後の現在も、月間30万PV強と実施前を上回っている。
 なお、「E.GO 1周年記念キャンペーン」は、プジョーが当たるオープンキャンペーンに加えて、入会申し込みをして7月15日までに1万円以上利用した人の中から、抽選で25人に1人に、5,000円分のJCBギフトカードが当たる販促企画を並行して展開した。期間中は、お台場などの商業施設やフランチャイジー(FC社)である銀行店舗などで専用カウンターを設け、キャンペーン告知を行った。
 E.GOに関しては、これまで、リアルなチャネルを使って大々的に会員申し込みキャンペーンを行ったことがなかった。また、賞品が高額の耐久消費財という例もマレ。話題性の高さでFC社の販促に貢献するという点から、36社がキャンペーンに参加したそうだ。
 地元で顔の利くFC社による募集活動は非常にパワフルで、実際、会員のうち8割はFC社経由で入会したと言う。ターゲット層が若年男性や新社会人であるため、銀行の商機である年度初めに実施するのが有効だと同社では再確認した。
 今回のキャンペーンで得た成果は、今後のメールマガジン配信を承認した約6万件の見込客。期間中に集中して会員数を増やすのではなく、キャンペーン後に、メルマガなどを配信してリレーションシップ構築を図り、入会を促進していく狙いだ。「メールマガジンであれば、コストを抑えてコミュニケーションができます。常にメールマガジンを見ればメリットがあり、“メールマガジンを停止するとお得な情報が届かなくなってしまう”と思っていただくような内容になるよう努めています」(秋山氏)。
 例えば、E.GO会員は、携帯電話・PHS通話料金をカード支払いにするか、毎月1万円以上利用すれば月会費が無料になるといったメリットを通知。また、この8月には、会員・非会員の両方に臨時に配信したメールマガジンで、E.GO会員限定招待のバーニーズニューヨークのセールを告知した。
 これらの取り組みが功を奏して、キャンペーン後、1カ月当たりの会員獲得数は以前に比べ1.5倍となっている。

会員向けコラボレーションでは、情報の見せ方を工夫

 コンサバティブな層が多いプレミアムカードよりも、若年層がターゲットのE.GOでは、会員向け施策においてもコラボレーションという冒険がしやすいと同社では見ている。
 「決済手段として考えれば、どんなカードも大差はありません。ここで付加価値を考えることが、選別の時代に勝ち残るカードとなる秘訣だと考えています。そのためにも、コラボレーションは非常に有効です」(同グループマネージャーの日下義顕氏)
 協賛側の企業からすると、個人情報を同社が管理しており、これに触れる必要がない。その上、常にフレッシュな情報を維持している組織はなかなかないので、モニター集団としての信頼性も高い。
 コラボレーション先の選定において留意しているのは、会員に関心を持ってもらえるかどうか。売りたいという企業の思惑が押し付けにならないよう、情報の見せ方を工夫して、違った切り口で届ける必要があるととらえている。
 なお、同社では、商品性向上に役立つ情報を収集するため、専任の社員を置いて、さまざまなオファーに対する会員の反応などをウォッチし続けている。
 E.GOの発行開始から約1年半を経たが、同社では、その商品性が活きる形でのコラボレーションを今後も積極的に行っていく意向だ。E.GOの新たなコラボレーション展開に期待したい。

E.GOポスター E.GO (RED)

赤と黒のプジョーが大きく掲載されたキャンペーン告知ポスター。銀行窓口に掲げられているところを想像してほしい。異業種コラボレーションのインパクトは強かった(写真左)/アルファベットの「E」をデザインしたE.GOカード(写真は赤)(写真右)


月刊『アイ・エム・プレス』2006年9月号の記事