他社とのアライアンスを通して新しいeコマース事業の創造を目指す

(株)テレビ東京

放送と通信の融合を睨み、2005年7月からは通販事業を子会社の(株)プロントと提携して展開することを決定。これを受けて、深夜番組「原宿物語」と「Let’s GO スーパーショッピッングサイト」を連携した番組作りに挑戦し、放送とインターネットを連動させた新しいビジネスモデルとして注目を浴びた。同社では、その後もeコマース企業との提携を通して、テレビショッピングの拡充を図っている。

テレビショッピングはテレビ“集客”のための一手段

 (株)テレビ東京では、インターネットを「テレビをバックアップする強力なツール」としてとらえている。「魅力ある番組をオンエアし、視聴率を上げ、スポンサーからCM放映料をいただく」という民放テレビ局本来の収益構造を補強するものとして、昨今急速に普及するネットの、特に「 (視聴者の)集客力」に注目。さらに番組との連動による「ネット通販」の強化に乗り出している。
 同社では、グループ内での機構改革にも乗り出し、100%子会社の(株)プロントがこれまで担ってきたテレビショッピング関連事業を2005年7月、本社内のコンテンツ事業局内に新設した「ライツ事業部」でも担当。従来通りプロントでも通販の企画・運営は行うものの、テレビ東京本体としても、テレビショッピング関連事業の立ち位置を“格上げ”したのである。
 こうした状況の中で、テレビ東京は初めて、eコマース事業において外部企業数社との業務提携に踏み切った。このことは同社にとって、「テレビとネットの連携」を具現化させる第一歩と言っていいだろう。
 2006年4月27日に、同社は「Let’s GOスーパーショッピングサイト」を運営しているeコマースベンチャーの(株)ノーウェイと業務提携を結んだ。業務提携の狙いは、互いを戦略的パートナーと位置付け、テレビとネットを連動させた新しい形のeコマース事業を創造し、幅広いニーズにきめ細かく応えていくこと。具体的には、両社の培ってきたブランド力やノウハウ、顧客基盤などを活かしながら、新たなeコマース事業を開発することで、テレビ東京は視聴者に対するより細やかなサービス提供を、ノーウェイは全国のネットユーザーを満足させられるサイト運営を目指していく。
 ちなみに、「Let’s GOスーパーショッピングサイト」は、特定地域密着型のショッピングモール形態で、街自体がブランド化した地域のリアルショップと提携し、「自宅に居ながらにして、憧れの街、現地に行った感覚で買い物ができる」ということをコンセプトに事業運営している。2005年10月に「Let’s GO原宿」の開設を皮切りに、下北沢、代官山・恵比寿、ハワイ(ワイキキ)をオープンし、2006年度中には自由が丘、銀座、吉祥寺と拠点数を増やしていく予定だ。
 「Let’s GOスーパーショッピングサイト」のアクセス数や売上高は非公表だが、提携後、テレビ東京の情報番組などで商品と併せて同サイトを紹介したところ、提携前と比べてアクセス数は少なくとも10倍に、また売り上げは6倍増に膨れ上がったという。同サイトとの連動企画として、この6月10日深夜26時35分に「お宝発掘!激レア!古着祭り」(30分番組)という特番を放映したところ、アクセス数がサーバの限界を超えてしまい、サイトに一時つながらないという嬉しいアクシデントがあったほどだ。

テレビとネットの連動を旗印にさまざまな試みを展開中

 同社では“ネット”との連動を念頭に置いたさまざまな試みを推進している。例えば2006年4月には、(株)日経BPが発行する洋楽雑誌『大人のロック』とのコラボレーションで「大人のロック!推進計画」というサイトの運営をスタートした。
 『大人のロック』は、団塊世代の志向を上手くとらえ、今やこのジャンルでは最大規模の発行部数を誇るまでに成長した音楽雑誌。このコンテンツを活用して、「洋楽ロック」という切り口で新たなビジネスが展開できるのではないかと考えたのがきっかけだ。地上波でもあまり見られない「ロック好きな大人のための番組」として、2006年4月から「ROCK FUJIYAMA」(毎週月曜日25時)をスタート。同番組は60~80年代の洋楽ロックに特化し、米国西海岸の陽気さを前面に打ち出したもので、30~50代の男性をコア・ターゲットとしている。視聴率は、深夜にもかかわらず2%台で、「大人のロック!推進計画」へのアクセス数は、放映開始から終了後1時間程度は急上昇するという。
 また、「ROCK FUJIYAMA」の番組内で紹介した楽曲のCD、DVD、関連グッズなどは「てれとマート」「日経BP」のほか、提携先のタワーレコード(株)から購入できる仕組みになっている。そのほか、(株)USENが提供する「GyaO」に対して、番組と別バージョンの映像「 GyaO FUJIYAMA」を配給。現在、 「 ROCK FUJIYAMA」のサイトでの販売商品は、オリジナルTシャツにとどまっているが、今年秋ごろにはケータイにプロジェクト専用サイトも立ち上げる予定で、これを機に本格的に音楽配信サービスにも乗り出す意向だ。

テレビ東京 テレビ東京2

テレビ東京本体主導でテレビショッピングを展開。ネットとの連携を積極的に推進している(写真左)
日経BPが発行する洋楽雑誌『大人のロック』とのコラボレーションで誕生した「大人のロック!推進計画!」サイト。同社は音楽番組「 ROCK FUJIYAMA」との連動でネットへの集客を促進(写真右)

良質なWeb会員の登録を目指し視聴者ニーズに合ったサービスを模索

 また同社では、作家・村上龍氏がインタビュアーを務める経済トーク番組「カンブリア宮殿」(毎週月曜日、午後10時~10時54分放映)を活用して、“良質なWeb会員登録”の可能性を検証している。同番組は、隔週土曜日にスタジオで2週分を撮りだめするのだが、その収録時にネットにも同時配信、それを視聴しながら意見を寄せていただく番組のモニター会員を募ったところ、予想以上の数が集まったという。
 一般的にWebサイトでの「会員登録」に対するサービス特典の多くは、不特定多数のお客様を相手にしているため、最新情報や商品情報の配信程度で、コンテンツ的にユーザーを満足させているとは言い難い。そこで同社では、番組収録のライブ配信など視聴者ニーズに合ったサービスを提供。番組視聴者の獲得や維持・拡大にも効果が期待できると見ている。
 この4月からワンセグがスタートしたが、同社では、テレビショッピングや情報番組において、どのような利用方法があるか実証実験中とのこと。現在、同社のケータイサイトはテレビ番組に連動した独自企画やパチンコ台情報をはじめ、着メロ配信、ゲームなど、エンタテインメント性を重視したコンテンツが中心だが、独自グッズの販売など、モバイル・コマースに注力していくため、ケータイサイトの充実を図っている。
 今後は、同社が得意とする「旅・グルメ」「アニメ」「経済」の3ジャンルに重点を置いた形で、テレビショッピングを展開していく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年8月号の記事